極める古文4 上位~難関大突破編

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2

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志望大学の目安表

国公立大

私立大

難 関 大 上 位 大 中 堅 大

旧帝大レベル (センター 85~90%レベル) 早大・上智大

G ※ MARCH レベル

上位国公立大レベル (センター 80%レベル) 地方国公立大レベル (センター 70%レベル)

関関同立 レベル

日東駒専 レベル 産近甲龍 レベル ※G=学習院大 M=明大 A=青学大 R=立教大 C=中央大 H=法政大

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スタート

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3

1 本書は入試本 題を解く際には 2 問題を自力で解き終え 点だけを気にするのでは ましょう。示されている合 3 演習する際には、本番同様の「集 のうえで解説を読み、しっかりと復 る部分と「ポイント」でまとめられてい 心掛けてください。 4 この問題集を一通り解き終えたあと、もう一度 ともに、 「古文と口語訳の対照」のページを復習し 口語訳 なっているので、下段を見ないようにしつつ してみましょう。そうすることで読解力が飛躍的に向上 ※ 古文単語は『古文単語ゴロゴ』 、古文文法は『古文文法ゴロゴ』 、この二 に関してすべてが網羅的に掲載されているので、本問題集と併用して使えば威 「本書の利用法」

4

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上位~難

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5

目次

第5講

第4講

第 3講

第 2講 『十六夜日記』 ◦ 藤原公任の「三舟の才」

第 1講 『とはずが ◦ 前書きや注は解答の

◦ 対句 ◦ エ段+ら・り・る・れ

◦ 「むず(んず) 」 ◦ Aを・に・ば・ど・どもB

◦ 「けれ」の識別

◦ 慣用表現ベスト ◦ 「誰に対する敬意」かのポイン

※出典解説「鎌倉時代の日記」 「阿仏尼」

 『方丈記』

『平家物語』

『大鏡』

―――――――――――――――――――

10

―――――――――――――――――――

――――――――――――――――――

――――――――――

――――――

◦ 全否定の副詞 ※出典解説「鴨長明」

◦ 「こそ~已然形、 」の形

◦ 陰暦の月齢 ◦ 助動詞「る・らる」の四つの意味

◦ 「AてB」の形

※出典解説「軍記物語」

※出典解説「歴史物語」

※出典解説「平安時

立教大学

関西大学

関西学院大学

経済学部

商学部

商学部

文学部

経済学部

― ―――――――

― ―――――――

― ――――――

― ――――――

― ――――

8

20

47

60

31

6

第 10講 『十訓抄』

第9講

第8講

第7講

第6講

◦ 副助詞 ◦ 記述式の説明問題の解答の手順 ◦ 逆接でつながれている文と文は、相互ヒント関係 ◦ 助動詞「まし」

◦ 「む(ん) 」の婉曲の ※出典解説「藤原俊成・定家

※出典解説「鎌倉時代の説話」

 『落窪物語』  『浜松中納言物語』

『井関隆子日記』

『毎月抄

』 ――――――

――――――――――――――――――

―――――――――――――

――――――――――――――――

―――――――――――――――

◦ 「べし」の七つの意味

※出典解説「井関隆子日記」

※出典解説「平安の物語」

※出典解説「平安の伝奇物語」

― ― 東京大学

京都大学

早稲田大学

同志社大学

文系 ― ――――――――――――

外国語学部

文学部

文学部

― ―――――――――

― ―――――――

― ――――――

― ――――――

99

113

88

129

77

7

講 『

第 1

学習テーマ  『とはずがたり』は鎌倉 は出典解説で詳しく触れる。

今回のテーマ問題は問五 問一  「せ」の識別問題。二重傍線部の「せ」は、使役の助動詞「す」 も乗り越えなければならない壁だ。ポ から ってくるというワザが必要で、これ など、ストーリー性のあるものは、前書きにあ あり、それを手がかりに文章を読み、問いを解くこ 本文と同じくらい大切なものだと考えて、 細心の注意を 合格点は

したるを」の部分は、次のように品詞分解できる。 「打た/せ/させ/おはしまし/たる/ 」

28点だ!

