極める古文4 上位~難関大突破編

ふるさとの荒れたる きつる歌共、いと多か る都の年経てあらずなりぬ めりし里など、いつしか異やう 見ては、おのづからあはれ催すべか が生まれつる所は、四つ屋といひて、 ど、かやぶき板屋などむねむねしからず。大 方田舎めきよろぼひたる家ども打ちまじれり。 一とせ如月のつごもりばか 、此わたりを行 きかひしけるついでに、入りて見けるに、昔 すめりし家のあとは草むらとなりぬ。そこは かとなく分け入るに、しかす に庭とおぼし きわたりは植木など枯れ残り敷石所々にあり。 いたく苔むしたる井筒に立ちより見れば、水 のみ昔にかはらず澄めり。 などいふかひなきものの

第 9講『井関隆

。そはいみじかりつ

彼 かれこれ 是 住みわたりつれ

かの「

あ るじ顔な

己 おの が住

公 おほやけびと 人

住み慣れた土地が 歌が、たいそう多い。そ 見ては、自然としみじみとした感慨を うだ。私が生まれた所は、四つ屋と って りない身分の者があれこれ住み続けていたけれ きの家などがしっかりもしていない。大体、田舎び かかっている家などが混じっている。先年、旧暦二月の この辺りを行き来することがあった機会に ころ、昔住んでいた家の跡は草むらとなっていた 特にどことい うこともなく草を分け入ると、そうはいっ も庭と思われる辺り は植木などが枯れ残 敷石も所々にある。ひどく苔の生えた井戸

どが、いつの間にか の囲いに立ち寄って見ると、水だけは昔と変わらず澄んでいる。 あの『源氏物語』の明石の尼君が久しぶりに戻った旧宅で「 がまるで主人ぶって昔のままである

て 面影も

なくなってしまった様子や、

見覚えのない姿に

」と詠んでいたのももっとも

変わってしまっているのを

栄えていた

旧宅に

入って見たと

都が年を経

遣水

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