極める漢文1

1 〈書き下し文〉 〈現代語訳〉 (衛霊公の)夫人が言うには、「私はこのように聞いております。『礼記』に大夫の行う礼として、君主の住む 宮殿の門前では車を下り、君主の馬に対しては敬礼するとありますが、これは君主に対する敬意をあらわすため のものです。そもそも忠臣と孝子とは、人が見ているからといってわざと礼儀を誇張することはないですし、見 ていないからといって礼行を怠るということもありません。 蘧 伯玉は衛の国に知られる賢明な大夫です。仁徳が あっ知恵もあり、敬意をはらって君主である陛下にお仕えしております。暗闇であったとしても礼節を欠く人 ではけしてございません。こういうわけでこのこと(門を通り過ぎた人物が 蘧 伯玉であること)が分かったの でございます」と。衛霊公が侍者に見に行かせたころ、まさしく 蘧 伯玉であった。 第 講  劉向『列女伝』 書き下し文・口語訳 夫 ふ 人 じん 曰 い はく、「妾 せふ 聞 き く、礼 れい に公 こう 門 もん に下 くだ り、路 ろ 馬 ば に式 しよく するは、敬 けい を広 ひろ むる所 ゆ 以 ゑん なりと。夫 そ れ忠 ちゆう 臣 しん と孝 かう 子 し とは、昭 せう 昭 せう の為 ため に節 せつ を信 の べず、冥 めい 冥 めい の為 ため に行 おこなひ を堕 おこた らず。 蘧 きよ 伯 はく 玉 ぎよく は衛 ゑい の賢 けん 大 たい 夫 ふ なり。仁 じん にして智 ち 有 あ り、上 かみ に事 つか ふるに敬 けい あり。 此 こ れ其 そ の人 ひと 必 かなら ず闇 あん 昧 まい を以 もつ て礼 れい を廃 はい せず、是 ここ を以 もつ て之 これ を知 し る」と。公 こう 之 これ を視 み しむるに、果 は たして伯 はく 玉 ぎよく なり。

52

Made with FlippingBook Publishing Software