極める古文1 基礎・必修編

とみに立つべくもあらぬほど、星の光だに見 えず暗き、うちしぐれつつ、木の葉にかか る音のをかしきを、「なかなかに艶にをかし き夜かな。月のくまなくあからむも、はし たなくまばゆかりぬべかりけり」など言ふ。 なぁ。月が少しのかげりもなく明るかったら、間が悪くさぞか し気恥ずかしい思いになってしまうでしょうよ」などと言う。

ありて、われも人も答へなどするを、「まだ 知らぬ人のありける」など、めづらしがりて、

男性が 「まだ私の知らない方もいたのですね」などと言って、 私を 珍しがり、すぐには立ち去る様子もないうちに、星の光さ え見えない暗い夜に、さっとしぐれが降り、それが木の葉にか かる音が趣深のを、 男性は 「かえって優雅で風情のある夜だ

場面も多くあって、私も連れの人も受け答えなどしていると、

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