新・ゴロゴ漢文問題集 基礎・必修編 v1.01

第9講 対句2

書き下し文 可能だとしても、十倍で囲み五倍で攻めるという兵法の常道 はゆるがせにはしなかった。これがいわゆる小変は行っても 大常失わないということである。 夫 そ れ 兵 へい を 用 もち ふるの 法 ほふ は、 所 いは 謂 ゆる 常 じやう 有 あ り、 所 いは 謂 ゆる 変 へん 有 あ り。什 じふ なれば則 すなは ち之 これ を囲 かこ み、伍 ご なれば則 すなは ち之 これ を攻 せ め、敵 てき せざれば則 すなは ち之 これ を逃 のが るるは、兵 へい の所 いは 謂 ゆる 常 じやう なり。寡 くわ を以 もつ て 衆 しゆう を 覆 くつがへ すは、 兵 へい の 所 いは 謂 ゆる 変 へん なり。 古 いにしへ の 善 よ く 兵 へい を 用 もち ふる 者 もの は、 能 よ く 寡 くわ を 以 もつ て 衆 しゆう を 覆 くつがへ すと 雖 いへど も、 什 じふ 囲 い 伍 ご 攻 こう の 道 みち は 未 いま だ 嘗 かつ て 忽 ゆるが せにせず。所 いは 謂 ゆる 小 せう 変 へん を行 おこな ふも其 そ の大 たい 常 じやう を失 うしな はざるなり。

重要語句

▪ 所謂

▪ 雖

「いはゆる」と訓む。 「世に言うところの」の意。 「いへども」と訓む。逆接確定条件(~だけれども)の場合と、逆接 ても)の場合があるが、本文では後者。

勢の敵を破るというのが、兵法におけるいわゆる変である。 古の兵法に巧みな者は、少数の力で多勢の敵を破ことが

であれば攻撃して破り、匹敵しない軍勢であれば退却すると いうのが、兵法におけるいわゆる常である。少数の兵力で多

現代語訳 そもそも兵法には、いわゆる常があり、いわゆる変がある。 自分の軍勢が敵の十倍であれば敵を包囲して屈服させ、五倍

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