みんゴロ極める古文1
みんなのゴロゴ「極める古文1」基礎・必修編
第 講 『宇治拾遺物語』 目 次 1
第 講 『大鏡』 8
第 講 『源氏物語』 7
第 講 『平家物語』 6
第 講 『更級日記』 5
第 講 『古本説話集』 4
第 講 『徒然草』 第 講 『源氏物語玉の小櫛』 2 3
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制限時間 解答編 08 ページ 30 今は昔、大 おほ 隅 すみの 守 かみ なる人、国の政をしたためおこなひ 給ふあひだ、郡司の しどけなかりければ、「召しに やりて戒め ん」と言ひて、さきざきのやうに、しどけなきことありけるには、罪に任せて、重く軽く 戒む る ことありければ、一度にあらず、たびたびしどけなきことあれば、重く戒めんとて、召すなりけり。 「ここに召して率て 参り たり」と、人 の 申しければ、さきざきするやうにし伏せて、尻頭にのぼり 居 たる 人、笞 ※しもと を設けて、 打つ べき人設けて、さきに人二人引き張りて出で来たるを見れば、頭は、黒髪もまじら ず、いと白く、年老いたり。 見るに 打ぜ んこと、いとほしく覚えければ、何事につけてか、これを許さんと思ふに、 ことつくべきこ となし。過ちどもを片端よ問ふに、ただ老いを高家にていらへをる。 いかにしてこれを許さん と思ひ て、 「おのれはいみじき盗人かな。 歌は詠みてんや」 と言へば、 「はかばかしからず 候へども、詠み候ひなん」 と申しければ、 分 第 1 講 『宇治拾遺物語』 A イ X a B Y b c d ロ ハ 甲 C 次の問題文を読んで、後の問いに答えなさい。
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第1講 『宇治拾遺物語』
乙 「さらば仕れ」 と言はれて、程もなく、わななき声にてうち出だす。 年を経て頭の雪はつもれどもしもと見るにぞ身は冷えに と言ひければ、いみじうあはれがりて、感じて許しけり。人はいかにも 情はあるべし。 注※ 笞 しもと ――罪人を打つのに用いる、木の枝で作ったむちや杖。
ニ 問一 波線部a~dの動詞の活用種類と活用形を、次の中から各々一つずつ選べ。 ●活用の種類 1 ア行上一段 2 ワ行上一段 3 ラ行四段 4 ラ行下二段 5 ラ行変格 6 ワ行四段 7 サ行変格 8 サ行下二段 9 サ行四段 マ行下二段 タ行四段 タ行上二段 ●活用形 1 未然形 2 連用形 3 終止形 4 連体形 5 已然形 6 命令形 10 11 12
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4 問二 二重傍線部X「ん」の文法的意味として、最も適当なものを、次の中から選べ。 1 推量 2 意志 3 適当 4 仮定 5 打消 問三 二重傍線部Y「の」の説明として、最も適当なものを次の中から選べ。 1 連体修飾語を作る格助詞 2 主格を表す格助詞 3 同格を表す格助詞 4 連用修飾語を作る格助詞 5 体言の代用をする格助詞 問四 傍線部A~Cは、イ誰の、ロ誰に対する敬意か。次の中から各々一つずつ選べ。 1 大隅守 2 郡司 3 筆者 4 盗人 5 呼びに行った使いの者 6 尻や頭に乗りかかっている人 問五 傍線部イ~ハの意味として、最も適当なものを、次の語群中から各々一つずつ選べ。 イ しどけなかりければ 1 乱れている時 2 職務に怠慢な時 3 法を守らな時はいつも 4 だらしなかったので
第1講 『宇治拾遺物語』
問六 傍線部甲を口語訳せよ。
3 言 5 言いつける相手がいない。 ハ いかにしてこれを許さん 1 どうして盗人を許すことが出来ようか。 2 どうしたら盗人を許してやれるだろう。 3 何とかして郡司を許そう。 4 どのように 高家 か。 5 どのようにして老人を許そう。
5 呼び出しに応じないから ロ ことつくべきことなし 1 他人に知らせるようなことが 。 2 口実にするようなことがない。
こと 付けるのに適当な人がいない。 4 特別な理由が見当たらない。
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第1講 『宇治拾遺物語』解答欄
問八 傍線部ニ「情」の意味として最も適当なものを、次の中から選べ。 1 風流の心 2 機知のひらめき 3 心の寛容さ 4 憐れみの気持ち 5 感謝の心
6 問七 傍線部乙の和歌について イ掛詞を指摘せよ。 ロ空欄に入るものとして、最も適当なものを、次の中から選べ。 1 けら 2 けり 3 ける 4 けれ
第1講 『宇治拾遺物語』
第1講 『宇治拾遺物語』解答欄
問八 4
問七 イ ロ イ=4 ロ=3
問六 5
問五 イ ロ ハ 各3
問四 A イ ロ B イ ロ C イ ロ 各完答3
問三 4
問二 4
問一 a b c d 各完答2
活用の種類
活用形
活用の種類
活用形
活用の種類
活用形
活用の種類
活用形
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制限時間 解答編 30 ページ 25 大事を思ひ立たん人は、 さりがたく、心にかからん事 の本意を遂げずして、 さながら捨つべきなり。 「しばしこのこと果てて」、「 同じくは かの事沙汰しおきて」、「しかしかの事、人の 嘲 あざけ りやあら ん 、行末難 なく したためまうけて」、「年ごろもあれば あれ、その事待たん、ほどあらじ。物騒がしから ぬ やうに」など思はんには、 えさらぬ事のみいとど重なりて、事の尽くる限りもなく、 思ひ立つ日もるべ からず。おほやう人を見るに少し 心あるきはは、皆 このあらましにてぞ一期は過ぐ める 。 近き火などに逃ぐる人は、「しばし」とやいふ。身を助け ん とすれば、恥をも顧み ず 、財をも捨てて逃 れ去るぞし。命は人を待つもかは。 無常の来る事は、水火の攻むるよりも速やかに、逃れがたきもの を、 その時、老いたる親、いときなき子、君の恩、人の情け、 捨てがたしとて捨てざらんや。 問一 波線部a~eの活用形は何か。次の中から選べ。ただし、同じものを何度使ってもよい。 1 未然形 2 連用形 3 終止形 4 連体形 5 已然形 6 命令形 分 A B 1 a C イ b D E F G c d e 2 H I 次の文章を読んで、あとの問いに答えよ。 第 2 講 『徒然草』
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第2講 『徒然草』
問二 空欄イにあてはまる助詞を次の中から選べ。 1 ぞ 2 なん 3 や 4 か 5 こそ 問三 傍線部A・B・C・D・G・Iの解釈として適切なものを、次の中から選べ。 A さりがたく、心にかからん事 1 避けにくく、気にかからないこと。 2 避けにくく、気にかかるようこと。 3 避けにくいというほどには気にかからないこと。 4 家を離れにくく、気にかかるようなこと。 5 家を離れにくいというほどには気にからないこと。 B さながら捨つべきなり 1 全部捨て去ってもいいようである。 2 そっくりそのまま捨て去らなければならないのであ。 3 まるで捨て去るが当然であるかのように言われている。 4 ちょうど捨て去ることできそうである。 5 まったく捨て去ることができないのである。
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G このあらましにてぞ 1 処置しておきたいという計画だけで
D えさらぬ事 1 どうしても避けられない用事
C したためまうけて 1 前もって遺書の用意をしておいて 2 前もって言葉がなまらないように心掛けて 3 前もって財産を隠しておいて 4 前もって始末しておいて 5 前もって手紙を託
2 出家後の不安の念をだて 3 いずれ仏道に入ろうという心づもりで
5 それほど大したことはない用事
2 うまく始末できない事柄 3 きちんと処置した事柄 4 決して家から離れられない事情
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第2講 『徒然草』
問四 傍線部Eは何を「思ひ立つ」のか。次の中から選べ。 1 手紙を託すこと 2 遺書の用意をすること 3 きちんと処置をすること 4 出家遁世をすること 5 あわて騒がないようにすること 問五 傍線部Fの「心あるきは」とどのような人か。次の中から選べ。 1 将来非難をこうむらないような人 2 出家の志をいだいているほどの人
4 約束をおおよそははたした程度で 5 やり遂げた仕事の概略を示すだけで I 捨てがたしとて捨てざらんや 1 人に捨てにくいと言われても、捨てるであろうよ。 2 人に捨てにくいと言われても、捨てるであろうか。 3 捨てにくいからとって、捨ないことがあろうか。 4 捨てにくいとって、捨てないであろう。 5 捨てにくいとうので、捨てるわけにはいかないであろうか。
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第2講 『徒然草』解答欄
問七 二重傍線部1「同じくは」を口語訳せよ。 問八 二重傍線部2「無常」を 意味の一字の漢字で答えよ。
3 心にかかるようなことの目的を果たせる人 4 仏道修行の困難がわかる人 5 この世の無常を解する人 問六 傍線部Hの「その時」とはどんな時か。次の中から選べ。 1 財宝を捨てて逃げ去る時 2 我が身を助けようとする時 3 死が到来した時 4 命が助かった時 5 出家を思い立
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第2講 『徒然草』
第2講 『徒然草』解答欄
問八 5
問七 5
問六 5
問五 5
問四 4
問三 A B C D G I 各2
問二 4
問一 a b c d e 各2
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分 ③ 『源氏物語玉の小櫛』 次の文について、後の問いに答えよ。 ここらの 物語書どもの中に、 この物語 は、ことにすぐれて、 めでたき ものにして、大かた先にも後に もたぐひなし。 これより先なる古物語 どもは、何事もさしも深く心を入れて書けりと し も 見え ず。ただひとわたりにて、あるはめづらかに興ある事をむねとし、 おどろおどろしきさまの事多くなどし て、いづれもいづれも、もののはれなるすぢなどは、さしもこまやかに深くはあらず。 、こ れより後のものどもは、狭衣などは、何事ももはらこの物語のさまをならひて、 心をい れ たり とは見ゆ るものから、こよなくおとれり。そのほかもみなことなることなし。 、この物語ぞこよなくて、ことに深く、よろづに心を入れて書け る ものにして、すべての 文 詞のめでたきことはさらにもいはず、よにふる人のたたずまひ、春夏秋冬をりをりの空のけしき、木草の ありさまなどまで、すべて書きざまめでき中にも、男女、その人人の、けはひ 心ばへにしたがひて一や うならず。 よく分かれて、うつつ の人にあひ見る ごとく おしはから るる など、おぼろげの筆の、かけても 及ぶ べき さまにあらず。 第 3 講 A 甲 ① イ 乙 ④ ② B ロ C ハ ⑤ D E F ⑥ ⑦ ⑧
制限時間 解答編 46 ページ 25
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第3講 『源氏物語玉の小櫛』
問三 波線部④~⑧の文法的意味を次の中からそれぞれ一つ選べ。 1 自発 2 尊敬 3 過去 4 強意 5 比況 6 可能 7 完了 8 受身
問二 波線部①~③の活用形を次の中からそれぞれ一つ選べ。 1 未然形 2 連用形 3 終止形 4 連体形 5 已然形 6 命令形
問一 空欄イ・ロ・ハの部分に入るべき語の組み合わせを次の中から選べ。 1 イ まづ ロ たちまち ハ いかで 2 イ まづ ロ また ハ ただ 3 イ また ロ たちち ハ いかで 4 イ また ロ ただ ハ たとひ
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E 心ばへ F よく分かれて 1 すぐに離別して 2 うまく離別して 3 よく分かるように書いて 4 うまく書き分けて 問五 二重傍線部「うつつ」を漢字一字で書け。 1 気立て 2 意味 3 趣味 4 教養
16 問四 傍線部A・B・E・Fの解釈について適当なものを次の中から選べ。 A ここらの 1 このあたりの 2 たくさんの 3 大げさな 4 こちらの
B おどろおどろしきさまの事
3 珍しい様子の事 4 人を驚かすような
1 おおげさな様子事 2 怪しい様子の事
第3講 『源氏物語玉の小櫛』
問八 傍線部D「文詞のめでたきことはさらにもいはず」をわかりやすく口語訳せよ。
1 心を込めて作っているらしいから、ほんのわずかの劣り方だ。 2 入念に作っているようだか、まったく劣る点がないといえる。 3 気持ちを打ち込んで作っているように見えるが、少々劣ってる。 4 丹精して作っているとは思うけれども、できばえは甚だしく劣っている 問七 この文章でのべられている傍線部甲「この物語」の特徴について適当なものを次の中から選べ。 1 珍しく興味のあることが書かれている。 2 源氏物語をたくみに模倣している。 3 世の中に生活する人の様子や心持ちがうまく描写されている。 4 昔の人生活が類型的に描写されている。
問六 傍線部C「心をいれたりとは見ゆるものから、こよなくおとれり」の解釈について適当なものを次 の中から選べ。
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第3講 『源氏物語玉の小櫛』解答欄
