みんゴロ極める古文1
みちのくにがみにおきたるに、いかにもすき みえずとぞ、申しつたへため。御めのしり すこしさがり給へるが、いとどらうたくおは するを、みかどいとかしこく時めかさせ給ひ て、かくおほせられけるとか、 生きての世死にてののちの後の世もはね をかはせる鳥となりなむ 御かへし、女御、 あきになることのはだにもかはらずはわ れもかはせるえだとなりなむ 古今うかべ給へりときかせ給ひて、みかど、 生きての世…=生きているこの世はもちろん、死んだ後の 世界でも永遠に、羽根を並べて飛ぶ鳥(=一心同体)でいた いものです。 ご返歌として、女御が、 あきになる…=秋になると木の葉の色は変わりますが、あ なたが私に飽きることなく、今おっしゃっているお言葉だけ でもお変わりなさらないならば私もあなたにつながった枝
140 御女、村上の御時の宣耀殿の女御、かたち をかしげにうつくしうおはしけり。内へまゐ り給ふとて、御車にたてまつりたまひければ、 ご息女は、村上帝の御世の宣耀殿の女御であって、容貌が趣 深く可愛らしくいらっしゃった。宮中へ参内なさろうとして、 お車にお乗りなさったところ、自分のお体は車に乗っておられ るが、お髪の端は母屋の柱の下におありだった。髪の毛一本を 第8講『大鏡』口語訳 わが御身は乗り給ひけれど、御ぐしのすそは 母屋の柱のもとにぞおはしける。ひとすぢを 陸奥国紙(=和紙の一種。良質厚手の和紙)の上に置いたと ころ、少しも白いすき間が見えなかったと申し伝えているよう
だ。お目尻が少し下がっていらっしゃるのが、いっそう可愛ら しくいらっしゃるのを、帝がたそうご寵愛しなさって、この ようにおっしゃったとか、
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