極める漢文1

7 〈書き下し文〉 〈現代語訳〉 蘇文忠公は監獄出てからというもの、すでに死んでいるものの肉だけを食べて、生きているものを食肉にす るため殺したりすることは決してなかった。蘇文忠公が自ら言うには、「(そうすることで)何か求めていること があわけではない。自分自身が獄中で憂いや困難を経験したことは、ニワトリやアヒルが台所にいることと異 ならないので、自分の腹の足しのために生きてるものに計り知れない恐怖と苦しみを受けさせたくなという ことだ」と。いまだに肉食を止めることができないのならば、蘇文忠公のこの戒めを当然守るべきで、それでま あ認められる。 第 講  王弘撰『山志』 書き下し文・口語訳 蘇 そ 文 ぶん 忠 ちゆう 公 こう 獄 ごく を出 い でてより後 のち 、但 た だ已 すで に死 し せるの物 もの のみを食 くら ひ、絶 た えて一 いつ の生 い けるものをも宰 さい 殺 せつ せず。自 みづか ら謂 い へ らく、「求 もと むる所 ところ 有 あ るに非 あら ず。己 おのれ の親 みづか ら患 くわん 難 なん を経 ふ ること、鶏 けい 鴨 あふ の庖 はう 廚 ちう に在 あ るに異 こと なる無 な きに因 よ りて、復 ま た口 こう 腹 ふく の 故 ゆゑ を以 もつ て、有 いう 生 せい の類 たぐひ をして無 むり 量 やう の怖 ふ 苦 く を受 う けしむるを致 いた さざるのみ」と。今 いま 未 いま だ肉 にく を断 た つ能 あた はざれば、当 まさ に文 ぶん 忠 ちゆう 公 こう の此 こ の戒 いまし めを守 まも るべくして可 か なり。

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