極める古文2 センター試験編

この国の都なすあ 田といふ所に住む人あ とをわざとしつつ、身はい りて、あがれる世の手ぶりを慕 学ばまく欲りするなかに、 手書くこ たてては好めりし。されど、摺巻に伝は 書のほか、師とする人もなき山ふところに、 あやなく思ひをくらさんよりは、山城 大都 に上りて、 高き手ぶりをも見あきらめばやと、 ゆくりなく思ひおこして、岩根黒土踏みさく みて、文化四年といふ年の弥生ばか 、まゐ のぼれりしに、世のわき知らぬ山がつのおし はかりとはたがひて、高き宮のうちには、か くと言ひよらん づきもなく、至れるいやし き身には、御伝へも下らずと聞きて、はやり かなりし心もしなへうらぶれつつ、行く先を 第 8講  『真葛が

この陸奥の国の繁 がいた。代々鷹を飼うこ のの、志があって、昔の風俗 と思う中で、 字を書くこと(書道 印刷本で伝わっている書のほか、師と 学びようもなくむなしく暗い気持ちで過ご に上って、高雅な筆づかいをもはっきりと見極 に心を奮い立てて、岩や黒土を踏み分け 文化四年 三月ごろ、京都に上ったが、世事に疎い田舎者(鷹飼い 像していたのとは違って、高貴な皇族の中に い と頼んで近づけるような手がかりもなく、 て賎しい身分の者 は と聞いて、 勇み立っていた気持ちも萎えて落胆したが、 て この先どうしたらよいかも思いつかず、 を乞おうなどと 住む鮒が大海原に泳ぎ出てしまったかのようである。またこの

身分不相応に思い立ったことを思うと、井戸に

書道の

御秘伝が授けられることもない

都の高貴な方に教え

自分のような

書を伝授してほし

かといっ

極め

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