。主語や目的語に関する問題は古

後 ごふかくさいんのにじょう 深草院二条

。鎌倉時代の日記文学につ

問題編 02 ページ

第1講  『とはずがたり』

打た =尊敬 おはしまし=サ行四段 =完了の助動詞 を =接続助詞 =(女房達を)打た なさっ が  「せ」はいくつかの可能性が考えられるが 断しよう。ここでは「打たせる」ととれるので、 2は、サ行下二段動詞「参らす」の未然形「参らせ と訳す。3は、尊敬の助 「す」の連用形。 「せおはし 表している 4 使役 動 「す」の未然形。 人して打 するまい」となって、 「~させる」という意味があるので、 「せ」 の未然形。 「する」 という意味があるのがポイント。6も同様に、 サ 尊敬 助動詞「す」の連用形。 こうしてみると、二重傍線部の「せ」が「使役」とわからなくても、 「一つ ところから、 せ = させ たる

3=7=「尊敬」 、5=6=「サ変」

3と同様に最高敬語の形だ。

、ということがわかれば、正解の4にたどり着ける。

1は「使役」と判断できる。

「 ま ー

ちなみに 問二 なかなか微妙な問題で、 。本文では、1行目に「女房の 思ったあとに御所に仕返しすると 文単語ゴロゴ』という強い味方もあるので 問三  「供御」の読みを問う問題。これは「ぐご(くご) 」と読み のについていう。 「お召し上がり物」のこと。こうした古典常識に 文常識読みベスト208」として載せておいたので、参照してほしい。 問四  「あらはに」は、直訳では3の「まる見えで」の意味だが、ここはそれだとち 難しい 「しゃくにさわる」 ね ー

たし かに 憎らしい

いら いら す る」と

≒ 「憎らしい」と思ったからこそ仕返し

申し上げる

ねたし=憎らしい

2の「悔しいことだ」と4

まゐらす=(補助

と、単に「悔しい」と思う以上に

「ねたきことなり」と

解答

ぐご(くご)

解答

解答

10

第1講  『とはずがたり』

この箇所は の中には~」 「 うのは 他の選択肢は場所を表し 問五 まず、ここでの目的語は「御所 議して」とあるように、女房たち か を打つ計画を立てている。問二と連動し 打つことができた、という場面だ。したがっ 次に主語を考えていこう。御所を は問題ないが、実際に御所を打ったのは誰なのか、と りしない。 そこで続けて読んでいくと、 る。したがって、解答としては①の「誰が」は「筆者」ということになる 何と呼んでいるかを探す必要がある 筆者のことを文中で探すと、前述の に候はず」とあり、次の会話文に「まさしく君の御身に こで会話をしている筆者が御所を

「まる見えの場所」

「表立った場所」

A で打つために女房たちが集まり、御所を待ち伏せ A で打って、その罪を問われ、それに対して抗弁している様子がわか 22行目の会話文に「打ち参らせて候ひし時に、われ一人罪に当た

22行目の「われ」ぐらいしか該当するものがなく、これを答えに

のことであり、選択

A を当て参らせたる者」とあるところから、こ

筆者のことを文中で

解答

11

P OINT

するしか がよい。 に考えると、 「御 前書きや注は解答の 古文や漢文の場合、 「前書き とが多い。特に「人物関係」や「場 人物関係図を書いて整理してから本文を 問六 まず、傍線部ホの直前の「わが御身」が誰を指してい 「かかる目にこそ逢ひたりつれ」とあり、それに答える次の るところから、 「かかる目」というのは女房に 所」なので、 「わが御身」と発言している人物は「御所」自身であ とを「わが御身」と称しているので、傍線部の主語は会話主である「御 が」は「御所」 。 次に、 「おはします」 が尊敬語であるところから、 ②の 「誰に対して」 という

古文の場合、

解答

A で打たれたことであり、 そんなひどい目にあったのは「御

①=二条(われ)

②=御所(後深草院)

同様

12

第1講  『とはずがたり』

に対する敬 たくしの御身は 自分で自分に尊敬語 や院などだけが使うこと そこで、②の「誰に対して ていることになる。 問七  「見継ぐ」という単語自体は重要語と は御所が公卿たちに向かって、 が杖で打 継がざりつるぞ」と恨み言を言った場面。その状 私を『助けなかったのだ』 」と叱責している 迷うのは1と4だが、1の「知らせ かったのか」では るし、 4の「見続けているのか」では、公卿たちがその場で御 どちらも本文にはそうした事実は書かれていないので×。 問八 問七とも連動するが、この場面は御所に怒られた公卿たちが、弁解をし けたりしている場面にあたる。傍線部の直前に「一同に(=一斉に) 」とある の動作主にあたるが、これは

