極める古文1 基礎・必修編

第2講  『徒然草』

240  『徒然草』には兼好法師の人生観を反映した内容のものが多く、『枕草子』が清少納言の宮中日記 的な「をかし」という感性あふれる随筆であったのに対して、『徒然草』は出家した兼好法師の人 生哲学・思想的な内容になっている。鴨長明の随筆『方丈記』や軍記物語『平家物語』と同様、底 流には「無常観」が流れている。『徒然草』は約 段からなるが、全体的に読みやすく面白いうえに、 現代でも通じる人生訓もあり、基礎的な古文力をつける意味でも通読することをオススメする。

出 典 解 説 入試古文の出典で『源氏物語』と一位の座を争っているのが、この『徒然草』だ。作者はも ちろん 兼 けんこう 好 法師(吉田兼好・ 卜 うらべかねよし 部兼好 )。鎌倉と室町の中間期である騒乱の南北朝時代(十四 世紀前半)に成立した作品。三大随筆といわれるものの中で、最後に書かれた作品だ。 三大随筆とは、 『枕草子』 ( 清 せいしょうなごん 少納言 作)、 『 方 ほうじょうき 丈記 』 ( 鴨 かものちょうめい 長明 作)、そしてこの『徒然草』を指す。『徒 然草』のほうが『方丈記』よりも古いと間違って記憶している生徒が多いが、 鴨長明作の『方丈記』 は鎌倉初期に書かれたもので、『徒然草』よりも百年以上前に成立している ことに注意。

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