問十 傍線部乙の「これより先なる古物語」にあてはまるものを次の中から選べ。 1 竹取物語 2 平家物語 3 栄花物語 4 源氏物語 5 狭衣物語 6 雨月物語
問九 この文章は『源氏物語玉の小櫛』の一節である。著者を次の中から選べ。 1 紫式部 2 松平定信 3 新井白石 4 上田秋成 5 本居宣長 6 中島広足
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第3講 『源氏物語玉の小櫛』 問八 6 問九 3 問十 3
第3講 『源氏物語玉の小櫛』解答欄
問七 4
問六 4
問五 3
E 問四 A B 各2 F
問三 ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ 各2
問二 ① ② ③ 各2
問一 3
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制限時間 解答編 62 ページ 30 今は昔、 女 ※1 院、 内裏 へはじめて入らせおはしましけるに、御 屏 びゃう 風 ぶ どもをせさせ給ひて、歌よみども に 詠ませさせ給ひけるに、四月、藤の花おもしろく咲きたりける ひ ※2 らを、 四 ※3 条大納言あたりて詠み給ひけ るに、その日になりて、人々歌ども持てまゐりたりけるに、大納言遅くまゐりければ、御使して、遅き よしをたびたび 仰せられつかはす。権大納言行成、御屏風たまはりて、書くべきよしなし給ひければ、い よいよ立ち居待たせ給ふほどに、 まゐり給へれば、「歌詠ども、はかばかしきどももえ詠み出でぬに、 さ りとも 」と、誰も心にくがりけるに、御前にまゐり給ふや遅きと、 殿 ※4 の、「いかにぞ、あの歌は。遅し」 と仰せられければ、「 さらにはかばかしくつかまつらず。悪くてたてまつりたら ん は、まゐらせぬには劣 りたることなり。歌詠むともがらの、すぐれたらん中に、はかばかからぬ歌書かれたらむ、 長き名に候 ふべし 」とやうに、 いみじく逃れ申し給へど、殿、「あるべきこと に もあらず。 異人の歌なくてもありな む。御歌なくは、大方、色紙形を書くまじきことなり」などまめやか に 責め申させ給へば、大納言、「い みじく候ふわざかな。此度は、誰もえ詠みえぬたびに侍るめり。中にも、永任をこそ、さりともと、思ひ 給へつるに、『岸のやぎ』とふことを詠みたれば、いとことやうなることなりかし。これらだ に かく 詠みそこなへば公任は え詠み侍らぬもことわりなれば、許したぶべきなり」と、さまざまに逃れ申し給 分 第 4 講 『古本説話集』 ① a A B ア 甲 X イ C b 乙 c d 丙 次の文を読んで後の問いに答えなさい。
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第4講 『古本説話集』
D 問二 波線部X「ん」の意味と同じものを次の中から選べ。 1 散りぬとも香をだに残せ梅の花恋しきときの思ひ出にせむ 2 人はかたちあり様のすぐれたらむこそあらまほしかるべけれ 3 忍びて参りたまひなむや 4 道を学する人、夕べには朝あらんことを思ひ、朝には夕べあらんことを思ひて
ウ ③ エ へど、殿 あやにくに責めさせ給へば、大納言いみじく思ひわづらひて、懐より、陸奥紙に書きてたてまつ り給ば ひろげて前に置かせ給ふに、帥殿よりはじめて、そこらの 上達部・ 殿上人、 心にくく思ひけれ ば、「さりとも、この大納言故なくは詠み給はじ」と思ひつつ、いつしか、帥殿読み上げ給へば、 むらさきの雲とぞみゆる藤の花いかなるやどのしるしなるらん と読み上げ給ふを聞きてなむ、ほめののしりける。大納言も、殿をはじめ、みな人いみじと思ふ気色を見 給ひて、「今なむ、胸すこし落ちゐ侍りぬ」など、申し給ひける。 注※1 女院――藤原道長の娘彰子。 ※2 ひら――屏風の一面のこと。 ※3 四条大納言 公任。 ※4 殿――藤原道長。 問一 傍線部①~③の読み方を現代かなづかい(ひらがな)で書け。ただし①は二文字で答えなさい。 ②
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22 問三 波線部a~dの「に」の文法的説明として、適当なものをそれぞれ次の中から選べ。 1 格助詞 2 接続助詞 3 断定の助動詞連用形 4 完了の動詞連用形 5 助詞の一部 6 形容動詞活用語尾 問四 傍線部ア~エの意味として最も適切なものをそれぞれ一つずつ次の中から選べ。 ア さりとも 1 いくらなんでも、この大納言は名歌を詠んできただろう。 2 辞退しても、この大納言は名歌を用意しているだろう。 3 はかばかしい歌でなくとも、この大納言はそれなりの準備をしているだろう。 4 遅く来ても、この大納言ならすばやく歌を提出するだろう。 イ 長き名に候ふべし 1 長い後までも、名声を残すことになりましょう。 2 長く、後世 不名誉な名を残すとになりましょう。 3 後世に残る歌人としてふさわしいでしょう。 4 長い名をもつ歌人としての評判を残すとになりましょう。 ウ あやにくに 1 きびしく 2 ふつごうに 3 憎んで 4 ふしぎに
第4講 『古本説話集』
問六 傍線部甲・乙・丙を口語訳せよ。 問七 二重傍線部の「藤の花」は何を象徴しているか三文字で答えよ。
エ 心にくく思ひければ 1 腹を立てていたので 2 功名心にかられていたので 3 期待していたので 4 不愉快に思っていたので 問五 傍線部A~Dの主語として、最も適切なものをそれぞれ次の中から選べ。 1 女院 2 四条大納言 3 権大納言行成 4 殿 5 長能 6 帥殿
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第4講 『古本説話集』解答欄
問七 4
問六
問五 A B C D 各2
問四 ア イ ウ エ 各2
問三 a b c d 各2
問二 4
問一 ① ② ③ 各2
丙 4
乙 4
甲 4
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第4講 『古本説話集』
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制限時間 解答編 84 ページ 25 次の文章は『更級日記』の一節で、作者が宮仕えをしていた、ある時のことを記した部分 である。これを読んで、後の問いに答えなさい。 上達部・殿上人 などに 対面する人 は定まりたるやう なれ ば、 う ※1 ひうひしき里人は、ありなしをだに 知ら るべきにもあらぬに、十月ついたちごろのいと暗き夜、不 ※2 断経に 声よき人々読む程なりとて、そなた近 き戸口に二人ばかり立ち出でて聞きつつ物語して寄り臥してあるに、 参 ※3 りたる人 のあるを、「逃げ入り て、 局 つぼね なる人々呼び上げなどせむも見苦し。さはれ、 ただ折からこそ。かくてただ」と言ふ いま一人 の あればかたはらにて聞きゐたるに、 おとなしくしづやかなるけはひにて、ものなど言ふ、くちをしから ざ なり 。 「 いま一人 は」など問ひて、世の常の うちつけのけさうびて なども言ひなさず、世の中のあはれ なる こ とどもなど、こまやかに言ひ出で、 さすがにきびしう引き入りがたい節々ありて、 われも 人 も 答 いら へなど するを、「まだ知らぬ人のありける」など、めづらしがりて、 とみに 立つべくもあら ぬ ほど、星の光だに 見えず暗きに、うちしぐれつつ、木の葉にかる音のをかしきを、「 なかなかに 艶 えん にをかしき夜かな。月 のくまなく あかからむも、はしたなく まばゆかりぬべかりけり」など言ふ。 『更級日記』 分 ア イ a A ウ エ X B ① C b ② D c E オ カ F d G H 第 5 講
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第5講 『更級日記』
注※1 うひうひしき里人――宮仕え生活に慣れない、自宅にいることの多い人(作者)。 ※2 不断経――昼夜絶え間なく行う読経。 ※3 参りたる人――源資通。 問一 傍線部A・B・F・G・Hの口語訳として適当なものを次の中からそれぞれ一つずつ選べ。 A 知らるべきにもあらぬ 1 知られるはずでもない 2 知られてしまうのもいけない 3 知ることができそにない 4 知っておられるとは考えられ 5 知らなければならないわけでもない B ただ折からこそ 1 ときがときだけに気にしないでおこう
2 不断経で騒々しいから せずもよかろ 3 逃げ切れるものではないから覚悟しておこう 4 場合に応じて適当に振る舞うことにしよう 5 せっかくの機会だから話をしておこう
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1 5 光り輝くほど美しく見てしまう 問二 傍線部C・Dは、どのような様子・態度を言っているのか。その説明として適当なものを次の中か らそれぞれ選べ。 C おとなしくしづやかなるけはひにて 口数が少なく控えめな様子 年配らしく度胸のある様子 恥ずかしりで気弱な様子 分別がありおだやかな様子 世慣れていて慌てない様子 2 3 4 5 F とみに 1 さきには 2 しきりに 3 すぐには 4 まったく 5 目立って H まばゆかりぬ 1 まぶしいくらいになってしまう 2 まぶしくなくなってしまう 3 気恥ずか 思いになってしまう 4 気恥ずか G なかなかに 1 かえって 2 ちょうど 3 まったく 4 それ相応に 5 だんだんと
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第5講 『更級日記』
3 問五 波線部a~cの文法的説明して適当なものを次の中からぞれぞれ一つずつ選べ。 1 断定の助動詞 2 伝聞・推定の助動詞 3 動詞 4 動詞の一部 5 形容動詞の一部
2 だしぬけな好色めいた態度 無責任で思わせぶりな態度 問四 傍線部①・②と同一の人物を、文章中の傍線部ア~カの中からそれぞれ一つずつ選べ。
1 D うちつけのけさうびて ありきたりの信仰的な態度 慌てて取りつくろった態度 場を盛り上げる軽妙な態度 問三 傍線部Eは、なぜこのように言っているのか。その説明として適当なものを次の中から選べ。 1 相手の厳格さがわかるから 2 相手の恋心を痛感するから 3 相手の話に魅力を感じるから 4 相手の話が切れ目なく続くら 5 宮仕えする者の務めだと思う 4 5
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第5講 『更級日記』解答欄
30 問六 波線部dと同じ意味のものを次の中から選べ。 1 ちりぢりに行きあかれぬ。 2 そのきはばかりは覚えぬにや、 3 よしなしごと言ひてうちも笑ひぬ。 4 跡とふわざも絶えぬれば、 5 古き墳はすかれて田となりぬ。 問七 二重傍線部「あか」の表記として適当なものを次の中から選べ。 1 赤 2 空か 3 開か 4 明か 5 飽か 問八 傍線部Xと考えたのは、どのような理由からか。その理由して最も適当な箇所を問題文から三十 字以内で抜き出して記せ(句読点も字数に含む)。
第5講 『更級日記』
第5講 『更級日記』解答欄
問八 5
問七 4
問六 5
問五 a b c 各3
問四 ① ② 各3
問三 5
問二 C D 各3
問一 A B F G H 各2
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制限時間 解答編 98 ページ 30 次の文を読んで、後の問いに答えよ。 横笛といふをんなあり。滝口 是 これ を最愛す。父是をつたへ聞いて、「 世にあらん者 のむこになして、出仕 なんどをも心やすうせさせんとすれば、世になき者を思ひそめて」と、あながちにいさめければ、滝口申 しけるは、 「 ※1 西 せい 王 わう 母 ぼ ときこえし人、昔はあッて今はなし。 ※2 東 とう 方 ぼう 朔 さく といッし者も、名をのみ聞いて目には見 ず。老 らう 少 せう 不 ふ 定 ぢゃう の世の中は、石火の光にことならず。たとひ人長命といへども、七十八十をば過ぎず。その うちに身のさかむなる事は、わづかに廿余年なり。夢まぼろしの世の中に、みにくき者をかた時も見て何 かせん。思はしき者を見むとすれば、父の命をそむくに似たり。是 ※3 善 ぜん 知 ち 識 しき なり。しかじ、うき世を厭ひ、 まことの道に入り なん 」とて、十九のとしもとどりきッて、嵯峨の 往 わう 生 じゃう 院 ゐん におこなひすましてぞゐたり ける。横笛これをつたへきいて、「 われをこそすてめ、 様をさへかへ けむ事のうらめしさよ。たとひ世を ばそむくとも、などかかくと知らせざらむ。人こそ心 とも、たづねて恨みむ」思ひつつ、あ る暮がたに都を出でて、嵯峨の方へぞ あくがれゆく。ころは 十日あまりの事なれば、梅津の里 の春風に、よその匂もなつかしく、大井河の月影も霞にめておぼろ 一方ならぬ哀れさも、誰ゆゑ とこそ思ひけめ。往生院とは聞きたれども、さだかにいづれの坊とも知らざれば、ここにやすらかしこ にたたずみ、たづねかぬるぞむざなる。住みあらしたる僧坊に念 ねん 誦 じゅ の声しけり。滝口入道が声と聞 『平家物語』 分 A a ア B C イ D 第 6 講
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第6講 『平家物語』
b ウ エ なして、「わらはこそ是までたづね参りたれ。様のかはりて おはす らんをも、今一度見奉らばや」と、具 したりける女をもッていはせければ、滝口入道むねうちさわぎ、障子のひまよりのぞいてみれば、 まこと に尋ねかねたけしきいたはしうおぼえて、いかなる道心者も心よわくなりぬべし。やがて人を出して、 「まッたく是にさる人なし。門たがへでぞあるらむ」とて、 つひにあはでぞかへしける。横笛なさけなう うらめしけれども、力なう涙をおさへて帰りけり。
