極める古文1 基礎・必修編

き人も侍らぬわたなれど、らうがはしき大 路に立ちおはしまして」と、かしこまり申す。 引き入れて下り給ふ。

て、奉らす。「鍵を置き惑し侍りて、いと不 便なるわざなりや。物のあやめ見給へ分くべ

よ。枝もなさけなげなめる花を」とて、取ら せたれば、門あけて惟光の朝臣出で来たるし

をどなたと見分けますことのできる人もありません辺りです が、騒がしい大通りにお立ちになっていらして恐縮です」と言っ て 源氏に おわび申し上げる。車を門内に引き入れて、 源氏は お 降りになる。

ある門に入って花を折る。そうはいってもやはり粗末ながらも 風情のある引き戸の口に、黄色の生絹の単袴を長めに着こし ている 女の子で 、かわいらしい 女の子が 、出てきて手招きをす

る。白扇で、たいそう深く香をたきしめてある扇を、「これ に置いてさしあげなさい。枝も風情のなさそうな花ですから」 と言って扇をくれたので、 随身は 門を開けて惟光朝臣が出て来 たのに 取り次がせて源氏の君に 差し上げさせる。 惟光は 「鍵 をどこか置き忘れまして、まことに不都合なことですよ。君

125

Made with FlippingBook HTML5