極める古文2 センター試験編

たれたれと 置かんと、手馴 もて遊びまで、数々 くそれそれにと配りつ ゐの近くあるを見やりて、 ごろはとかく苛み、遊びがたき くもむつかしくも、さぞ思ひつらめ 我なくは、 『いづちおはしけ 、あはれ 偲ぶ時もあらんかし」と言ふを、聞く人みな 肝魂も消え失せぬ。いかなる岩木もえたふま じく、上中下声をあげて等し 、さと泣きけ り。翁と母、手を捕らへて、呼び生け呼び生 け、 「なほ言はまほしか んことあらば、の たまへ。心のうち晴るけやらぬ 罪深し」な ど言へば、うちうなづき、 「 をば煙とな 給ふな。それなん心にかかる。先立ちて二人 の親に嘆かせたてまつらん心憂さ、黄泉路も やすくは行きやられじ。また病ひ少し緩みあ

それが気がかりです。先立って両親を嘆き悲しませ申し上げる のがつらくて、死出の旅路もたやすく行けそうにありません。

私は 誰々と人を 繰り返し呼びかけて正気を取り戻させて、 「もっと言いたいこ とがあるのなら、おっしゃいなさい。心の中がすっかり晴々と しないのは執着を残すことだから罪深いことです」などと言う と、 娘は 軽くうなずき、 「私を 残そうと、使い 物まであれこれと取 配った。長いこと邸に仕 見やって、冗談を言いながら 遊び相手にしていたのを、 嫌なこ さぞかし思っていただろう、でも私が へいらっしゃったのだろう、ああ寂しいこ あるだろうね」と 心も消え失せてしまった。岩や木 こらえられそうになく、身分の高い人も低い人もみな同 に、わっと泣いた。私と母(=

娘が 言うのを、聞いている人はみな悲しみで

火葬にして

私の妻

のようなどんな非情な人

)は、

煙としてくださるな。

娘の 手を取って、

娘の 形見でも

娘が

も、

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