注※1 西王母――中国神話の女神で、不死の薬を持つと信ぜられていた。 ※2 東方朔――仙術の心得があり、長寿であったという伝説上の人物。 ※3 善知識―人を仏道に入らせるよい機縁。 問一 傍線部Aを口語訳せよ。 問二 傍線部B「様をさへかへ」とは具体的にはどういうこと意味しているか。六字以内で答えよ。 問三 空欄Cに入れるのに適当なものを次の中から選べ。 1 あしく 2 たけく 3 つよく 4 よわく 5 はたらく 問四 空欄Dに入れるのに適当なものを次の中ら選べ。 1 きさらぎ 2 うづき 3 ながつき 4 さつき
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+ + 問五 波線部a「なん」の文法的説明として適当なものを次の中から選べ。 1 係助詞 2 終助詞 3 完了の助動詞 推量の助動詞 4 断定の動詞 推量の動詞 問六 傍線部ア・ウの意味として適当なものを次の中からそれぞれ一つずつ選べ。 ア「われをこそすてめ」 1 自分を捨てるのはよいが 2 自分の我を押し通すのは止そう 3 きっと自害なさるにちがいない 4 自分のほうこそ出家してしまおう ウ「まことに尋ねかねたるけしき」 1 まだここを探しあぐねている様子 2 いかにもやっとここを探し当てた様子 3 本当はここではあるまいと疑っている様子 4 建物の中に入っていいかどうかを躊躇してい様子 問七 傍線部イ「あくがれゆく」とあるが、ここでは横笛のどのような気持ちが現れいるか。適当なも のを次の中から選べ。
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第6講 『平家物語』
1 滝口への憧れの気持ちが強く、再会を期して心が浮き立つような感じ 2 失恋の痛手で魂が身体から抜けたような、ぼんやりとしてさま 感じ 3 出家した滝口にお願いして、自分も出家を許してもらおうというひたむきな感じ 4 春はまだ浅いとはいえ、嵯峨野の美しさにうっとりとなり、気持ちがうわついていく感じ 問八 敬語には、尊敬語・謙譲語・丁寧語の三種類がある。波線部b「おはす」と同じ種類の敬語のもの を、次の文中の傍線部の中から選べ。 1 よきに奏し給へ、啓し給へ。 2 海にます神の助けにかからずは潮の八百会にさすらへなまし。 3 横さまの乱れ出でくる事、もろこしにもべりける。わが国にさなむはべる。 4 いにしへの世々の帝、春の花のあした、秋の月の夜ごとに、さぶらふ人々を召して、ことにつけ つつ歌をたてまつらしめ給ふ。 問九 傍線部エ「ひにあはでぞかへしける」とあるが、その理由として適当なものを次の中から選べ。
1 横笛に逢えば、父と交わした約束を違えることになってしまうの 2 仏門に入った修行の身は、俗世人とは逢えないのが掟であったから 3 女の姿には深く同情したが、自分気持ちはすでに女から離れてたから 4 逢ってしまうと恋慕の気持ちが出て、仏門修行の妨げになる恐れがあったから
35
第6講 『平家物語』解答欄
36 問十 問題の文章は、『平家物語』の一節である。次にあげる文学史上の人物の中で、『平家物語』に語ら れた平家の滅亡と同時代に生きたのは誰か。次の中から選べ。 1 紀貫之 2 紫式部 3 西行法師 4 吉田兼好
第6講 『平家物語』
第6講 『平家物語』解答欄
問二 5
問十 4
問九 5
問八 5
問七 5
問六 ア ウ 各4
問五 4
問四 4
問三 4
問一 6
37
制限時間 30 次の文章は『源氏物語』「夕顔」の巻の冒頭で、源氏が病気見舞に大弐の乳母(源氏の養 育係。源氏の従者惟光の母でもある)の五条の家を訪れた場面である。当時源氏は六条御息 所のもとに忍んで通っていたが、乳母の家はそ途中にあった。以下の本文を読んで設問に 答えよ。 六条わたりの御忍ありきの頃、内裏より罷で給ふ中 なか 宿 やどり に、大弐の 乳母のいたくわづらひて尼になりにけ る、とぶらはむとて、五条わたりなる家尋ねておはしたり。御車入るべき門は鎖 さ したりければ、人して惟 光召さ せ て、 待たせ給ひける程、むつかしげなる大路のさまを見渡し 給へる に、この家の傍に、檜 ひ 垣 がき とい ふもの新しうして、上は、 半 は 蔀 じとみ 四五間ばかりあげ渡して、簾などもいと白う涼しげなるに、をかしき額 つきの透 すき 影 かげ 、あまた見えてのぞく。たちさまよふらむ下つ方思ひやるに、あながちに 長高き心地ぞする。 いかなる者の集へるならむとやうかはりて思さる。御車もたくやつし給へり、前 さ 駆 き もおはせ給はず、 誰とか知らむとうちとけ給ひてすこしさしのぞき給へれば、門は蔀のうな、押しあけたる。見いれ の程なく、ものはかなき 住 すまひ を、あはれに、 何 いづこ 処 かさして、と思ほしなせば、玉の 台 うてな も同じことなり。 りかけだつ物に、いと青やかなる葛 かづら の、心地よげに蔓 は ひかかれるに、白き花ぞ、おのれひとり笑 ゑみ の眉開け たる。( A )「遠 をち 方 かた 人 びと に物申す」とひとりごち給ふを、御 み 随 ずい 身 じん つい居て、( B )「かの白く咲けるを 『源氏物語』 分 ア a 1 b イ 2 第 7 講
解答編 112 ページ
10
5
38
第7講 『源氏物語』
ウ 4 d なむ夕顔と申し侍る。花の名は人めきて、かうあやしき垣根になむ、咲き侍りける」と申す。げにいと 小家がちに、むつかしげなるわたりの、このものも、あやしくうちよろぼひて、むねむねしからぬ軒 のつまなどに、 蔓 は ひまつはれたるを、( C )「くちをしの花の契や。一ふさ折りて参れ」と宣へば、 この押しあけたる門に入りて折る。さすがにざれたる 遣戸口に、黄なる生 すずし 絹の、単袴、長く着なしたる童 の、をかしげなる、 出で来て、うち招く。白き扇の、いたうこがしたるを、( D )「これに置きて参ら せよ。枝も なさけなげなめる 花を」とて、 取らせたれば、門あけて惟光の朝臣出で来たるして、奉らす。 ( E )「鍵を置き惑し侍りて、いと不便なるわざなりや。物のあやめ見 給へ分く べき人も侍らぬわたり なれど、らうがはしき大 おほ 路 ぢ に立ちおはしまして」と、かしこまり申す。引き入れて下り給ふ。 c
3 問一 傍線部ア~ウの語の読み方を平仮名で記せ。 問二 文中( A )~( E )は、会話もしくは独言の話し手を補おうとしたものであるが、それぞ れどの人物が該当するか。次の中からそれぞれ選べ。 1 惟光 2 随身 3 源氏 4 童 問三 傍線部1は惟光が何をしている間「待たせ給」うたのか。文章全体の内容をふまえて答えよ
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4 謙譲の補助動詞「給ふ」の連用形に可能の助動詞「る」の終止形が接続したもの。 5 謙譲の補助動詞「給ふ」の未然形に完了助動詞「り」の連体形が接続したもの。 問八 波線部cを元の形に戻して答えよ。 問九 傍線部4の状況の説明として適当なものはどれか。次の中から選べ。
40 問四 傍線部2を口語訳せよ。 問五 傍線部3はある主部に対する述部であるが、何が「出で来て、うち招く」のか。主部全体を抜き出 して記せ。 問六 波線部aの助動詞の文法上の意味は何か。次の中から選べ。 1 尊敬 2 使役 3 受身 4 謙譲 5 可能 問七 波線部bの文法的説明として適当なものを次の中から選べ。 1 尊敬の補助動詞「給ふ」の連体形。 2 尊敬の補助動詞「給ふ」の已然形もしくは命令形に可能の助動詞「る」の終止形が接続したもの。 3 尊敬の補助動詞「給ふ」の已然形もしくは命令形に完了の助動詞「り」の連体形が接続したもの。
第7講 『源氏物語』
4 童が随身に扇を与えると、惟光が出て来て門を開けて、随身を使っ源氏に扇をさし上げさせる。 5 童が随身に扇を与えると、随身は門を開けて、惟光を通じて扇を「物のあやめ見給へ分くべき 人」にさし上げさせる。 問十 波線部dの語の敬語の種類を次の中から選べ。 1 尊敬語 2 丁寧語 3 謙譲語
1 童が随身に扇を与えると、随身がそれを源氏にさし上げる。その時、惟光が出て来る。 2 童が随身に扇を与えると、門を開けて惟光の家来がやって来たので、その男に命じ源氏にさし 上げさせる。 3 童が随身に扇を与えると、丁度そこに惟光が門を開けて出て来たので、随身は惟光を通じて源氏 に扇をさし上げさせる。
41
第7講 『源氏物語』解答欄
問十 4
問九 4
問八 4
問七 4
問六 4
問五 4
問四 5
問三 5
問二 A B C D E 各2
問一 ア イ ウ 各2
42
第7講 『源氏物語』
43
制限時間 解答編 126 ページ 30 次の文章を読み、後の問に答えなさい。 御女、村上の御時の宣耀殿の女御、かたちをかしげにうつくしう おはし けり。内へ まゐ り 給ふ とて、 御車に たてまつり たまひければ、わが御身は乗り給ひけれど、 御ぐし のすそは母屋の柱のもとにぞ おはし ける。ひとすぢをみちのくにがみにおきたるに、いかにもすきみえずとぞ、 申しつたへためる。御めのし りすこしさがり給へるが、 いとどらうたくおはするを、みかどいとかしこく時めかさせ給ひて、かく おほ せられけるとか、 生きての世死にてののちの後の世も はねをかはせる鳥となりなむ 御かへし、女御、 あきになることはだもかはらずは われもかはせるえだとなりなむ 古今 うかべ 給へりときかせ給ひて、みかど、こころみに 本 をかくして、女御にはみせさせ給はで、「やま と歌は」とあるをはじめにて、まづの句のことばをおほせられつつ、とはせ給ひけるに、いひたがへ給ふ こと、詞にても歌にてもなか り。 かかることなむと、父おとどはきき給ひて、 御装束して 、手洗ひな ど して、所々に誦経などし、念じいりてぞおはしける。 『大鏡』 分 a b c d A ア イ 甲 ウ X Y エ B C e オ 第 8 講
10
5
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第8講 『大鏡』
A 問一 傍線部ア~オの動作主について、適当なものを次の中から一つずつ選べ。 1 父おとど 2 みかど 3 宣耀殿の女御 4 その他 問二 波線部a~eについて、次の中から適当なものを一つずつ選べ。(同じものを何度用いてもよい。) 1 尊敬の動詞 2 謙譲の動詞 3 丁寧の動詞 4 尊敬の補助動詞 5 謙譲の補助 6 丁寧の補助 7 その他 問三 二重傍線部A「御ぐし」とは何か。漢字一字で記せ。 問四 二重傍線部B「本」とは、何の本を指してるのか。それを漢字で記せ。(漢字五字以内で記すこ と) 問五 「あきになる」の和歌について。「ことのは」とは、だれの「ことのは」か。適当なものを次の中か ら選べ。 1 父おとど 2 みかど 3 宣耀殿の女御 4 その他 問六 「あきになる」の和歌ついて。「あき」は「秋」と の掛詞となっている。 に相当する語を漢字一字で記せ。 A
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第8講 『大鏡』解答欄
1 女御が古今集の暗誦のテストに成功すること。 2 女御が古今集の解釈のテストに失敗すること。 3 女御に古今集の解釈をさせること。 4 女御に古今集の暗誦のテストをすること。 5 女御の古今集のテストの成否が父にかかわること。 問九 傍線部X・Yは『長恨歌』という漢詩からとられているが、『長恨歌』の作者の名を漢字で記せ。 問十 次の作品群のなかで、歴史物語といわれている作品はどか。適当なものを次の中から選べ。 1 栄花物語 2 源氏物語 3 浜松中納言物語 4 平家物語 5 保元物語
46 問七 傍線部甲「いとどらうたくおはするを、みかどいとかしこく時めかさせ給ひて」を口語訳せよ。 問八 二重傍線部C「かかること」の具体的内容として適当なものを次の中から選べ。
第8講 『大鏡』
第8講 『大鏡』解答欄
問四 4
問十 3
問九 4
問八 3
問七 6
問六 4
問五 3
問三 3
問二 a b c d e 各2
問一 ア イ ウ エ オ 各2
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はじめに 最強にして最速! 映像・音声授業付き問題集で実力アップ この『極める古文』シリーズは、基本問題から学習スタートして一段ずつ階段を上るようにステップ アップしていく構成になっている問題集です。それぞれのステップにおける学習テーマを身に付けていけ ば、最終的に 上位 ~ 難関レベルの国公立大・私立大に合格する古文の実力が付く 仕組みになっています。 さらにこのシリーズでは、 映像・音声データによる解説授業 が無料で付いているので、ペース配分や細 かいフォローもバッチリです。「最強にして最速」、これが極める古文シリーズの最大の武器です。 『基礎・必修編』では「文法+単語+解釈」で基礎力を万全に
+ + シリーズ第一巻の「基礎・必修編」では、各講に「学習テーマ」を設けています。そテーマにしたがっ て勉強し、各講で出てくるポイントをマスターしていくことで、古文が苦手な人でも徐々に理解していけ るように工夫してあります。古文の勉強法は外国語と同じで 、 「文法 単語 解釈」 が読解の基礎になりま
す。特にこの巻では、「文法」の習得に力を注いでいま 古文文法は無味乾燥で勉強しづらいものです が、解説内のゴロ覚えや映像・音声授業などを有効活用して、ぜひ食わず嫌いを解消してください。 この一冊を繰り返し復習すれば、古文に対する苦手意識がなくなり、勉強がきっと楽しくなってくるは ずです。そして勢いそのままに、次のレベルへとステップアップしていきましょう!
