極める古文1 基礎・必修編

44 りも速やかに、逃れがたきものを、その時、 老いたる親、いときなき子、君の恩、人の情 け、捨てがたしとて捨てざらんや。 言うだろうか、いや、言わないだろう。わが身を助けようとす るので、恥をもまわず財産をも捨てて逃げ去るのだよ。命 というものは人の都合を待ってくれる だろうか、いや、待ちは

しない 。死が訪れることは水や火の攻めてくるのよりも速く、 逃れることのできないもであるのに、その死期が来た時に なって、老いている親、幼い子供、主君の恩、人の情け、これ らを捨てにくいからといって、捨てないことがあろうか。

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