極める漢文1

書き下し文 口語訳

2 〈書き下し文〉 〈現代語訳〉 そもそも兵法には、いわゆる常があり、いわゆる変がある。自分の軍勢が敵の十倍であれば敵を包囲して屈 服させ、五倍であれ攻撃して破り、匹敵しない軍勢であれば退却するというのが、兵法におけるいわゆる常で ある。少数の兵力多勢の敵を破るというのが、兵法におけるいわゆる変である。古の兵法に巧みな者は、少数 の兵力で多勢の敵を破ることが可能だとしても、十倍で囲み五倍で攻めるという兵法の常道はゆるがせにはしな かった。これがいわゆる小変は行っても大常は失わないとうことである。 第 講  秦観『淮海集』 書き下し文・口語訳 夫 そ れ兵 へい を用 もち ふるの法 ほふ は、所 いは 謂 ゆる 常 じやう 有 あ り、所 いは 謂 ゆる 変 へん 有 あ り。什 じふ なれば則 すなは ち之 これ を囲 かこ み、伍 ご なれば則 すなは ち之 これ を攻 せ め、敵 てき せざれ ば則 すなは ち之 これ を逃 のが るるは、兵 へい の所 いは 謂 ゆる 常 じやう なり。寡 くわ を以 もつ て衆 しゆう を覆 くつがへ すは、兵 へい の所 いは 謂 ゆる 変 へん なり。古 いにしへ の善 よ く兵 へい を用 もち ふる者 もの は、能 よ く寡 くわ を以 もつ て衆 しゆう を覆 くつがへ すと雖 いへど も、什 じふ 囲 い 伍 ご 攻 こう の道 みち は未 いま だ嘗 かつ て忽 ゆるが せにせず。所 いは 謂 ゆる 小 せう 変 へん を行 おこな ふも其 そ の大 たい 常 じやう を失 うしな はざるなり。

書き下し文・口語訳

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