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まずは『ゴロゴ』シリーズで 古文の基礎知識を仕上げよう 単語 / 文法 / 読解
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本書の利用法 1 本書は古文の基礎力養成を目的としています。問題を解く際は、まずは制限時間 を気にせず、自力で全問を解くことにチャレンジしてください。 2 問題を解き終えたら、解答・解説を読みつつ自己採点してください。その際、得 点を気にするのではなく、自分に不足している知識や読解法が何なのかをチェック しましょう。 3 最も大切なことは「復習」です。古文は、 「繰り返し学習して確実にマスターする」 ことが大切です。特にポイントでまとめられている内容は、完璧に自分の血肉と化 すように心掛けてください。
4 この問題集をひと通り解き終えたあとは、もう一度見直しをするとともに、「古 文と口語訳の対照」のページの復習を行ってください。上段が古文、下段が口語訳 になっているので、下段を見ないようにしながら、自力で上段の古文を口語訳して みましょう。そうすることで読解力が飛躍的に向上します。 ※ 古文単語は『古文単語ゴロゴ』、古文文法は『古文文法ゴロゴ』、この二冊に大学入試古文の単語・文法 に関する重要事項を網羅的にまとめています。ぜひ本問題集とあわせて使って古文力を絶対的なものに 仕上げてください。
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オンラインフリー -本書籍は、オンライン上で自由に (※1) 利用できます- 映像・音声授業で自宅学習を完全サポート! 『極める古文』シリーズの最大の特徴としては、「映像・音声授 業」が付いていることです。古文を自学自習するのは容易なこと ではありません。「やるぞっ!」とスタートしても、最初の数題 をやったところで挫折してしまう人も多いのです。 そこで、この『極める古文』シリーズでは「映像・音声授業」 を付けることで、 みなさんのモチベーションをアップ して、最後ま走り切れるようサポートします。 映像・音声授業では、解説みならず、入試に役立つアドバイ スなども交え、楽しくてためになる内容をお届けします。 付属の映像・音声授業を利用するには、巻末の袋とじページか ら 「ゴロゴネット」にアクセスして、ハイブリッドコードを登録 してください。 せっかくのコンテンツも使わなければ宝の持ち腐 れ。ぜひぜひ映像・音声授業も有効活用しください。
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1 目次 第 講 『宇治拾遺物語』 ――――――――――――――――――――――――――――――――― ◦ 動詞「―ウる」「―ウれ」の形 ◦ 動詞の活用の種類の判別 ◦ 上一段活用動詞は「ひいきにみゐる」 ◦ 活用の種類を覚えておくべき動詞 ◦ 連用形接続の助 ◦ 終止形接続の助動詞 ◦ 未然形接続の助動詞 ◦ 「む(ん)」の六つの意味 ◦ 敬語の主体と対象の解法 ◦ 「已然形+ば」 順接確定条件 ◦ 係り結び法則 第 講 『徒然草 』 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― ◦ 「ぬ」の識別 ◦ 格助詞「と」 ◦ 「、」「て」「つつ」の前は連用形 ◦ 「こそ~已然形、」の形 ◦ 「む(ん)」の婉曲用法 ◦ 「やは・かは」は反語 第 講 『源氏物語玉の小櫛』 ― ――――――――――――――――――――――――――――――― ◦ ク活用の形容詞の活用 ◦ 完了の助動詞「り」の接続 ◦ 「エ段+られるれ」法則 ◦ 助動詞「る・らる」の自発パターン ◦ 「べし」の七つの意味 ◦ 口語訳問題の解法パターン 第 講 『古本説話集』 ―――――――――――――――――――――――――――――――――― ◦ 平安貴族の呼び方 ◦ 「む(ん)」の仮定の用法 ◦ 「む(ん)」の六つの意味 ◦ 「に」の識別 = 2 3 4
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5 ◦ 「已然形+ば」の因果関係 ◦ 主語判定の基本パターン ◦ 全否定の副詞 ◦ 連用形+「なむ」=連用形+「な」+「む」 第 講 『更級日記』 ――――――――――――――――――――――――――――――――――― ◦ 助動詞「る・らる」の四つの意味 ◦ 「なり」の識別 ◦ 「なるなり→なんなり→ななり」 ◦ 「ぬ」の識別 第6講 『平家物語』 ――――――――――――――――――― ◦ 出家パターン ◦ 陰暦月 ◦ 「なむ(ん)」の識別 第7講 『源氏物語』 ――――――― ◦ 助動詞「す・さす・しむ」の意味 ◦ 「給ふ」と「り」の組み合わせ ◦ 二種類の「給ふ」 第8講 『大鏡』 ― ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ◦ 「て・つつ・して・で」を挟と同一主語 ◦ 二種類の「給ふ」 ◦ 「たてまつる」について ◦ 和歌の修辞法 ◦ 口語訳問題の解法パターン
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第 1 講 『宇治拾遺物語』 2 助動詞の接続 3 敬意の主体と対象(誰の、誰に対する敬意か)の解法 4 「係り結び」の法則 さあ、いよいよ第1講、スタートだ。今まで古文が苦手だった人も、あるいは得意だと思ってい る人も、全員気持ちも新たにこの問題集にのぞんでほしい。 今回のテーマのうち、1の「動詞の活用の種類と活用形」と2の「助動詞の接続」に関しては古 文読解の基礎になるものだ。特に、 助動詞の接続はこの講義のポイントを参照して完全にマスター しよう 。テーマ3 4の項目は、実際の入試でよく問われるものだけに、気合を入れて覚えよう。 学習テーマ 1 動詞の活用の種類と活用形
・ とにかく目の前にあることを日々確実にこなせた人が、最後に成功をつかんでいる。現時点での 成績など無関係。しかし、今日から勉強を始めた人は、どんなことがあってもこの問題集を最後ま で完走し、繰り返してマスターしてほしい。古文の勉強なんてつまらないかもれないが、助動詞
問題編 02 ページ
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第1講 『宇治拾遺物語』
28 P oint や古文単語を覚えたりすることが、自分の未来を切り拓くことを信じて暗記するのだ。 かつて、偏 差値 からスタートして、わずか半年で まで アップさせた生徒がいた。この記録に挑戦だ 問一 aの「戒むる」は入試文法の動詞の中で最もよく出る形だ。ポイントは、次のように「―ウる」 という形をとっているところ。 「―ウる」「―ウれ」の形は上二段か下二段活用の連体形・已然形 上二段活用動詞 上二段活用動詞 ―ウ る =連体形 ―ウ れ =已然形 下二段活用動詞 下二段活用動詞 ここでは a「戒むる」=「―ウる」となっているので、まずは「連体形」が決定 する。活用の種類と 活用形を問われた場合は、まず活用形を判断するのが先だ。次に下に「ず(ない)」を付けて活用させ、 活用の種類決定しよう。 ここでデータ的な話をすると、大学入試で問われる動詞の形は圧倒的に「―ウる」 「―ウれ」の形が多い。 78 50 !!
9
12 は、似ているようでいて違う活用の種類、活用形あるところがなかなか厄介だ。 ポイントにもあるように、古語で「―ウる」という形になっている単語を見たら、すぐさま下二段か 上二段の連体形だな、という感覚を持てるようにしてほしい。 動詞の活用種類の判別は、下にず」を付け考える。(※活用の種類を覚え ておくべき動詞除く) ― ア /ず =四段活用動詞 →「ず」を付けると ア 段になる動詞 ― イ /ず =上二段活用動詞→「ず」を付けると イ 段になる動詞 ― エ /ず =下二段活用動詞→「ず」を付けると エ 段になる動詞 ∥ 赤字に当たるところが活用の行 ※「ア・イ・エ」にあたるところが活用の行。例えば「咲 か /ず」であれば、 カ 行。「過 ぎ /ず」 であれば ガ 行。「め で /ず」であれば ダ 行。 ※活用の種類を覚えておくべき動詞については、P ページ参照。 「戒め(―エ)ず」=「―エず」となるので、下二段活用だとわかる。また、同時に「め」の行が活 用の行にあたるので、マ行とわかる。正解はマ行下二段動詞連体形。a= ・4。 10 P oint たとえば、現代語では「戒 め る」だが、古語では「戒 む 」の連体形が「戒
む る」だ。現代語と古語とで
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第1講 『宇治拾遺物語』
P oint bの「居」は字を見たとたん、上一段活用とわかってほしい
用の種類のひとつだ。 上一段活用動詞は「ひいきにみゐる」 ➡ 活用の行 ひ 干る ――――――――――――――――――― ハ行 い 射 い る・鋳 い る ―――――――――――――――― ヤ 行 ➡ 気をつけるべし! き 着る ――――――――――― カ行 に 似る・煮る ――――― ナ行 み 見る ――――― マ 行 ➡ 「ラ行」なんて言うなよ! ゐ 居 ゐ る・率 ゐ る・率 ひき ゐる・用ゐる ワ 行 ➡ ここが入試にでる! る 上一段活用は「ひいきにみゐる」! これさえ覚えておけば、bの「居」がワ行上一段動詞であるこ とはわかる。 この中でよく出のが、「射る・鋳る・居る・率る」の識別だ。 「射る・鋳る」はヤ行、「居る・率る」 はワ行 であることをしっかり覚えておこう。次に、どの漢字が当たるか文脈判断も大切。 たとえば、 「見れば、ゐて来し女もなし」の「ゐ」を漢字で書け、という問題などがよく出る。その場合、
。上一段活用は覚えておくべき動詞の活
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P oint 「見てみると、連れて来た女もいない」と判断して、「率」の字が正解となる。次のポイントでは、上一 段活用動詞同様、「活用の種類を覚えておくべき動詞」の一覧を掲載するので、自分で紙に写し取るな どして、完全にマスターしてしまおう! 活用の種類を覚えておくべき動詞 1 上一段 活用動詞 ※前ページのポイント参照。 2 下一段 活用動詞 =「蹴る」の一語のみ。 3 カ 行 変 格活用動詞= 「来 (く)」一語 ※ただし「出 い で来 く 」のような複合動詞あり。 4 サ 行 変 格活用動詞= 「す」一語 ※ただし「恋す」「具す」のような複合動詞あり。 5 ナ 行 変 格活用動詞= 「死ぬ」「往 い (去) ぬ」の二語 。 6 ラ 行 変 格活用動詞= 「あり」「をり」「侍 はべ り」「いまそかり」の四語 。 ※「いまそかり」は「いまそがり」「いますかり」「いまそかり」「いましかり」なども書かれる。 この一覧の中で、特にカ変「来」はよく出る。というのも、カ変は漢字で活用を書くと、 「来(こ)/来(き) /来(く)/来る/来れ/来(こ)」となり、 「来」という字の可能性として、未然形・連用形・終止形・ 命令形の四つもある のだ(命令形が「こよ」となるのは中世以降)。カ変が問われた時は、何形なのか の判断は慎重に行ってほしい。特に文末の「来」は、終止形か命令形かの見極めを忘れないことだ。「こ ち率て来」=「こっちへ連れてこい」などの場合は、「来」は「こ」と読んで命令形だ。
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第1講 『宇治拾遺物語』
P oint 最後にb「居」の活用形を決定するのだが、「居る」は、 ゐ/ゐ/ゐる/ゐる/ゐれ/ゐよ と活用するので、形の上からでは未然形なのか連用形なのかの区別がつかない。そうなると、下の助動 詞「たる(たり)」が何形に接続する助動詞なのかを覚えておくしかない。 連用形接続の助動詞 け 「けり」 っ た 「たり」 り つ 「つ」 ぬ 「ぬ」 った 「たし」 し 危 「き」 険 「けむ(けん)」 けり(過去) たり(完了) つ(完了) 連用 形 + ぬ(完了) たし(希望) き(過去) けむ・けん(過去推量 ということで、助動詞「たり」は連用形接続であることから、bの「居」は連用形とわかる。活用形は 下に付く助動詞が決定するのだ。b=2・2
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11 3 P oint cの「打つ」は「覚えておくべき動詞」ではないので、下に「ず」を付けてみて判断する。すると「打 た(―ア)ず」となるので、タ行四段動詞。ところが「打つ」を活用させてみると、 打た/打ち/打つ/打つ/打て/打て となって、「打つ」は終止形か連体形かわからない下の助動詞「べき(「べし」の連体形)」の接続を 覚えておくしかない。 終止形接続の助動詞(ただしラ変型活用のものには連体形に接続する) ラムちゃんメリちゃんなりはべしっとまじ らしい らむ(現在推量) めり(推定) 終止 形 + なり(伝聞・推定) = べし(推量) ウ段 まじ(打消 らし(推定) ※終止形接続の助動詞、というのはラ変型活用のものには連体形(「―る」の形)に付ので、「ウ 段に付く」と覚えておいたほうが入試では実践的だ。 助動詞「べし」が終止形接続であることから、「打つ」は終止形とわかる。正解はc= ・ 。
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第1講 『宇治拾遺物語』
・ ・ P oint この「終止形接続の助動詞」で注意すべき点が一つある。終止形はたいてい「ウ段」だが、唯一終止 形がイ段である ラ変動詞には連体形に付く という点だ。たとえば、「あり」+「らむ」の場合、「ありら む」ではなく、 「あるらむ」 となる。同様に、 ラ変型の活用をする形容詞(カリ活用)や形容動詞も、 「美 しかるらむ」「静かなるらむ」 と、連体形が接続することを同時にここで覚えておこう。 dは難しい。まず、「打(ちゃう)ぜん」の「ん(=む)」が何形に接続するかだが、助動詞の「ん」 は今まで見てきた「連用形接続」でも「終止形接続」でもな。未然形接続だ。 未然形接続の助動詞 る、らる、す、さす、しむらズラ。ジ ムのムズいマシーンでまほ死んだ。 る・らる(受身・尊敬 可能 自発) す・さす・しむ(使役・尊敬) ず(打消) 未然 形 + じ(打消推量 む(ん)(推量) むず(んず まし(推定) まほし(希望)
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10 助動詞「ん(=む)」が未然形接続であることから、「打ぜ」は下二段活用かサ行変格活用だと判断す る。実は「ぜ」と濁っていてもサ変の場合がある。そしてサ行下二段動詞なのか、変動詞なのかは 断が非常に難しい。実際に活用を比べてみると、以下のように連用形が違うだけなのがわかる。 サ行下二段活用とサ行変格活用の違い。 サ行下二段活用 せ/ せ /す/する/すれ/せよ サ行変格活用 せ/ し す る/すれ/せよ では、サ行下二段動詞とサ変動詞の見分けはどうすればいいのかというと、下に「ず」を付けても同 じなので、数が限られているサ変動詞を覚えていくしかない。 おもなサ行変格活用動詞。 啓す 奏す 恋す 愛す おはす かなしうす 具す 心す ご覧ず 念ず 打ず など 今回の「打ぜ」は覚えているからこそ解ける問題で、正解はサ変動詞の未然形。d=7・1 解答 a= ・4 b=2・2 c= ・3 d=7・1 11
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第1講 『宇治拾遺物語』
「むず」「んず」となっている場合は、
問二 助動詞「む」は「ん」「むず」「んず」とも言い、文中で頻出する大切なものだ。 「む」ではなく、二重傍線部のXのように「ん」となっていたり、 下手すると打消語にとってしまう可能性があるので、 くれぐれも「ん」や「むず」「んず」を打消で解 釈しないように! 「む」=「ん」「むず」「んず」。 ※「ん」は「む」の音便形。「むず」は「むとす」が縮まったもの。「んず」はさらにその音便形。 (例) 雨降ら む =雨降ら ん =雨降ら むず =雨降ら んず =○が降るだろう。 ×雨が降らないだろう。
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35 4 「む」+体言・助詞=婉曲「~ような ※P 参照 5 「むに・むには・むは・むも・むこそ」=仮定「~としたら、それは~」 ※P 参照 ここでの「む」は下に「と」を伴っているのがポイント。 と覚えておけば、 %以上の確率で正解できる。 ここでも「『召しにやりて戒めん』と」となっており、「と」の前の「ん」の形なので、「戒めよう」 と意志の形で訳出してみて文脈的に問題のないこを確認しおこう。 解答 2 64 90 P oint 「む(ん)」の六つの意味 ・勧誘「~てはいかが」 す い て き か か 1 一人称+む=意志「~よう」 2 二人称+む=適当「~がよい」 ※「こそ~め」の場合は「勧誘」が多い。 3 三人称+む=推量「~だろう」 推量 意志 適当 勧誘 仮定 って え ーん 婉曲 「と」の前の「む(ん)」は意志!