12行目に「公卿達常の御所にさぶらふ」と書かれている「公卿達」のこと

と判断する。正解は、3「助けなかったのか」 。

解答

①=御所(後深草院)

「なぜお前たちは、杖で打たれている

「自敬表現」

②=御所(後深草院)

文脈判断

になる。ここ

解答

と呼び、

13

を指して 口語訳の問題はとに 「身/数ならず/さぶらへ/ば 身 =わたし 2点 。 問九  「数ならず」は『古文単語ゴロゴ』に掲載の重要古語なので、ま 寧語+順接確定条件」の「さぶらへば」の部分だけでも三分の一程度の 的処理で得点できる部分では確実に取ってほしい。 数ならず=取るに足らない さぶらへ=です(でございます) ば =ので =わたしは取るに足らない者で ので 数ならず

いぶん

取るに足らない

数ならず=取るに足らない

解答

わたしは取るに足らない者でございますので

「公卿」

解答

公卿達

14

第1講  『とはずがたり』

問十 出典解説にあるように、 『 納言による平安時代の随筆。4の『 深草院二条。自伝的作品で、内容は自己を赤裸々に告 鎌倉時代の日記では『 りがメジャーな作品だが、この『とはずがたり』も入試ではよ 日記文学は平安時代に紀貫之が書いた 『土佐日記』 に始まる。 出 典 解 説 『 弁 べんの 内 な い し 侍 日 に っ き 記 』 。1の『 源 みなもとのさねとも 実 朝 による鎌倉時代の私家集。  『とはずがたり』は鎌倉後期、

『土佐日記』

か 『蜻蛉日記』 げ の

太 たいへいき 平記 』は南北朝時代(室町時代初期)

建 けんれいもんいんうきょうのだいぶしゅう 礼門院右京大夫集

『和泉式部日記』

蜻 かげろう 蛉 日記』は

14世紀初頭に成立した日記文学で、作者は

れ 墨

配点 ①「わ ②「取るに足ら ③「ございますので

藤 ふじわらみちつなのはは 原道綱母

』と、次の講で扱う阿仏尼の『

『紫式部日記』

による平安時代の日記。5の『

『更級日記』

、 ぬ

『讃岐典侍日記』

後 ごふかくさいん 深草院

さぬきのすけ

い ざ よ い 六夜 日記』あた

き ぬき

に仕えた後

解答

金 きんかいしゅう 槐集 』は

15

 『

第1講

問十

問九

問八

問七

問六

問五

問四

問三

問二

問一

ぐご (くご) わたしは取るに足らない者で ざいますので ① 二条 (われ) ① 御所 (後深草院)

3 公卿達

2

5

4

4

4

4

4

4

4

② 御所 (後深草院)

4 ② 御所 (後深草院)

4

各4

各4

6

28 点

16

水・さぶらふなどを立て置きて、 東の御方と 二人、 末の一間にて、 何となき物語して、 「一

しめしよらぬ御事なれば、 御大口ばかりにて、 「など、これほど常の御所には人影もせぬぞ。 ここには誰かさぶ ふぞ」とて入らせお し

女房の方にはいと まりに、 わが御身一つ し集めて、 女房達を打たせ るを、 ねたきことなりとて、 東 はせて、 十八日には御所を打ち参ら ふ事を談議して、 十八日に、 早朝の供御 程に、 台盤所に女房達寄り合ひて、 御湯殿の の口には新大納言殿・権中納言 あらは 別 当殿、 常の御所の中には中納言殿、 馬道に真清  『

定、御所はここへ出でさせお しま なむ」 と言ひて待ち参らするに、 案にも違はず、 おぼ

第1講

「どうして、こんなに常の御所には人影もないのか。ここには 誰か控えておるか」とおっしゃって入っていらっしゃったとこ ろを、東の御方が抱きとめ申 上げる。 「ああ困った。誰かい るか、誰かいるか」と

