みんゴロ極める古文1
「いま一人は」など問ひて、世の常のうちつ けのけさうびてなども言ひなさず、世の中の
あはれなることども 、こまやかに言ひ出 でて、さすがにきびしう引き入りがたい節々
してあるに、参りたる人のあるを、「逃げ入 りて、局なる人々呼び上げなどせむも見苦し。 さはれ、ただ折からこそ。かくてただ」と言 ふいま一人のあれば、かたはらにて聞きゐた るに、おとなしくしづやかなるけはひにて、 ものなど言ふ、くちをからざなり。 ここにいよう」と言う連れの女房がいるので、私はそばで(男 性と女房の話を)聞いていると、男性は分別がありおだやかな 様子で話をしているのが、好ましい感じである。
人々読む程なりとて、そなた近き戸口二人 ばかり立ち出でて聞きつつ、物語して寄り臥
96 上達部・殿上人などに対面する人は定まり たるやうなれば、うひうひしき里人は、あり 上達部や殿上人に直接対面する人は決まった身分の人のよう なので、物慣れない様子の里人である私などは、その存在さえ 知られるはずでもないのに、十月上旬のたいそう暗い夜、不断 経に、声のきれいな僧たちがお経を読む時間だといので、そ 第5講『更級日記』口語訳 なしをだに知らるべきにもあらぬに、十月つ いたちごろのいと暗き夜、不断経に、声よき
男性が「もう一人は誰ですか」などと私のことを尋ねて、世 間の男によくある、だしぬけな好色めいた態度もなく、世の中 の無常なことなどを、しみじみと話し出すので、やはりこちら もきっぱりと、相手を無視て局に身を引くわけにもいかない
にいる女房たちを呼んで来るのもみっともないこと。どうとで もなれ、場合に応じて適当に振舞うことにしよう。こうして
ちらに近い戸口の所に、同僚の女房と二人だけで出て行き、読 経の声を聞きながら話などをして、戸にもたれかかっていると、 参上して来る 殿上人(=源資通)が いたが、「逃げ込んで、 局
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