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第1講 『宇治拾遺物語』
問三 格助詞「の」は、選択肢にもあるように五つの用法がある。中でも 格」と「同格」だ 。古文では「の」が問われたらまず主格と判断し、「が」と訳す習慣をつけてほしい。 現代語で主格を表す「が」にあたるは、古文では「の」であることが多いので、古文読解の基本とし ては、「の」ときたら「が」、と置き換えて読むことが大切だ。 格助詞「の」の用法。 格助詞「の」が問われたら、まず主格と判断し、「が」と訳す。ただし、「が」と訳せない場合は他 の用法を検討する。特に「同格」の用法に注意する。 「の」には、現代語と同じ「連体修飾格(=の)」や「体言の代用(=のもの・のこと)」、さらには和 歌にしか用いられないが「連用修飾格(=のように)」もある。 ただ、まずは主格と同格のマスターに絞っ て勉強してほし。同格については、講を改めて詳しく説明する。 さて、二重傍線部Yは「人の」の「の」なで、明らかに主語に付いた主格の「の」だと判定できる。 もちろん口語訳をしていって、主語に対応する述語部分を探、対応関係を確認することを忘れないよ うにしよう。 問四 さっそく敬意の主体と対象の解法のポイントをまとめてみよう。 解答 2 入試でポイントになるのは「主
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P oint 敬意の主体と対象の解法 敬意の主体は「地の文」なのか「会話文」なのかで二つに分かれる。次に「尊敬語」「謙譲語」「丁 寧語」で敬意の対象が変わってくる。 1.地の文(「会話文」でないところを「地の文」と呼ぶ)において 「誰の」はすべて「筆者の」なので、「誰に対する敬意」がポイント。 a 尊敬語 筆者の 主語に対する 敬意。 b 謙譲語 筆者の 目的語に対する 敬意。 c 丁寧語 筆者の 読み手に対する 敬意。 2.会話文において 「誰の」はすべて「会話主の」なので、「誰に対する敬意」がポイント。 a 尊敬語 会話主の 主語に対する 敬意。 b 謙譲語 会話主の 目的語に対する 敬意。 c 丁寧語 会話主の 聞き手に対する 敬意。 違う視点でみると、 「地の文」でも「会話文」でも敬語によって次のようにまとめることができる。 a 尊敬語はそのの主にあたる人が敬意の対象。 b 謙譲語はその語目的語(~へ・~に・~を)にあたる人が敬意の対象。 c 丁寧語は読み手、あるいは聞き手にあたる人が敬意の対象。
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第1講 『宇治拾遺物語』
問五 『古文単語ゴロゴ』が使えるものは、どんどん使って解答しよう! ただし、多義語に関しては 文脈判断を忘れないようにして、適切な意味を選ぶように気をつけよう。 イの「しどけなかりければ」は「しどけなし」のゴロ一発だ。 シッ!どけ梨、くつろぐな、だらしないぞ しどけなし=1くつろぐ 2だらしない 解答 A イ=3 ロ=1 B イ=5 ロ=1 C イ=4 ロ=1
さて、ここでの解法の手順としては、 1.まず傍線部が「地の文」なのか「会話文」なのかで「誰の」を決定する。 2.次に敬語が「尊敬語」なのか「謙譲語」なのか「丁寧語」なのかで、「誰に対する」を決定する。 Aは地の文にあるので、イ「誰の」は3「筆者の」、「給ふ」は尊敬語なので、ロ「誰に対する」は主 語である1「大隅守に対する」と決まる。 Bは会話文にあるので、イ「誰の」は会話主である5「呼びに行った使いの者」、「参り」は謙譲語な ので、ロ「誰に対する」は目的語である1「大隅守に対する」と決まる。
Cは会話文にあるので、イ「誰の」は会話主である4「盗人の」。実はここの「盗人」とは「郡司」 のことなのだが、直前の会話で「おのれはいみじき盗人 」と呼び捨てられているので、2の「郡司」 とするのではなくて4の「盗人」とするのが正解。ひっかからないようにしたい。次にCの「候へ」 は丁寧語なの、ロ「誰に対す」は聞き手である1「大隅守に対する」と決まる。
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ロの「ことつくべきことなし」は文脈判断の問題だ。直前の「何事につけてか、これを許さんと思ふに」 がヒント。「何事かにかこつけてこれ(=郡司)を許そうと思ったが、『ことつくべきことなし』」とい う流れをつかむと、「許す口実がない」という意味だと判断できる。そこで正解は2の「口実にするよ うなことがない」。 「ことつく」は「言付く」と漢字をあて、「口実にする。かこつける」の意味。「ことづく」とも言う。 「ず」を付けると「ことつけず」となり、「―エず」の形から下二段活用動詞とわかる。 「こと」には、1「事」、2「言」、3「異」の字が当たる。特に「言葉」 「うわさ」 「和歌」の意味をもつ「言」 と、「異なる「別の・他の」という意味をもつ「異」と漢字を当てるものが大切!
P oint ここでは、4「だらしなかったので」が正解。ついでに「已然形+ば」を確認しておこう。ここでは 次の1の「原因・理由」=「~たので」になっている。 「已然形+ば」=順接確定条件 1 ~たので。(原因・理由) 2 ~たところ。~すると。(単純接続) 3 ~といつも。(恒常条件)
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第1講 『宇治拾遺物語』
こと うけ= 異 なり1他とは違っている。 心=1浮気心。 異 様=普通と違った様子。 ハの「いかにしてこれを許さん」は、「いかにして」の意味が最大のポイントだ。「いかにして」の意 味は、1「どのようにして」、2「何とかして」の二つ。選択肢では、3・4・5がこれに該当している。 この二つの意味の識別ポイントは、下の助動詞「ん」にある。ここでの「ん」は、問二でも見たよう 「と」の前で意志になっており、この場合、「いかにして」は「何とかして」と訳す。
「言」 あげ= 言 とふ=1ものを言う。 言 霊=古代、言葉に宿っていると信じられていた霊力 の葉=1言葉。 業=別の行い。 ※「ことごと」と読むものは「事事(=あの事この事)」「事毎(=事あるごとに)」「異事(=別のこ と)」異異(=別々に。まちまちに)」がある。 言 挙げ=言葉に出してはっきり言うこと。 言 承け=承諾すること。 こと とふ= こと だま= 言 2質問する。 3訪問する。 こと のは= こと 異 ざま・とやう= 異 2和歌。 「異」 なり= こと ごころ= 2格別だ。 2余計な考え。 こと こと わざ= こと
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= = いかにして~意志の助動詞「ん(む)」=何とかして~しよう。 問六 傍線部甲でのポイントは「てんや」の部分。品詞分解すると、 の未然形、「ん」 推量の助動詞「ん(む)」の終止形、「や」 疑問の終助詞、となる。 この場合、 助動詞の「ん(む)」は可能推量の意味になり、 「~することができるだろう」と訳す ので、 「歌は詠みてんや」全体では、「歌を詠むことはできるだろうか」となる。 テーマ問題としても扱った「む(ん)」の「推量」用法の中には、こうした「可能推量」の場合がある。 多くは「てむ」「なむ」のように、「つ」「ぬ」の未然形が付いた形で出てくるので、上位大学を目指す 人は要チェックだ。
そこで選択肢を見ると、3だけが「何とかして」となっており、これが正解。傍線部中にある指示語 「これ」が指しているのは年老いた郡司である点も必ず押さえておこう。 「て」=強意(完了)の助動詞「つ」
問七 イの掛詞は、和歌の修辞法としては最頻出のもの。掛詞とは同音を利用して一語に二つの意味を もたせるもので、たとえば「ふる」に「降る」と「経る」、「ながめ」に「眺め」と「長雨」を掛けるこ とを言う。「平仮名」部分が掛詞になっいる場合が多いので、 和歌で掛詞が問われた場合は、まず「平 解答 歌を詠むことはできるだろうか。解答 イ=4 ロ=2 ハ=3
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第1講 『宇治拾遺物語』
P oint
仮名」の部分をチェック しよう。 ここでは、「しもと」に、文中にある「笞(しもと)」と「霜と」が掛かっている。「笞(しもと)」は 注にあるように、 「鞭(むち)」の意味。直後に「打つ」とあるところがヒント。「霜と」は「笞(しもと)」 を見て恐怖で身が凍える様子を比喩したものになっている。 ロは「係り結び」の問題。係助詞「ぞ」の結びは連体形になる。助動詞「けり」の連体形は「ける」 なので、正解は3「ける。
︸ ︷ 係り結びの法則 「係り結び」は古文文法問題中で最重要かつ最頻出。必ずチェックしよう! 係助詞 意味 文末 ぞ ・ な む 強意 1疑問 連体形 や ・ か 2反語 文末が連体形や已然形になるところを見落とすな! こ そ 強意 已然形 解答 イ「しもと」に「笞」と「霜と」が掛かっている。 ロ=3
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第1講 『宇治拾遺物語』解答欄
出 典 解 説 問八 文脈を追ってみよう。大隅守が口実を付けて郡司を許すために、「お前は歌が詠めるだろうか」 と尋ねたところ、郡司がなんとか和歌を詠んだ。その和歌が意外にもすばらしく、大隅守は「いみじう あはれがりて、感じて許しけり」=「たいそうしみじみと心動かされ、感動して許したのであった」と いう流れだ。 傍線部ニで「情(なさけ)」といっているのは、 「和歌を詠むこ」なので、1「風流の心」に当たる。 当時、うまい和歌が詠めるということは風流心があることであり、いい歌によって人の心は動かされる ものであったこと知っておこう。大隅守の郡司に対す温情の言葉ではない。 第1講の出典『 宇 うじしゅうい 治拾遺 物語』は、鎌倉時代に成立した説話文学。鎌倉時代は説話文学が花盛 りの時代で、他にも『宝 ほうぶつしゅう 物集』、 『発 ほっしんしゅう 心集』( 鴨 かものちょうめい 長明 作)、 『古 ここんちょもんじゅう 今著聞集』( 橘 たちばなのなりすえ 成季 作)、 『十 じっきんしょう 訓抄』、 『 撰 せんじゅうしょう 集抄 』、『 沙 しゃせきしゅう 石集 』( 無 むじゅう 住 作)などが成立した。このうち、『発心集』は『 方 ほうじょうき 丈記 』の作者で ある鴨長明書いた仏教説話として頻出。また、橘成季の書いた『古今著聞集』は、量の上で は説話最大の『今昔物語集』(平安時代に成立)に次いで多く、 もの説話が収録されている。ま
700 た十の教訓のもとに約 話の説話を掲載している『十訓抄』も入試では頻出だ。ちなみに説話最大 の作品である『今昔物語集』は平安時代に成立したものなので注意しよう。 今回出典の『宇治拾遺 』は、短編物語的な形をとっており、文体も平易なため、入試では出 題されやすい。文体は口語表現的で読みやすく、話題も「こぶとりじいさん」、「舌切雀」などの 有名な民話が入っている。 解答 1 280
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第1講 『宇治拾遺物語』
第1講 『宇治拾遺物語』解答欄
10 問五 イ ロ ハ 各3 問六 歌を詠むことはできるだろうか。 5 問七 イ 「しもと」に「笞」と「霜と」が掛かっている。 ロ イ=4 ロ=3 問八 4 4 問一 a b c d 各完答2 2 2 11 3 7 1 2 2 3 問四 A イ ロ B イ ロ C イ ロ 各完答3 1 5 1 4 1 4 2 3 3 1 活用の種類 活用形 活用の種類 活用形 活用の種類 活用形 活用の種類 活用形 問二 4 問三 4
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28 今は昔、大隅守なる人、国の政をしたため おこなひ給ふあひだ、郡司のしどけなかりけ 今はもう昔の話だが、大隅守である人が国の政治をなさって いるとき、 郡司が だ らしなかったので、「呼びに人をやって罰 しよう」言って、以前のようにだらしないことがあったとき には、罪の程度に応じて、重くあるいは軽く罰することがあっ たが、(なかなか改まらず、)一度でなくたびたびだらしないこ とがあったので、今度ばかりは厳重に罰しようということで、 呼びつけるのであった。 「ここに呼んで連れて参りまし」と(呼 第1講 『宇治拾遺物語』口語訳 れば、「召しにやりて戒めん」と言ひて、さ きざきのやうに、しどけなきことありけるに は、罪に任せて、重く軽く戒むる れば、一度にあらずたびたびしどけなきこ とあ 重く戒めんとて、召すなりけり。 「こ びに行った)使いの者が申し上げたので、以前そうしたように うつぶせにして、尻や頭のほうに乗りかかっている人や、むち こに召して率て参りたり」と、人の申しけれ ば、さきざきするやうにし伏せて、尻頭にの
見るに打ぜんこと、いとほしく覚えければ、 何事につけてか、これを許さんと思ふに、こ とつくべきことなし。過ちどもを片端より問 がない。しでかした過ちをかたっぱしから問いつめたところ、 ただもう年老いていることを弁解のよりどころにして答えてい
ぼり居たる人、笞を設けて、打つべき人設け て、さきに人二引き張りて出で来たるを見 れば、頭は、黒髪もまじらずいと白く、年 老いたり。 それを見るとむち打つことが気の毒に感じられたので、何か にかこつけてこれを許そうと思ったが、口実にするようなこと
を準備して打つことになっている人はその準備をして、前の二 人が引っ張っ出てきたのを見たところ、 男は頭に黒髪も 混じらず、すっかり白髪で年老いていた。
・・・ ふに、ただ老いを高家にていらへをる。いか にしてこれを許さんと思ひて、 「おのれはいみじき盗人かな。歌は詠みてん や」 と言へば、 「はかばかしからず候へども、詠み候ひなん」 と申しければ、 「さらば仕れ」 と言はれて、程もなくわななき声にてうち 出だす。 年を経て頭の雪はつもれどもしもと見る にぞ身は冷えにける と言ひければ、いみじうあはれがりて感じ て許しけり。人はいかにも情はあるべし。 る。何とかしてこの老人を許そうと思って、 「おまえはんでもない奴だな。和歌を詠めるか」 と言ったところ、 「うまくはありませんが、詠んでみましょう」 と申したので、 「それならば詠んでみよ」 と言われて、まもなく震えた声で口に出す。 年を経て =年をとって頭には真っ白の雪が積もってい ますが、霜だと見ると身がこごえる気がするように、むち(= しもと)を見るときはぞっとする思いがします。 と言ったので、たいそうしみじみと心が動かされ、感動して許 したのであった。人はぜひとも風流の心を持っているのがよい のである。
