極める古文2 センター試験編

古きところどころ まく、はた、名だたる と、このもかのもに馳せめ 五月雨のはれなむ頃ほひ、この 筑摩の郡に来て、むかしかたらひし とへば、世をはやうさりてなきが多かり ば、 ありつるひとりふたりにこととひかはし いざ、ことかたにおもふ折しも、可児永通て ふ医師の、あが宿に、たびごろもうらぶれや すめよなど、 夏野の草のねもごろにいへれば、 いざ、 ひと日ふつかもありなむと思ふほどに、 木曾の麻ぎぬあさからず、諏訪の海のふかき なさけに、なにくれと、引く網のめやすう馴 れむつび、ここらの友どちの円居に、かたら ひなづさひて たびの空のくもらはしきここ ろもなう、月日のうつるもしらぬに ふる里 第4講  『来

諸国の古い神社に 名所をすみずみまで見た 夏、梅雨も終わろうとする時 て来て、昔仲のよかった友人を訪 た人が多かったので、生きている一人 違う場所に行こうと思っていた矢先に、 可 私の家に旅の疲れを休めに滞在してくださいな 夏草のよう 重ねて親切に言ってくれたので、それ 日も泊めてもらおうかと思っていた に、木曽の麻ぎぬ に浅くはない、諏訪の湖のように深い親切なもてなしに、何 につけて くの友達の親しい集まりに、話がはずみ馴れ親しんで 旅の空 の憂鬱な気分もなくて、月日 たつのもわからなかったが、そ のうちに故郷のことがしきりに気にかかって、まだ見ていない 場所に心残りはあるものの、この土地への未練はい さら言う に及ばず、幼い子供や、軒下の敷石で餌をつつく鶏や、門口

漁師の引く網の目のように心安く馴れ親しんで、多

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