極める古文2 センター試験編

こと、ふと しことども繰り せ給ふに、御硯の開 へば、ありし御手習ひ るを取りて見給ふに、姫君 て顔うち赤めつつ、傍らそむき とよしよししくにほひやかなり。 宮つくづくと御覧ずるに、白菊の歌書 る筆は、ただいま思ほし出で 人の、 「草の 庵」と書き捨てたるに紛ふべうもあらぬが、 いと心も なくて、 「さまざまなる筆どもか な。誰々ならん」など ことなしびに問はせ 給へど、うちそばみおはするを、小さき童女 の御前に候ひしを、 「この絵は誰が書きたる ぞ。ありのままに言ひなば、いとおもしろく 我も書きて見せなん」とすかし給へば、 「こ の菊は御前なん書かせ給ふ。 『い 悪し』と て書き消させ給へば、わびて、按察使の君、

を消す前に ないのが、た そう気がかりで、 「いろいろな人の筆跡だなあ。 どういう人たちが書いたのだろうか」などと、素知らぬふりを してお尋ねになるが、

がら物に寄 の人々よりもい と退出していったの ろうか、しばらくの間そ ずと思い込みなさった女のこ く思われたので、過ぎ しまった 思い出しなさりながら物に寄りかかっ るうちに、蓋の開いている先ほどの箱を、 ると、さっきお書きになったものが、硯箱 下 を 宮は 手に取ってご覧なさるので、姫君はたいそうきまり くてお顔を少し赤くしながら、 横を向いていらっしゃる 実に上品で、輝くような美しさである。 宮は手にした紙 つくづくご覧になるうちに、 「白菊の歌」 を書いてある筆跡は、たった今思い出しな った女が、

「草の庵」と書き残した歌の筆跡と見間違えようも

姫君は

宮は どのようにお思いに

ちょっと横を向いて黙っていらっ

昔、姿

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