※ 線は口語訳のポイントとなる箇所に引かれてい ます。自力で口語訳する時に 線の箇所を特に注 意して下さい。
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学習テーマ 1 助動詞の活用形のマスター 3 「む(ん)」の婉曲の用法 4 単語力の増強と解釈問題への対応 テーマ1の「助動詞の活用だが、助動詞は全部で 個しかないので、とにかく早めに助動詞の 意味と活用形を全部覚えよう。古文学習の初期段階では、とにかく「助動詞命!」だ。 オススメのやり方としては、B4の紙にマジックでデカデカと助動詞を書き、それに活用・意味・ 口語訳・その他のポイントを書き加えて机の前などに貼る。 一日に一個の助動詞を完璧にしていけ ば、一カ月足らずで助動詞を完全にマスターすることができ 助動詞を制覇することは古文を制 覇することの最大の鍵だ。是非早めに完全マスターを図ろう。 問一 aの「ん」は前講で勉強した係り結びの結びになっている。ここでは係助詞「や」の結びになっ ているので連体形。助動詞「ん」は終止と連体形が同形なので気をつけよう 『徒然草』 30 28 第 2 講 問題編 08 ページ 2 「こそ~已然形、」=逆接
第2講 『徒然草』
P oint
推量の助動詞「む(ん)」の活用。 (ま)/〇/む(ん)/む(ん)/め/〇 bの「ぬ」は完了と打消の二つの可能性があるが、ここでは「ぬ」が形容詞「物騒がし」の未然形「物 騒がしから」に付いている。また下の「やう」という体言につながっているところから「ぬが「連体 形」とわかるので、打消の助動詞「ず」連体形とわかる。 「ぬ」の識別は接続や活用形で判断するが、打消と完了とでは意味がまったく違ってしまうので、気 をつけよう。 「ぬ」の識別 未然形+ぬ=打消の助動詞「ず」の連体形=「~ない」と打消の意がある。 ぬ 連用形+ぬ=完了の助動詞「ぬ」の終止形=「~た」と完了の意がある。 ただし、 「ぬ」が強意の用法の場合は、特に訳出しない。強意の用法とは下に助動詞を伴って「ぬ べし」「ぬらむ」などとなる場合。 cの推定「める」はaと同じで係助詞「ぞ」の結びになっているので連体形。一応活用を確認してお こう。終止形が「―り」で終わっているものは、基本的にラ変型活用になる。
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P oint
or 推定「めり」の活用。 ○/めり/ /める/めれ/○ dの「ん」は前講で扱った意志の助動詞「ん(む)」だ。ここでは「ん」が「と」の前にあり、上に 係助詞がないので終止形。 「と」の前の「む(ん)」は意志! というのも思い出しておこう。 格助詞「と」 「と」は引用や会話を受けるので「。」と同じ。つまり「と」の前は文末なので、 係り結びがない場合 、 「と」の前は終止形か命令形になる。特に「と」の前が「命令形」の場合に注意。 終止 形 と + など 命令 形 。 なお、設問の傍線部の直前が「と・など」で受けられている場合は、 「と・など」で受けられている「会 話」や「引用」部分が傍線部の解答の根拠になるというパターンがあるので覚えておこう。 傍線部の直 前の「と・など」には注意して、その受けている内容を傍線と絡めて解答しよう eの「ず」は「、」の前なので連用形になる。「ず」という形は連用形と終止形があることを確認して おこう。 解答 a=4 b=4 c=4 d=3 e=2 !!
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第2講 『徒然草』
P oint 打消の助動詞「ず」の活用。 ず ず ず ぬ ね 〇 ざら ざり 〇 ざる ざれ ざれ 「、」「て」「つつ」の前は連用形 連用 形 + てつつ ※ただし、「こそ~已然形、」の形の場合は、「、」の前でも係助詞「こそ」の結びで已然形になる。 「、」の前は連用形になるのが普通だ。しかし、空欄の直後のあれが已然形になっ
5 文の途中で係り結びが成立し、「、」などを挟んで下に続いていく場合、「~けれども・のに」と逆接 で訳すところがポイントで、入試でも頻出する。ここは「こそあれ、」となり、「~のに」「~ではあ るけれど」訳す。 解答 、 ているので、係り結びが生じていると考えられる。、 結びが已然形となるのは、係助詞「こそ」が上に ある場合 な 正解は5「こそ」。 問二 前述したように、
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P oint 「こそ~已然形、」の形 (下へ続いていく)」の形は、逆接の意になる。訳は「~は~けれども(のに・が)」。
こそ泥、 以前刑事だったけれども こそ~已然形、 ※この形が和歌に使われた場合は「、」がないので見落とさないように注意。 (例) 春の夜の闇はあやなし梅の花色こそ見えね香やは隠るる(古今和歌集) =春の夜の暗闇はわけが分からないものだ。梅の花の色は見えないけれども、香りまでも隠れ るだろうか、いや隠れはしない。 問三 まず、Aの中の「さりがたく」は形容詞「さりがたし」の連用形で、 「捨てておけ 」という味。 サリーが足し算してる、捨てておけない さりがたし=捨てておけない →「こそ~已然形、
(下へ続いていく)=~は~けれども(のに・が) ここでは選択肢の1・2・3の「避けにくく(い)」が該当する。「家を離れにくい」という意味ではな い。次に「心にかからん事」の解釈だが、ここでん」がポイントになる。前講で扱ったように「ん」 は「む」と同じ推量の助動詞であっ、打消の意味は絶対にない。 選択肢の1と3は、「ん」を「ない」
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第2講 『徒然草』
P oint と打消で訳しているので× 「む(ん)」の婉曲の用法 む(ん)+体言(※助詞)=婉曲「~ような」 ∥ 連体形 ※「む(ん)」の下が「助詞」で、特に「むに・むには・むは・むも・むこそ」の場合は、「む(ん)」 は「仮定」の用法となり、「~としたら、それは~」と訳す。 Bは「さながら」のゴロの確認からしよう。 さなぎのガメラ 全部 もとのまま さながら=1全部 2もとのまま
曲」=「~ような」になっている。 ここで「さながら」を「全部」「そっくりそのまま」と訳している選択肢は、1と2。「ちょうど」や「ま るで」と訳しているものは3と4だが、その場合は「まるで~ようだ」と比喩的な内容になっていなけ ればならないが、ここでは文脈的に比喩の箇所ではないので×。また、 「さながら」は下に打消語を伴っ て全否定になる場合もあるが、ここでは下に打消語がないので5も×。 次に助動詞「べし」の意味だが、「べし」にはたくさん意味があるの文脈判断になる。ここでは、
。そこで正解は2。ここでの「ん」は「事」に付き連体形になっており、 「婉
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36 出家のためにはすべてを捨て去るべきだ、という文脈なので、 「べし」は「当然」の意 となり、「~すべ きだ」と訳してある2が正解。 Cもゴロの確認から入ろう。 舌たたんで食べる 準備をする したたむ=1食べる 2準備をする 舞う靴 準備して大儲け まうく=1準備する 2儲ける この「したためまうけて」は、「したため」も「まうけ」も結局「準備をする」という意味なので、 何を準備したのかがポイントになる。直前に「人の嘲りやあらん、行末難なく」とあるのがヒント。出 家後、他人から悪口を言われて非難されないように、前もって「したためまうけ」るという文脈なので、 1の「遺書の用意」はありえず、2や3や5では意味をなさない。正解は4。身辺の雑事を「前もって 始末しておいて」というのが正解。 Dはゴロで一発のおいしいパターン。 えー皿ずぅえった避けられない えさらず=避けられない 正解は1の「どうしても避けられない用事」。 「え避らず」 と漢字を当てて覚えておこう。 Gは「このあらまし」の「この」が指す内容と、「あらまし」の意味が取れればOKだ。
第2講 『徒然草』
あらまーしっかりした計画 あらまし=計画 「あらまし」は将来の計画の意だが、ゴロ通り「計画」と訳している選択肢は1。しかし、1は「この」 の指し示す内容を「処置しておきたい」と取っているところが×。 指示語の「この」が指しているのは 「思ひ立つ」こと、つまり「出家をすること」 。 選択肢で出家や仏道修行に触れているのは2と3だが、2は「あらまし」を「不安の念をいだいて」 と訳しており×。3は「心づもり」と訳しており、 「将来の計画」の意訳として問題ないのでこれが正解。 Iのポイントはまず格助詞「とて」。
「とて」は「と言ひて」の縮まったものだと覚えておくとわかりやすく、「といって」と訳す。選択肢 では3と4が該当する。5のというので」も許容範囲内だ。一方、1と2のように「と言われても」 という逆接の意はないので×。 次に、打消の助動詞「ず」と反語の「」に注目する。 「捨てざらんや」のところだけを訳してみると、 「捨てないだろうか、いや、捨てるだろう」となる。「ざ ら」は打消の助動詞「ず」の未然形、係助詞「や」はここでは反語だ。この訳に当てはまっているもの は1・2・3なので、先ほどの「とて」とあわせると正解は3になる。 解答 A=2 B=2 C=4 D=1 G=3 I=3
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100 「思ひ立つ」の中身は「出家」。1行目の「大事」や「本意」という語も、 「出 家」との結びつきの強い語だ。文章全体のテーマが「出家」と「無常」であることをつかめば正解する のは易しい。正解は4の「出家遁世をすること」。なお、「出家」に関しては、第六講P のポイントで まとめているので、そちらも参考にしてほしい。 ほいほい出家が本来の目的 ほい(本意)=1出家 2本来の目的 問五 ここでは傍線部だけでなく、前後に視野を広げて判断する。「おほやう人を見るに、少し心ある きはは、皆このあらましにてぞ一期は過ぐめる」とう一文全体から考えよう。 「このあらましにてぞ」というのは問三のGで見たように、「いずれ仏道に入ろという心づもりで」 と訳す。そこからわかるように、ここでの「心あるきは」というのは、仏道に関係がある人。候補とし ては2か4だが、4を入れて全体を訳してみると、「だいたい、世間の人を見ると、『仏道修行の困難が わかる人』は、みんないずれ仏道に入ろうという心づもりで一生を過ごしてしまうようである」となっ て文意がおかしくなる。「仏道修行の困難がわかる人」であれば、そんなにうかうかと一生は過ごさな いはずだ。 一方、2の「出家の志をいだいているほどの人」であれば、その多くが出家の心づもりだけで終わっ てしまい、実際には出家しないままで一生を終わってしまう可能性が高いというはありえる話なので 2が正解。 解答 解答 4 2 問四 問三で見たように、
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第2講 『徒然草』
P oint
99 問六 傍線部H「その時」というのは、1行前の「無常の来る」時のことだ。この「無常」の意味は、 その直前の「命は人を待つもの かは 」=「命というものは人の都合を待ってくれる だろうか、いや待た ない 」というところを読めばわかるように「死ぬ時」のことを意味している。正解は3「死が到来した 時」となる。ここで反語に付いてまとめておこう。 「やは」「かは」は反語! 第1講で勉強した「係り結びの法則」の中で、「や・か」は疑問と反語の意味を持っていたが、 「やは・かは」の形の時は %反語 と判断してよい。結びはもちろん連体形になるが、それ以上に 大切なのは口語訳。 3
反語の模範的な訳は「~だろうか、いや~ではない」だが入試の選択肢では必ずしもそう訳 されているとは限らない。反語の口語訳のパターンは次の三つがあるので覚えておこう。 「待つものかは」 1「待つだろうか、いや待たない」 …もっとも模範的な口語訳。自分で訳すきはこの形で。 2「待つなんてことがあろうか」 …言外に反語の意味があるのを省略した形。 3「待つはずがない」 …結論である否定的な内容だけを訳した形。 解答 解答
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40 問七 「同じくは」を品詞分解すると、形容詞「同じ」の連用形+係助詞「は」になる。この場合、「仮 定条件」を表すのがポイントだ。同様のものに「ずは」=「もし~ないならば」があるので、あわせて まとめておこう。時代によって次のように変化していく。 形容詞の連用形「―(し)く」係助詞「は」が付くと仮定条件を表す。 (例) 同じくは(中古)→同じくんば(中世)→同じくば(近世)=「もし、同じならば」 打消の助動詞「ず」に係助詞「は」が付いたもの。 (例) ずは(中古)→ずんば(中世)→ずば(近世)=「もし~ないならば」 通常仮定条件を表すのは「未然形+ば」だが、係助詞「は」に形容詞や「ず」の連用形が付いて仮定 条件を表す形も入試では頻出する。 今回は文脈的には、 「どうせ延期 のだったら」という意なので、訳としては「どうせ同じことなら」 くらいで訳すとうまくいく。「同じだったら」でもOK。 問八 『方丈記』と『徒然草』に共通しているキーワードは「無常」 。中世のキーワードが問われて「無 常」が答えになることがあるので覚えておこう。 ここでの「無常」は文脈的にみて「死」のこと。問六がわかれば解ける問題なので、いわゆる連動問 題だ。漢字一字というのも大きなヒントになっている 解答 (どうせ)同じことなら 解答 死
第2講 『徒然草』
240 『徒然草』には兼好法師の人生観を反映した内容ののが多く、『枕草子』が清少納言の宮中日記的 な「をかし」という感性あふれる随筆であったのに対して、『徒然草』は出家した兼好法師の人生 哲学・思想的な内容になっている。鴨長明の随筆『方丈記』や軍記物語『平家物語』と同様底流 には「無常観」が流れている。『徒然草』は約 段からなるが、全体的に読みやすく面白いうえに、 現代でも通じる人生訓もあり、基礎的な古文力をつける意味でも通読することをオススメする。
