極める古文2 センター試験編

ほ激しきに たそかれ時より に乗りて行くに、女 のから、かく思ひかけ がれ出でぬるが、さすがに のうち、姫君の御方のみ恋ひし 泣かれぬ。男は、年ごろ 本意かな の名残のいと悪しき道を どり行く苦し かつは忘れつつ、ただ急ぎに急ぎて、夜中う ち過ぐるころ、もとの渚に来着きて、ありし 舟に移し乗するほど、さらに知る人なし。や がてさし下すに、いととく過ぎ行くもうれし くおぼゆ。川尻を離るれば、沖つ潮風荒まし う吹きて、波さえ高う立ち来るに、ならはぬ 人はましていと苦しげにて、いみじう思ひ惑 へるさまの心苦しければ、もろともに衣ひき かづきてうちふしをり。我が住む方もいつし か近づきぬる心地するに、明けゆく空の光に

男と 心を通わせ へと突然さまよ がら仕えていた邸や と泣いてしまった。一方 後のひどい悪路を迷いながら ら、ひたすら急いで、夜中を過ぎ 渚に到着して、もとの舟に女を移して つからなかった。すぐに河口を目指して舟 速く進み行くのも 沖の潮風が荒々しく吹いて、波までも高く打ち寄せ れていない いる様子がかわいそうなので、 横になっている。 た気がするところに、明け行く空の光に見ると、風情のある入 り江のほとりを漕いでいく。 渚に立っている多くの松の景色や、 その梢にかかっている葛の様子などが何とも言いようもなく美 しいので、 「あれをご覧なさい。種さえあれば、あのよ な荒 磯にも、育つ松はあるのですよ」などと

男は うれしいと思う。 やがて河口を離れると、 女は ましてひどく苦しそうで、本当に途方に暮れて

男は 自分が住むあたりもいつの間にか近づい

男は 一緒に着物を引きかぶって

男が 言うと、女も少し

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