新・ゴロゴ漢文問題集 基礎・必修編 v1.01
第3講 返読文字2
書き下し文 て溝の中に突き落としたかのようである。すべての民に恩沢 を及ぼすことがでるのは、もとり宰相のみである。すで にその地位を得ることができないのであれば、人を救いたい という心を実行できものとしては、良医が一番である。 古 こ 人 じん 云 い へる有 あ り、「常 つね に善 よ く人 ひと を救 すく ふ、 故 ゆゑ に人 ひと を棄 す つる無 な し」と。且 か つ大 だい 丈 ぢやう 夫 ふ の 学 がく に 於 お けるや、 固 もと より 神 しん 聖 せい の 君 きみ に 遇 あ ひ、 其 そ の道 みち を行 おこな ふを得 え んと欲 ほつ す。天 てん 下 か の匹 ひつ 夫 ぷ 匹 ひつ 婦 ぷ に其 そ の沢 たく を被 かうむ らざる者 もの 有 あ るを思 おも ふこ と、己 おのれ の推 お して之 これ を溝 みぞ の中 うち に内 い るるがご とし。能 よ く小 せう 大 だい の生 せい 民 みん に及 およ ぼす者 もの は、固 もと より惟 た だ相 しやう のみ然 しか りと為 な す。既 すで に得 う べか らずんば、夫 そ れ能 よ く人 ひと を救 すく ふの心 こころ を行 おこな ふ 者 もの は、良 りやう 医 い に如 し くは莫 な し。
重要語句
▪ 惟
▪ 莫如
3
「ただ~のみ」と訓む。限定形で「~だけ」の意。 (→第 「~にしくはなし
現代語訳 比較 の最上級で「~に及ぶものはない」の 古の人が言うには、「つねにうまく人を救う。だから人を 見捨てることはない」と。加えて、大丈夫たる者が学問に志 すにあたって、神聖なる君主にめぐりあって正しい道を行い たいと思うのは当然のことである。天下に一人でもその恩沢 を受けない者がいるのではないかと思うことは、自分が押し
22講参照)
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