出 典 解 説 入試古文の出典で『源氏物語』と一位の座を争っているのが、この『徒然草』だ。作者はもち ろん 兼 けんこう 好 法師(吉田兼好・ 卜 うらべかねよし 部兼好 )。鎌倉と室町の中間期である騒乱の南北朝時代(十四世 紀前半)に成立した作品。三大随筆といわれるものの中で、最後に書かれた作品だ。 三大随筆とは、 『枕草子』 (清 せいしょうなごん 少納言作)、 『方 ほうじょうき 丈記』 ( 鴨 かものちょうめい 長明 作)、そしてこの『徒然草』を指す。『徒 然草』のほうが『方丈記』よりも古いと間違って記憶している生徒が多いが、 鴨長明作の『方丈記』 は鎌倉初期に書かれたもので、『徒然草』よりも百年以上前に成立している ことに注意。
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第2講 『徒然草』解答欄
問八 死 5
5 2 問二 4 問七 (どうせ)同じことなら 5 問三 A B C D G I 各2 問四 4 問五 5 問六 5 2 4 1 3 3 4 2 3
4 問一 a b c d e 各2 4 4 3 2
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大事を思ひ立たん人は、さりがたく、心に かからん事の本意を遂げずして、さながら捨 つべきなり。「しばしこのこと果て」、「同 じくはかの事沙汰しおきて」、 「しかしかの事、 第2講 『徒然草』口語訳 たん、ほどあらじ。物騒がしからぬやうに」 など思はんには、えさらぬ事のみいとど重な りて、事の尽くる限りもなく、思ひ立つ日も あるべからず。おほやう人を見るに、少し心 あるきはは、皆このあらましにてぞ一期は過 ぐめる。 れない用事ばかりがますます重なって、いつになったら用事が なくなるという際限もなく、結局、大事を決行する日もあるは 仏道修行という人生の大事を決行しようとするような人は、 避けにくく気にかかるようなことがあっても、そのことを思い 通りに成しとげないで、そっくりそのまま捨去らなければな らないのである。「もうしばらく待ってこの用事が済んでから」 とか、 「(どうせ)同じだったら、あのことを処置しておいてから」 とか、「これこれのことは、(このままでは)人から悪口を言わ れるかもしれない、将来、他人から非難されないように前もっ て始末しておいてから」とか、「長年こうして来 た のに、その ことが完了するのを待とう、もう間もなくだろう。あわてた様 子でないように」などと思うならば、それはどうしても避けら 近き火などに逃ぐる人は、「しばし」とや いふ。身を助けんとすれば、恥をも顧みず、 財をも捨てて逃れ去るぞかし。命は人を待つ ものかは。無常の来る事は、水火の攻むるよ ずがい。だいたい世間の人を見ると少し出家の志を抱いて いるほどの人は、ずれ仏道に入ろうという心積もりで、一生 を過ごしてしまうようである。 近所の火事から逃げる人は、「しばらく待ってくれ」などと 人の嘲りやあらん、行末難なくしたためまう けて」、「年ごろもあればこそあれ、その事待
問三 A B C D G I 各2
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44 りも速やかに、逃れがたきものを、その時、 老いたる親、いときなき子、君の恩、人の情 け、捨てがたしとて捨てざらんや。 言うだろうか、いや、言わないだろう。わが身を助けようとす るので、恥をもまわず財産をも捨てて逃げ去るのだよ。命 というものは人の都合を待ってくれるだろうか、いや、待ちは しない。死が訪れることは水や火の攻めてくるのよりも速く、
逃れることのできないものであるのに、その死期が来た時に なって、老いている親、幼い子供、主君の恩、人の情け、これ らを捨てにくいからといって、捨てないことがあろうか。
第2講 『徒然草』
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『源氏物語玉の小櫛』 46 第 3 講
学習テーマ 1 用言の活用の確認と助動詞の意味の確認 2 助動詞「り」「る・らる」「べし」のマスター 3 口語訳の解法パターン ここまでの2講で、すでにかなり多くのことを学習してきた。そこでこの第3講では、文法的に もう少し突っ込んだ問題を扱う。 特にテーマ2の 助動詞の「り」「る・らる」「べし」 は、入試で頻出なうえに、読解上も非常に重 要なものだ。ポイントで整理されている内容をしっかりマスターしてほしい。古文文法をマスター する意味では、『古文文法ゴロゴ』なども併用して学習すれば「鬼に金棒」だ。また、テーマ3の 問題では 口語訳の解法パターン を示したので、苦手意識をもたず古文の口語訳にチャレンジしよう。 問一 空欄補充の問題はわかりやすいものから解く、というのが鉄則パターン 。ここでは空欄ロがわか りやすいので、そこから選択肢を絞っていこう。 空欄ロに至る流れとしては、『源氏物語』(=「この物語」)が非常に優れた作品であり、それより古 問題編 14 ページ
第3講 『源氏物語玉の小櫛』
2 れてみて、文脈的に合っているという確認もしてほしいイは「『まず』こ以前の物語は~」と話を 始めている箇所。ハは「『ただ』この物語だけがひたすら素晴らしくて~」という流れ。解答の最後に 付いている古文と口語訳との対照のとろの古文を「音読」して、口語訳が頭の中でスラスラと出来る ようになるまで繰り返すのだ。 問二 波線部①の「めでたき」は形容詞の連体形。下に「もの」という体言(=名詞)があるところも 解答
い物語で『源氏物語』ほどの作品がない、と書かれている。そして空欄ロの後は、『源氏物語』以後の 作品もその影響を受けているだけで、結局は『源氏物語』より劣っている、ということが書かれている。 つまり、空欄ロを挟んで『源氏物語』以前と以後の文学作品について書かれているのだが、そのどち らの時代でも『源氏物語』ほどの作品が存在しない、ということが書かれているのがポイントだ。現代 文的に考えるとわかりやすい。 「これより先なる古物語」も 「また」=空欄ロ 「これより後のものども」も『源氏物語』にかなわない という関係になっている。空欄ロに入る語は、並列を表す「また」であることがわかる。空欄ロが「また」 となっている選択肢は2しかないので、これが正解。残りのイとハにそれぞれ「まづ」「ただ」を入
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P oint 確認しておこう。 ク活用の形容詞の活用 から かり 〇 かる 〇 かれ ※左側の活用を「補助活用(カリ活用)」と呼び下に助動詞が付く。「から」の下に未然形接続の 助動詞が付き、「かり」の下に連用形接続の助動詞が付く。そして、連体形「かる」の下に、い わゆる終止形接続の助動詞が付くので注意。 「めでたかるらむ」等。 ※断定の助動詞「なり」は本活用の連体形に付く。一方、伝聞・推定の助動詞「なり」は補助活用(カ リ活用)の連体形に付く。 めでた き なり→断定「なり」。 めでた かる なり→伝聞・推定「なり」。 ※ク活用かシク活用かの識別は、下に「なる」を付けて判断する。 めでた く なる→ク活用 うつく しく なる→シク活用 波線部②の「見え」の活用形は下の助動詞「ず」を見れば「未然形」とわかる。「ず」は未然形接続だ。 「見え」の終止形は「見ゆ」であり、ヤ行下二段動詞なので、以下のように活用する。 見え/見え/見ゆ/見ゆる/見ゆれ/見えよ 「見え」という形は、未然形と連用形の二つの可能性があるので、下の助動詞「ず」が何形に接続す く く し き けれ 〇
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第3講 『源氏物語玉の小櫛』
or P oint るかを覚えておかないと正解できない。助動詞の接続は大切だ。 問三 波線部④の「し」は品詞がわかりにくい。上が「と」であり、 「と」に付く助動詞はない。かといっ てサ変では文法的意味という問いに対する答えがない。となると、残りは助詞だ。 この「し」は副助詞 で、強意の意味をもつ で、正解は④=4。 波線部⑤の「る」はちょっと難しい。ポイントは完了の助動詞「り」の接続だ。 完了の助動詞「り」の接続は、「リ」カちゃんさみしい サ変の未然 形 + り =完了の助動詞「り」 ※「リ」カちゃんサ さ み し い 未四已 四段の已然 形 これをまとめると、次のような「エ段+らりるれ」の法則が生まれる。 解答 ①=4 ②=1 ③=3
波線部③の「たり」は、完了の助動詞「たり」の終止形。「たり」は連用形と終止形が「たり」と同形だが、 ここは「と」の前で終止形になっている。前講のポイントで勉強したように、「と」の前は係り結びな どの特殊な条件がない限り終止形か命令形で、ここでは命令形はないので終止形。
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P oint 「エ段+らりるれ」の法則 完了の助動詞「り」は、サ変動詞の未然形か、四段動詞の已然形に接続する(四段動詞の命令形とい う説もある)。まとめると「エ段+ら・り・る・れ」という非常に重要な法則になるので、絶対にここ でマスターしてほしい。 ここでは「書く」というカ行四段動詞の已然形(あるいは命令形)「書け」に完了の助動詞「り」の 連体形が接続して、 「書け(―エ)る」となっている。現代語の感覚とは違うので、何度も口に出して言っ て覚えよう! エ段に付く「ら・り・る・れ」は完了の助動詞「り」だ 。正解は⑤=7の完了。 波線部⑥の「ごとく」は5の比況と言われる助詞。「~ような」と比喩のように訳すものだ。出題 頻度は低いが、助動詞は完璧にしてほしい。正解は、⑥=5。 波線部⑦の「るる」は助動詞の中で最もよく出題される「る」の連体形。「る・らる」は、1「受身」、 2「尊敬」、3「可能」、4「自発」の四つの意味をもつ。この「るる」がその四つの意味のどれになっ サ変の未然形 ら =「り」の未然形 り =「り」の連用形・終止形 エ 段 + る =「り」の連体形 ∥ 四段の已然形 れ =「り」の已然形・命令 ∥
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第3講 『源氏物語玉の小櫛』
P oint P oint ているかの判定は、上に「おしはから」という心情語があるのが大きなヒントになっている。 助動詞「る」「らる」の自発パターン 助動詞「る」「らる」の上に心情語がある場合は、「る」「らる」は「自発」の意味になる。 心情 語 + る ・ ら る =自発=(自然と)~する ∥ 思ふ・しのぶ・おしはかる・泣く など ということで、正解は、⑦=1の自発。 波線部⑧の「べき」は助動詞の中で最多の意味をもつ「べし」の連体形。 「べし」の七つの意味 す 推量 い 意志 か 可能 ゴロゴロ と 当然 め 命令 て 適当 よ 予定 ちなみに、「ゴロゴロ」という擬音は特に意味はないのだが、なんとなくスイカが転がっていく音と して感じてください(笑)。 さて、この「べし」が七つの意味のうちどれなのかというと、下に打消「ず」があるのが、大きなヒ
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くさんの」。 Bも「おどろおどろし」 のゴロで一発だ。 踊ろ踊ろ尻 ふりダンスは気味が悪くておおげさだ おどろおどろし=1気味が悪い 2おおげさだ 解答 ④=4 ⑤=7 ⑥=5 ⑦=1 ⑧=6
問四 A「ここらの」 はゴロで一発だ。 ここらにもそこらにもたくさん ここら・そこら=たくさん 副詞「ここら」あるいは「そこら」は数量の多いさまを表し、
100 ントになっている。 「べし」は下に打消「ず」を伴うと「可能」の意味になることが多い。 これは %絶対というわけではないのだが、入試で問われた場合には、「べし」の下に打消「ず」が あれば、「べし」はまず可能から疑え! というパターンで考えよう。 可能で訳してみると、「かけても及ぶべきさまにあらず」=「決して及ぶことができるような書きぶ りではない」となり、問題ない。正解は、⑧=6の可能。 「たくさん」と訳すので、正解は2「た
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第3講 『源氏物語玉の小櫛』 このゴロからわかるように、「おどろおどろし」という形容詞は、「おおげさなさま」を表しており、 ここでは1の「おおげさな様子の事」が正解。 Eの「心ばへ」 は多義語だ。文脈判断も必要になるが、まずは単語の意味の確認をしよう。 所のロバ変 、気立てがよくて心遣いに趣がある こころばへ=1気立て 2心遣い 3趣 選択肢では1が「気立て」なので、ズバリこれで一発といきたい 確認をしておこう。前後の文脈 をつかむと、ここでは『源氏物語』の登場人物が一人一人見事に描き分けられていることを述べている 箇所で、「心ばへ」の直前が「けはひ」となっているところから、この 「心ばへ」は登場人物の性格や 気立てのことだ と判断できる。 「男女、その人人の、けはひ心ばへにしたがひて一やうならず」=「(源氏に登場する)男女、その一 人一人が、態度や気立てに応じて描き方が一通りではない」と訳してみるとうまくいく。正解は1の「気 立て」。 Fの「よく分かれて」 は、そのあとに、「おぼろげの筆の、かけても及ぶべきさまにあらず」=「並 たいていの筆の力では、決して及ぶこができるような書きぶりではない」とあるところから、ここは 『源氏物語』の作者である紫式部の文章力のことを言っていると判断できるので、1と2は×。 次に3の「よく分かるように書いて」と4「うまく書き分けて」だが、「男女、その人人の、けはひ 心ばへにしたがひて」とあるところから、登場人物の一人一人を見事に「書き分けて」いるととれるの で、正解は4。ちなみに「分かる」には「わかる」という意味はない。「わかる。理解する」という意
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P oint
