極める古文2 センター試験編

をりふし、宮は音もなく入 ふに 御 硯なども取り隠すべきひまさへなく みなす べりぬるに、姫君もまぎらはしに扇をまさぐ りつつ寄りゐ給ふ。按察使の君 、人より異 にいたう苦しくて、御几帳の後ろよりすべり 出でぬるを、いかがおぼしけむ しばし見や らせ給ひて、かの跡はかなく見な 給ふ人の

は寄り臥し うて、按察使の ふ。さまざまの絵な 籬に菊など書き給うて かし」とて、持たせ へる う塗らせ給へば 按察使の君、 うち笑ひて、その傍らに、 初霜も置きあへぬものを白菊の早くも つる色を見すらん と、いと小さく書き付け侍るを、姫君もほほ 笑み給ひつつ御覧ず。

がこぼれる ある日の昼ご ていて、 「宮も今朝 とで、女房達は、 姫君は物に寄りかかって横に 向くままに書いていらっしゃって に書かせなさる。 ろいろな絵など気 姫君は ても良くないわ」とおっしゃって、お持ちにな ても濃くお塗りなさる 、按察使の君は、ほんのり て笑みをうかべ、その絵のわきに、 初霜も…=初霜もまだ降りないのに、どうして白菊は早く も色変わりしているのでしょうか。 と、たいそう小さく書きつけましたのを、姫君もほほ笑みなさ りながらご覧になる。

ちょうどその時、宮はお部屋に音も立てずにお入りなさる で、 女房達は そっと退出してしまっ が、姫君もごまかすように扇を弄びな

垣根に咲く菊の絵などお書きになられて、

硯箱なども隠すことができる暇さえなく、みな

姫君の

姫君の屋敷は

御前でくつろいで、遊び

たいそう静かで

98

Made with FlippingBook Ebook Creator