女房の側にとって ことに、 めなさって 女房たちを打た わることだ 思って、 は院をお打ち申し上げようということ 早朝のお食事のすんだころ、台盤所に女房 御湯殿の上の間の戸口には新大納言殿、権中納 別当殿、常の御所の中には中納言殿、馬道には真清 ふ(=女房の名前)などを立てておいて、 末の一間でとりとめのない雑談をして、 「きっと、院は こ 出ていらっしゃるでしょう」と言って待ち申し上げると、案の 定、 院は 思いもかけられなかったことなので、大口袴だけで、 院 ご自身だけではなく、お

院は おっしゃるけれども、すぐかけつけ

私は 東の御方と申し合わせて、十八日

私は 東の御方と二人、

17

ましたるを 悲しや。人やあ も、 きと参る人もな の大納言が参らむとす 清水、 「子細候ふ。 通し参 ちたるを見て、 逃げなどするほ に打ち参らせぬ。 「これより後、 な 打たせじ」 と、 よくよく御怠状せさせ給 さて、 しおほせたりと思ひてゐた ほどに 夕供御参る折、公卿達常 御所にさぶ ふに 仰せられ出だして、 「わが御身、 三十三になら

だ昔もその例なくやあらむ。 などかまた、 おの おの見継がざりつるぞ。 一同せられけるにや」 と、 面面に恨み仰せら るほどに、 おのおの とかく陳じ申さるるほどに、 「さても、君を

せおはします。 御厄年に負けたるとおぼゆる。 かかる目にこそ逢ひたりつれ。十善の床を踏 んで万乗の主となる身に

B を当てられし、未

る人もいな 道に控えていた はできません」と言 後は永久に男たちを使って打 ごろにおわびになった。 さて、うまくやりとげ と思っ い がるとき、公卿たちがつねの御所に控えて が 話し出されて、 「私は三十三におなりになる。 あったと思われる。こんなひどい目にあったのだ。 踏んで万乗の君とな 身に の例はないだろう。 どうしてまた、 あなたがたは私を助けな たのか。皆で共謀なさったのか」 と、 それぞれに恨みごとをおっ しゃったので、 るうちに、 「それにしても、 君をお打ち申し上げるほどのことは、 たりなどするうちに、

女房であると申しても、その罪は軽くないことであります。昔 の朝敵の人々も、 これほどのひどいことはやってはおりません 君の 御影をさえも踏まないことになっておりますのに、実際に

公卿たちが

私は 思うままに

C を持っているのを見

それぞれあれこれ弁解申し上げなさ

C を当てられたことは、まだ昔もそ

院を 打ち申し上げた。 「今

師親が

院は ねん

逃げ

18

打ち参らす 罪科軽かるまじ も、 これ程の不思議 踏まぬ事にて候ふに、 ぶらひける不思議、 軽から 申さる。 その折申す、 「これ、身として思 ふ。 十五日に、 あまりに御所強く打たせ まし候ふのみならず、 公卿殿上人を召し集め て打たせられ候ひし事、 本意なく思ひ参らせ 候ひしかども、 身数ならずさぶらへば、思ひ よる方なく候ひしを、 東の御方、 『この恨み思 ひ返し参らせむ。 同心せよ』 と候ひしかば、 『さ

承り候ひぬ』 と申して、 打ち参らせて候ひし時 に、 われ一人罪に当たるべきに候はず」 と申せ ども、 「何ともあれ、 まさしく君の御身に

当て参らせたる者に過ぎたる事あるまじ」 と て、 御贖ひに定まる。

B を参らせさ

B を

C でお打ち申 ん」ということ ないことです。十五日に なりましたばかりでなく、公 せなさい たことは、不本意に 取るに足らない者でございますので、 ずにおりましたが、東の御方が、 『この恨 しあげよう。力を貸しなさい』と言いましたの 知いたしました』と申し上げて、院をお打ち申し上 で、 私一人が罪になるはずはございません」 と申し上げ はともあれ、実際に君の御身 杖でお打ち申し上げた者以 罪科の者はあるまい」と いをするこ に決まった。 そのとき

