語彙・テーマ

解説 例文にあるとおり、「アイデンティティ」の語を心理学における術語として用いたのは、アメリカの心理学者で あるエリクソンです。「人格的同一性と歴史的連続性」という二つの意味は、それぞれ 他者からの承認と時間的な 連続性というアイデンティティの確立のための二つの条件に対応しています ね。 しかし、「戦争という切迫した危険な状況」に置かれた患者たちは、 「人格的同一性と歴史的連続性」を失い、自 分が自分である ことに確信を持てなくなっていきます。それが 「アイデンティティの危機」 です。 「アイデ ンティティの拡散」 とも言いますので、これらの表現はぜひ覚えておいてください。

ところで、エリクソンは、人生を乳児期から老年期まで八つの時期に分け、それぞれの時期における発達課題を 達成しながら自己実現をしていくという、ライフサイクル論を提唱しした。その中で、青年期の発達課題とされ たのが「アイデンティティの確立」です。 青年期の若者は、まだ社会的な責任や義務は課されていません。多少の無茶も許されます。そのような間を 心 理社会的モラトリム (猶予期間)と言います。その間に、さまざまな可能性に挑戦し、アイデンティティを確立 して、職業の決定など社会的な役割を引き受けていくのです。青年期を生きる皆さんも、モラトリアムが与えられ ている間にやれることは何でも経験して、人生の針路を自ら選び取ってください。

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