みんゴロ極める古文1

・・・ ふに、ただ老いを高家にていらへをる。いか にしてこれを許さんと思ひて、 「おのれはいみじき盗人かな。歌は詠みてん や」 と言へば、 「はかばかしからず候へども、詠み候ひなん」 と申しければ、 「さらば仕れ」 と言はれて、程もなくわななき声にてうち 出だす。   年を経て頭の雪はつもれどもしもと見る にぞ身は冷えにける と言ひければ、いみじうあはれがりて感じ て許しけり。人はいかにも情はあるべし。 る。何とかしてこの老人を許そうと思って、 「おまえはんでもない奴だな。和歌を詠めるか」 と言ったところ、 「うまくはありませんが、詠んでみましょう」 と申したので、 「それならば詠んでみよ」 と言われて、まもなく震えた声で口に出す。 年を経て =年をとって頭には真っ白の雪が積もってい ますが、霜だと見ると身がこごえる気がするように、むち(= しもと)を見るときはぞっとする思いがします。 と言ったので、たいそうしみじみと心が動かされ、感動して許 したのであった。人はぜひとも風流の心を持っているのがよい のである。

※ 線は口語訳のポイントとなる箇所に引かれてい ます。自力で口語訳する時に 線の箇所を特に注 意して下さい。

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