語彙・テーマ
私たちは、きわめてたくさんの欲望をもつ。 一の欲望をもつことに、安心感を覚える場合 動車の選択に見られるように、周り見回し もとうとすることも、少なくない。それは同 を回避するためだけでなく、平均性を嫌い個 性的であろうとす 意志示している。その結果欲望は、大量かつ多様に吐き出され、 それに応じて実にさまざまなものが生み出さ れることになる。け れどもそうした 欲望の多様化は、奇妙なことに画一化と矛盾せ ず 進行している。 「あなただけの……」と 囁 ささや く宣伝コピーにもかか わらず、「私だけ」のはずのものに、どこか既製品 の臭いがする のであり、「本当にお前が欲しい はなんなのか 」と自ら問い 返してみるならば、「本当に」という言葉の虚しい 響きが経験さ れるだけだ。 (伊藤徹『柳宗悦 手としての人間』) 語句 〈例文〉 一のものを巡る抗争 他人と異なるものを もちろん他人と同 も多いが、衣服や自
既製品 注文を受けてから作る のではない、 出来合いの商品。レディメイド。対 義語は「あつらえ品(オーダーメイ ド)」である。
155 画一化 すべてが一様で個性がないようにす ること。「画一」の対義語は「多様」 である。 (P 参照)
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