新・ゴロゴ漢文問題集 基礎・必修編 v1.01
第7講 再読文字4
書き下し文 知ってから権力を授けるならば、他日施策によって下の 者はその恩恵を受けることにる。だから、造物主が将来 人の上に立つべき人に対して先に困苦させるというのは、 孟子の説のようにその能力を増進させると いうだけでな く、他日にそ人の下にいることになる者の利益のためで もあるのである。 蓋 けだ し人 ひと の上 うへ に居 を るは甚 はなは だ難 かた し。苟 いやし くも艱 かん 難 なん を諳 あん 知 ち せず、遽 には かに授 さづ くるに権 けん を以 もつ てす れば、妄 まう 意 い に設 せつ 施 し して、下 しも 其 そ の害 がい を受 う くる 者 もの 有 あ り。此 こ れ造 ざう 物 ぶつ の必 かなら ず先 さき に困 こん 苦 く せしむる 所 ゆゑ ん 以なり。艱 かん 難 なん を諳 あん 知 ち して、然 しか る後 のち に之 これ に 授 さづ くるに権 けん を以 もつ てすれば、則 すなは ち其 そ の他 た 日 じつ の 設 せつ 施 し 、 下 しも 将 まさ に 其 そ の 恵 めぐ みを 被 かうむ る 者 もの 有 あ らんと す。 故 ゆゑ に 造 ざう 物 ぶつ の 先 さき に 其 そ の 人 ひと を 困 こん 苦 く せしむる は、 独 ひと り 孟 まう 子 し の 其 そ の 能 あた はざる 所 ところ を 増 ぞう 益 えき する の 説 せつ のごときのみに 非 あら ずして、 凡 およ そ 以 もつ て 他 た 日 じつ 其 そ の 人 ひと の 下 した に 在 あ る 者 もの の 利 り の 為 ため にするなり。
重要語句
▪ 蓋
▪ 非独
▪ 苟
主に文頭にくる場合、副詞で「けだし」と訓む。 「思うに」の意。 「いやしくも~(せ)ば」と訓む。仮定形で「もし~ば」の意。 (→第 「ひとり~のみにあらず」と訓む。累加形で「~だけではなく」の意。 (→第
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現代語訳 思うに人の上に立つというのは難しい。もし艱難を十分 に知らぬまま急に権力を授けたとしたなら、みだりに施策 を行って下の者はその害を受けるこになる。こういう理 由で造物主は必ず先に困苦させるのである。艱難を十分に
21講参照)
24講参照)
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