極める漢文1

書き下し文 口語訳

4 〈書き下し文〉 古の人が言うには、「つねにうまく人を救う。だから人を見捨てることはない」と。加えて、大丈夫たる者が 学問に志すにあたって、神聖なる君主にめぐりあって正しい道を行いたいと思うのは当然のことである。天下に 一人でもその恩沢を受けない者がいのではないかと思うことは、自分が押して溝の中に突き落としたかのよう である。すべて民に恩沢を及ぼすことができるのは、もとより宰相のみである。すでにその地位を得ることが できないのであれば、人を救いたいという心を実行できるものとしては、良医が一番である。 第 講  呉曾『能改斎漫録』 書き下し文・口語訳 古 こ 人 じん 云 い へる有 あ り、「常 つね に善 よ く人 ひと を救 すく ふ、故 ゆゑ に人 ひと を棄 す つる無 な し」と。且 か つ大 だい 丈 ぢやう 夫 ふ の学 がく に於 お けるや、固 もと より神 しん 聖 せい の 君 きみ に遇 あ ひ、其 そ の道 みち を行 おこな ふを得 え んと欲 ほつ す。天 てん 下 か の匹 ひつ 夫 ぷ 匹 ひつ 婦 ぷ に其 そ の沢 たく を被 かうむ らざる者 もの 有 あ るを思 おも ふこと、己 おのれ の推 お して之 これ を 溝 みぞ の中 うち に内 い るるがごとし。能 よ く小 せう 大 だい の生 せい 民 みん に及 およ ぼす者 もの は、固 もと より惟 た だ相 しやう のみ然 しか りと為 な す。既 すで に得 う べからずんば、 夫 そ れ能 よ く人 ひと を救 すく ふの心 こころ を行 おこな ふ者 もの は、良 りやう 医 い に如 し くは無 な し。 〈現代語訳〉

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