語彙・テーマ
解説 例えば、気温や湿度の微妙な変化によって一秒の長さが変わるのだとしたら、物体の速度を計算することはでき ませんね。ですから、物理学では、時間は「物質と離れて客観的に存在」、つま り、他のものとは関係なく「絶対」 的なものであることが前提とされています。そして、 いつでも・どこでも一秒は一秒で同じ長さなのですから、 「す べての人に共通す」、つまり、 「普遍」的なもの と言えます(ちなみに、カッコ内のただし書きにあるように、ア インシュタインの相対性理論では、 「時間は、各人ごとに、 また宇宙の場所ごとに変わる」と考えるので、まさに「相 対」的です)。 ところで、私たちは時間が「過去から未来へと一直線に流れている」と考えてい ますね。筆者の言う「時間の矢」
の思想です。この時間の捉え方は、実はキリスト教(厳密にはキリスト教の母体となったユダヤ教)に起源があり ます。キリスト教では、こ世には終わりの日があって、神の裁きにより天国行きか地獄行きかが決まるとされま す。これを 終末思想 と言いますが、要するに、 現世での時間は終わりの日に向かって流れている のです。 しかし、私たちはそれとは違う時間の中にも生きています。それは、「循環する 時間です。季節には春・夏 ・秋・ 冬というサイクルがあり、それに従って植物は育ち、動物は活動し、人間もそれ合わせて生活を営みます。 そう考えると、 一直線に流れる時間というのはけっして「普遍」的ではありません。 西洋のキリスト教世界で生 まれた「特殊」なものなです。
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