語彙・テーマ
I have no 解説 本項の例文の筆者であり、長年にわたって入試現代文の最頻出筆者の一人である言語学者の外山滋比古は、日本 語の論理を「点的論理」、欧米語の論理を「線的論理」と対比して捉えています 。 欧米語は、自明のことであっても省略せず、必ず表現します(省略の表現もありますが、その場合には省略 が あることを明示します)。 「私」にとって時間がないことは明らかであっも、「私は時間を持たない( )」 と表現するわけです。ですから、 言葉から言葉へと一本の糸でつながっていきます。まさに 「線的論理」です。 これに対して、 日本語では、自明なこと・ 相手が十分に推測しうることは、わざわざ表現したりしません。 だから、 見かけ上は言葉と言葉がつながっておらず、論理が破綻しているように見えます。しかし、表現されていない内容 を補えば、そこに目に見えない論理は存在しているわけです。これを外山氏は囲 碁の布石になぞらえて、 「点的論理」 と評しました。 このように、日本語は非論理的であるという評価は正しくないと言えますが、では、欧米語「線的論理」と日 本語の「点的論理」の違いはどのような事情から生じたと考えられるでしょうか?
time. ここでは、例文の冒頭にある「ヨーロッパの言語は相手への不信に立脚しており」いう文言に注目してくださ い。欧米人は、人種も言語も宗教も異な人々の中で生活しています。だから、きちんと説明しないと分かっても らえないという意識がまずある。これに対して、 日本社会は同質性が高いと言われます。そうすると、言わなくて も分かってくれるだろうなる。 要するに、 「他者」がいるかいないかという違いです。この点については、 発展テー マ 「世間/社会」で改めて解説したいと思います。
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