極める古文1 基礎・必修編

出 典 解 説 問八 文脈を追ってみよう。大隅守が口実を付けて郡司を許すために、「お前は歌が詠めるだろうか」 と尋ねたところ、郡司がなんとか和歌を詠んだ。その和歌が意外にもすばらしく、大隅守は「いみじう あはれがりて、感じて許しけり」=「たいそうしみじみと心動かされ、感動して許したのであった」と いう流れだ。 傍線部ニで「情(なさけ)」といっているのは、 「和歌を詠むこと」なので、1「風流の心」に当たる。 当時、うまい和歌が詠めるということは風流心があることであり、いい歌によって人の心は動かされる ものであったこと知っておこう。大隅守の郡司に対す温情の言葉ではない。 第1講の出典『 宇 うじしゅうい 治拾遺 物語』は、鎌倉時代に成立した説話文学。鎌倉時代は説話文学が 花盛りの時代で、他にも『 宝 ほうぶつしゅう 物集 』、『 発 ほっしんしゅう 心集 』( 鴨 かものちょうめい 長明 作)、『 古 ここんちょもんじゅう 今著聞集 』( 橘 たちばなのなりすえ 成季 作)、 『 十 じっきんしょう 訓抄 』、『 撰 せんじゅうしょう 集抄 』、『 沙 しゃせきしゅう 石集 』( 無 むじゅう 住 作)などが成立した。このうち、『発心集』は『 方 ほうじょうき 丈記 』 の作者である鴨長明の書いた仏教説話として頻出。また、橘成季の書いた『古今著聞集』は、 量の上では説話最大の『今昔物語集』 (平安時代に成立)に次いで多く、 もの説話が収録されている。

700 また十教訓のもとに約 話の説話を掲載している『十訓抄』も入試では頻出だ。ちなみに説話最 大の作品である『今昔物語集』は平安時代に成立したものなので注意しよう。 今回出典の『宇治拾遺 』は、短編物語的な形をとっており、文体も平易なため、入試では 出題されやすい。文体は口語表現的で読みやすく、話題も「こぶとりじいさん」、「舌切り雀」など の有名な民話が入っている。 解答 1 280

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