語彙・テーマ
5 解説 例文の冒頭にある「近代的な自然観」とは、基本テーマ 「科学」で見た「機械論的自然観」のことです。自然 界に存在する物体は神の摂理によって意味が与えられてはおらず、運動法則に従って同じ大きさ・同じ重さ・同じ 反発係数のボールは同じ運動をするわけですから、「原子論」は「機械論」の言 い換えであると理解できます。 筆者は、 「近代の人間観」もまた「原子論」的であると言います。近代において、 個人は「伝統的共同体」のウェッ トな人間関係から解放され、 「主体的な自由」を手に入れました。 「近代的自我」とは、 「地域性や歴史性」といった 「特 殊な諸特徴を取り除き、原子のように単独の存在」となることで成立したもの なのです。 しかし、それで「自由」と言えるのでしょうか? 例文には、「規則や法則に従ってはたらく」とあります。自 然界の物体が運動法則に従うように、私たちも社会ルールに逆らうことはできません。しかも、そのルールは社 会的に多数を占める者を標準として定められています。 近代社会の「自由」は、 その標準から逸脱するマイノリティ (社会的少数者)を排除している のです。
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