極める古文2 センター試験編

のごひ隠し あふことを づべきかたもなくな と、袖を顔に押し当て 中の君、 いづかたに身をたぐへま づるもともに惜しき別れを 我は必ずしも、急ぎ出づべきならねど、 にしばしも立ち離れ聞こえては、いとよりど ころなき心地すべきもさる事に 、宮も、 「や

がてついでに渡し奉りて、我は一筋に思ひ置 く事なくて」とおぼ て、さるべき老いしら へる女房 どをだにとどめ給はず 出し立て させ給ふ。 大将殿、女君とは一つ御車にておはしま

す。出車十、童、下仕へまで引 続き、かば かりの草の庵より出で給ふ御有様ども、いと いかめしう勢ひ殊にて、さるべき殿上人、五

涙を拭いて あふことを ない別れでは、この く出て行くしかありませ と、 袖を顔に押し当てて、 お 中の君(=妹君)は、 いづかたに…=私はどちらに身を 妹君 ご自身は、別に急いで出発する気はないものの、姉 しの間も離れ申し上げては、たいそうより所のない気が まうはずなのも当然のことで、父宮も、 「このまま好機に乗 てお移し申し上げて、 私は全く心配のないかたちにしておこう」 とお思いになって、吉野に残るのがふさわしい老いた女房たち でさえもお残しにならず、 うか。この吉野に残っ 父様と

大将殿は、姉君と同じお車でいらっ ゃる。牛車十台、女の 童や下仕えなどまで後につづき このような質素な草庵から出 発なさるご様子としては、たいそう堂々として威勢があり、し

別れるのも、どちらもつらい別れです。

お父様に

姫たちとともに

お姉様と

お逢いできるの

別れるのも、ここを出てお

出発させなさった。

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