問六 口語訳問題の解法パターンをまとめておこう。 1 まず品詞分解する。 2 助動詞や助など、文法的に確実にわかるものをチェックする 3 最後に文脈判断しがら人物関係や単語を含めたトータルな解釈をする。 これを見て意外に思う人がいるかもしれないが、多くの人が先にやる「単語の意味を解釈する」のは 最後にまわす。なぜかといえば、 単語解釈は文脈によるところが大きく、意訳されたりする ので一筋 縄でいかないことが多いらだ。 解答 現 解答 A=2 B=1 E=1 F=4 口語訳題の解法パターン
味を持つ古語は「わく」。 問五 古典常識問題。「うつつ」は「現実」という意味で、漢字では「現」と書く。「夢か現(うつつ) か幻か」「夢うつつ」などと使う。「うつつ」は「夢」の対義語なので注意だ。 打つ打つイチロー現実だ うつつ(現)=1現実 2正気
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第3講 『源氏物語玉の小櫛』
100 もちろん、いくつもの意味をもつ助 動詞の場合は、どの意味で用いられているかの判断が必要だが、これも文法のパターンをマスターして しまえば %訳は決定する。そして、助動詞や助詞などをあぶりだすためには、まず1の「品詞分解」 が必要なのだ。 すべての基本は品詞分解にある 。 傍線部Cを単語に切ると、「心/を/いれ/たり/と/は/見ゆる/ものから/、こよなく/おとれ /り」となる。ここでのポイントは助詞の「ものから」 「ものから」は逆接の接続助詞 なので、「~け れども・のに・が」と訳さなければならない。選択肢では1と2が「~から」と順接になっているので×。 助動詞のチェックをすると、 「たり」はすべて「ている」と存続で訳してある。文末の「り」も「ている」 と存続になっている。 「たり」と「り」は完了だけではなく、こうした存続の意味がある のでチェックだ。 動詞「見ゆ」は、3「見える」と4「思う」のどちらの意味もあるので、勝負は形容詞「こよなし」 の訳だ。 今宵 の梨は格別だ こよなし=格別だ 形容詞「こよなし」は「格別だ。このうえない」いう意味なので、3の「少々」は×。4の「甚だ しく」が正解だ。 解答 4 一方、 助動詞と助詞は訳が決まっていて基本的に意訳できない。
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配点 3 問七 ~ 行目に「よにふる人のたたずまひ~すべて書きざまめでたき」とあるように、世の中に生 活する人の様子をうまく描写しているのが「この物語(『源氏物語』)』の最大の特徴なので、正解は3。 問八 「文詞」は「ふみことば」と読み、 「手紙や文章に用いる言葉」のこと。「めでたし」は重要単語だ。 目ー出たしっかりすばらしい めでたし=すばらしい 「さらにもいはず」は「言うまでもない。もちろんだ」の意味の慣用句。「言へばさらなり」「言ふも さらなり」の形でも同じ意味。形容動詞「さらなり」が元になってできた慣用句だ。 サラリーマンになりいのは言うまでもない さらなり=言うまでもない ここでの「文詞」は『源氏物語』の文章の言葉遣いのことなので、それを補って全体を訳す。 配点 6点 ①『源氏物語』の(文章の)言葉遣い…2点 ②すばらしい…2点 ③いうまでもない…2点 解答 解答 『源氏物語』の文章の言葉遣いがすばらしいのはいうまでもない。 8 9
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第3講 『源氏物語玉の小櫛』
5 問九 出典解説で詳しく触れるが、『源氏物語玉の小櫛』の著者は、国学者である5の本居宣長。この 『源氏物語玉の小櫛』では、『源氏物語』の本質を「もののあはれ」にあると論じており、この評価が後 に与えた影響は大きい。 問十 傍線部甲の「この物語」が『源氏物語』であることは問一から明らかなので傍線部乙の「これ より先なる古物語」というのは『源氏物語』より成立の古いものを指している。 選択肢の中では1の 『竹取物語』 が最も古く、 『源氏物語』の中で「物語の祖(おや)」と呼ばれてい るように、日本最古の といってもいいものだ。 他の選択肢の作品を見ていくと、『平家物語』は鎌倉時代に成立した「軍記物語」、『栄花物語』は平 安時代に成立した「歴史物語」で、作者は中宮彰子に仕えた女房の赤染衛門(あかぞめえもん)、『雨月 物語』は江戸時代に上田秋成によって書かれた「読本」。 解答 解答 1
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第3講 『源氏物語玉の小櫛』解答欄
35 の研究書。国学とは近世に起こった学問の一つで、『古事記』『日本書紀』『万葉集』などの古 典研究にもとづき、儒教・仏教渡来以前の日本の固有文化を明らかにしようとする学問。その 国学の祖と言えるのが契沖で、ついで 荷 かだのあずままろ 田春満 を経て 賀 かものまぶち 茂真淵 へと継承される。そして賀茂真 淵の弟子である本居宣長で国学は大成される。宣長は著作が多く、センター試験でも複数回出題さ れている点で特筆される。 主な作品は、国学書として『古事記伝』『源氏物語玉の小櫛』『玉くしげ』『鈴 すずのやもんどうろく 屋問答録』、評論『紫 し 文 ぶんようりょう 要領 』、 随筆 『 玉 たまかつま 勝間 』 、学問論『うひ山ぶみ』、 家集(和歌集)『 鈴 すずのやしゅう 屋集 』がある。入試で出題さ れる出典では随筆『玉勝間』が群を抜いている。古事記伝』は 年を有した大作であり、また 『源 氏物語玉の小櫛』 では、 『源氏物語』の本質を「もののあはれ」に見出す など、後世に大きな影響 を与える仕事をなした。 出 典 解 説 『源氏物語玉の小 おぐし 櫛』は江戸時代に国学者の本 もとおりのりなが 居宣長 (1730~1801)が書いた『源氏物語』
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5 1 第3講 『源氏物語玉の小櫛』 問八 『源氏物語』の文章の言葉遣いがすばらしいのはいうまでもない。 6 問九 3 問三 ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ 各2 問五 現 3 問六 4 問一 3 問二 ① ② ③ 各2 問四 A B 各2 問七 4 問十 3 第3講 『源氏物語玉の小櫛』解答欄 4 7 5 1 6 4 2 4 1 3 2 1 E 1 F 4 3
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おどろおどろしきさまの事多くなどして、い づれもいづれも、もののあはれなるすぢなど は、さしもこまやかに深くはあらず。 また、
れて書けりとしも見えず。ただひとわたりに て、あるはめづらかに興ある事をむねし、
60 ここらの物語書どもの中に、この物語は、 ことにすぐれて、めでたきものにして、大か たくさんの物語の書物の中で、この(=源氏)物語は、特に きわだってすばらしいものであって、全く先にも後にもこれに 類するほどすばらしい物語はない。まずこれより以前に書かれ た古い物語は、何事につてもそれほど深く心を傾けて書いて 第3講 『源氏物語玉の小櫛』口語訳 た先にも後にもたぐひなし。まづこれより先 なる古物語どもは、何事もさも深く心を入
ただ、この物語ぞこよなくて、ことに深く、 よろづに心を入れて書けるものにして、すべ ての文詞のめでたきことはさらにもいはず、 葉遣いがすばらしのは言うまでもなく、この世に暮らす人々 の様子、春夏秋冬折り折りの空の様子、木草の有様まで、すべ
これより後ののどもは、狭衣などは、何事 ももはらこの物語のさまをならひて、心をい れたりと見ゆるものから、こよくおれ り。そのほかもみなことなることなし。 ただ、この物語が格別にすぐれていて、特に描写が深く、す べてに心を注いで書いてある物語であって、すべての文章の言
それほど細く深くは書いいない。またこれよりも後に書 かれた物語は、『狭衣物語』などは、何事もひたすらこの物語 の書き方を真似して、丹精して作っているとは思う けれども、 できばえは甚だしく劣っている。その他の物語についてもべ て異なるところはない。
あるようにも見えない。ただひととおりに書いているのであっ て、 ものは珍しく面白い事を中心し、おおげさな様子の 事が多かったりなどして、どの物語も、物の情趣に関する事は、
ず。よく分かれて、うつつの人にあひ見るご とくおしはからるるなど、おぼろげの筆の、 かけても及ぶべきさまにあらず。
べて書きざまめでたき中にも、男女、その人 人の、けはひ心ばへにしたがひて一やうなら
よにふる人のたたずまひ、春夏秋冬をりをり の空のけしき、木草のありさまなどまで、す
その違いをうまく書き分けてあって、現実の人に向かい合って いるようにその人柄が自然と推測されるなど、並大抵の筆の力 では、決して及ぶことができるような書きぶりではない。
てについて書き方がすばらしいその中でも、登場する男女、そ の一人一人が、態度や気立てに応じて描き方が一通りではない。
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学習テーマ 1 「む(ん)」の仮定の用法 4 全否定の副詞 前講に引き続き、入試で頻出する文法事項を扱うとともに、受験生の苦手な を示す。文法から読解へとステップアップをはかろう。 「に」の識別 が特に重要で、これが制覇できれば文法事項のかなり の部分をマスターしたことになる。また、テーマ1の「む(ん)」についてはこの問題集で何度も触 れることになるが、出てくるたびに一つ一つの用法を確実にマスターしてほしい。 テーマ3の主語判定は受験生がもっとも苦手とする分野なので、ポイントの内容を理解するよう 心がけてほしい。 問一 古典常識の「読み」の問題。 『古本説話集』 62 第 4 講 問題編 20 ページ 2 「に」の識別 3 主語判定の基本パターン 「主語判定」の基本 パターン 文法事項の中ではテーマ2の
第4講 『古本説話集』
・ P oint ①「内裏」は「だいり」あるいは「うち」と読む。ここでは二文字という指定があるので「うち」が正解。 ②「上達部」は「かんだちめ」あるいは「かんだちべ」と読む。貴族の中でも最高のランクに位置す る人たちで、摂政・関白・太政大臣・左右大臣レベルの人々で、基本的に三位(さんみ)以上の貴族だ が、参議だけは四位でもこの中に入る。 ③「殿上人」はてんじょうびと」と読む。 「て」を「で」と濁らせないこと 。「殿上人」は、「上達 部」に次ぐランクの貴族で、四位 五位および六位の蔵人(くろうど)。別名を「雲の上人(うえびと)」 「上人(うえびと)」「上の男(おのこ)」「雲客(うんかく)」という。なお、清涼殿の殿上の間に昇殿で きない六位以下の官人のことを「地下(じげ)」という。 平安貴族の呼び方 ○一の人 =摂政・関白、太政大臣 ○上達部 (かんだちめ・ かんだちべ) =一位~三位、四位の参議 ※ 公卿 (くぎょう)、月卿 (げっけい) とも言う。 ○殿上人 (てんじょうびと) =四位、五位、六位の蔵人(くろうど) ※ 雲の上人 (うえびと)、上人 (うえびと)、上の男 (おのこ)、雲客 (うんかく) とも言う。 ○地下 (じげ) =清涼殿の殿上の間に昇殿できない六位以下の官人 解答 ①うち ②かんだちめ(かんだちべ) ③てんじょうびと
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P oint 問二 波線部X「ん」は「んは」という形の場合は一発で「仮定」の用法だとわかる。 「む(ん)」の仮定の用法 にには む(ん ) + は =仮定「~としたら、それは~」 もこそ
む に む したらそれは 「下手な歌を献上するとしたら、それは」と訳す箇所。選択肢では2が「むこそ」となっており、こ れも「む」が仮定の用法で使われるときの形をとっているので、2が正解。1の「む」は和歌中にある のがポイント。和歌は主語が「私」という一人称なので、「一人称+む」=意志、というパターンが使 える。3は尊敬語「たまふ」に続けて使われているところから、 「しのんで参上なさってはいかがですか」 と二人称に対して「勧誘」していると判断できる。4は「ん」の下に「こと」という体言が付ている ので「婉曲」。これはすでに第2講で扱ったパターンなので、完全にマスターしてほしい。 むに むには にハ ム むは ハ ム むも も むもむ むこそ こっそりと 「~としたら、それは~」
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第4講 『古本説話集』
35 P oint 「む(ん)」の六つの意味 助動詞「む(ん)」は非常に大切。解釈に絡んでくるのでしっかり意味を覚えよう。 す 推量 い 意思 て 適当 き か 勧誘 か 仮定 って え 婉曲 ーん 1 一人称+む=意志「~よう」 2 二人称+む=適当「~がよい」 ・勧誘「~てはいかが」 ※「こそ~め」の場合は「勧誘」が多い。 3 三人称+む=推量「~だろう」 4 「む」+体言・助詞=婉曲「~ような ※P 参照 5 「むに・むには・むは・むも・むこそ」=仮定「~としたら、それは~」 ※P 参照 正解の選択肢を訳しておくと、 「人はかたちあり様のすぐれたらむこそあらまほしかるべけれ」=「人 は容貌や容姿がすぐれているとしたらそれが理想的だろう」。「あらまほし」は「理想的だ」と訳す形容 詞。文末の「べけれ」は係助詞「こそ」の結びで已然形。 解答 64 2
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P oint 問三 「に」の識別は同形品詞識別ではトップの出題率を誇るものだ。しっかりポイントをマスターし てほしい。 「に」の識別 「に」の識別の解答には七つの可能性がある。そこで、正解になる確率の高いものから順に説明 していくことにしよう。 1 完了の助動詞「ぬ」の連用形 連用形に付き、下に助動詞の「たり」「けり」「けむ」「き」の活用したものが付く。 完了 「ぬ」 用 た ら・ た り・ た る・ た れ たら/たり/たり/たる/たれ/たれ 連用形 + 「に 」 + け り・ け る・ け れ (けら)/〇/けり/ける/けれ/〇 け む( け ん)・ け め 〇/〇/けむ/けむ/けめ/〇 き ・ し ・ し か (せ)/〇/き/し/しか/〇 ※「に」の下に助動詞「たり」「けり」「けむ」「き」の活用したものが付いていたら、完了の助 動詞「ぬ」の連用形! これをゴロでまとめてみよう。 に た 景 色は完了!
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