※  

線は口語訳のポイントとなる箇所に引かれてい ます。自力で口語訳する時に 意して下さい。

私は 申し上げる、 「これ

公卿たちはおっしゃって

その罪が

院が私どもを

私としては

線の箇所を特に注

軽くはござ

、 私が 罪の償

強くお打ちに

思いもよら

私は

19

2 講 『

P OINT

学習テーマ

今回のテーマ問題は、古 あたる。上位大学はこうした知 る人は、ここでまとめて一気に知 また、 なので、間違えた人はよく復習してほしい 問一 Aの「やまと歌」に対立するものは「からうた」 のことを表すのに対して、 「唐詩」は「漢詩」のことを の文化として「漢詩」のほうが「和歌」よりも重んじられて ている。 藤原 公 きんとう 任 の「 三 さんしゅう 栄華を極めた藤原道長が、公卿たちを集めて宴遊を催したときに、 和歌の舟を出し、それぞれの分野の名人を乗せることになった。その時、道長 れた公任は和歌の舟を選び、 「小倉山嵐の風の寒ければもみぢの錦きぬ人ぞなき 問二の「 『て』パターン」

舟 の 才 さい 」

はシンプルだが、上位大学を攻略する

合格点は

35点だが、満点も可能だ!

。ちなみに平安時代においては、男性貴族

大 お お い 堰 川に漢詩の舟 ・管弦の舟 ・

「大和歌」が「和歌」

問題編 07 ページ

20

第2講  『十六夜日記』

P OINT

「AてB」の形

れた。しかし もの。これにより 問二 傍線部⑴の直前に「集を撰ぶ」 「勅を承けて」とあ のは、 「勅命を承けて」 「集を撰」んだことに当たり、正 ということで、 波線部は「やまと歌」に対 慰みごとに過ぎない、 述べられ 部の次の行に「世を治め物を和らぐる せ万物を調和させる手段となるものだ、 「なりにける」が正解。

A て

相互 ヒントの 関係

藤原公任のことを「三

「漢詩」 「和歌」

(A

= 原因、B

解答

= 結果、である場合が多い)

A=からうた

の三つの分野のす

直前の「て」を見落とさないこと。

と呼ぶことがある。

B=世を治め物~なりにける

解答

21

問三 く/今日/ま 文末の「らむ」は ているイとオがまず× に該当するものもない。 次のポイントは、 「つれなし 連れなし ゴロでは「よそよそしい」 なっている 「何事もない様子である」 アは「道連れもなく」が×、エの「冷たくされて くされて」という指示語の内容が直前にないので× 指 問四  「ゆくりもなし」と「も」が入っているが、 「ゆくりなし」 問五 上位〜難関大学はこうした慣用表現が好んで出題されるので、まとめておこう こうし 「平穏無事である」 ゆ っ くりな死

に よそよそしい

、 突然の

ゆくりなし=突然だ

つれなし=よそよそしい

「つれなし」が自然現象や物事の状態に使

なので、ここではウの「無事に」が正解。

ので、 選択肢で文

「何とし

解答

解答

22

第2講  『十六夜日記』

P OINT

入試によく あととふ(跡 あれかにもあらず

1 いをぬ・いもぬ・ねはぬ ※それぞれ漢字で書くと 「寝を寝」 も寝ず(いもねず) 」を「寝ない」 、と かぎりある道 かたちをかふ ※「さらなり」 「いへばさらなり」 「 ふばかりなし」 「いふも といふもおろかなり」 「~をばさるものにして」も同じ意味。 8 ひとやりならず みかうしまゐる(御格子参る) われかのけしき(我かの気色) 2 いか 3 4 5 さらにもいはず 6 7 9

10

※「 御 み 髪 ぐし おろす」 「

を 遁 のが る」 「世を

が(は

出る慣用表

)せむ

=出家する。

=死出への旅路。死。

離 はな る」 「世を =言うまでもない。 =人のせいではなく。わが心から。

=どうしようか、どうしよ

頭 かしら おろす」 「飾りおろす」 「

=①行方を尋ねる

=寝る。

出 い づ」も同じ意味。

=①御格子を上げる。 =自分かどうかわからぬさま。正気を失っているさま。 ②御格子を降ろす。

10

=夢心地である。茫然

様 さま をかふ」 「姿をかふ」 「世を

捨 す つ」 「世を

背 そむ く」 「世

23

P OINT

 「人や おくべきもの

陰暦の月齢   (こもちづき)

問八 陰暦の月齢に関する問題なので、まとめてみよう。

問六  「係り結び」の問題 こうした問題でケアレスミ 問七 古文の中で「道」とあれば「人 徳」 「仏道」などの意味があるが、ほ この文章では、問一・二でもわかるよう 道」だとわかる。傍線部は筆者の夫為家が、 「 を大切に育ててくれ、 自分の後世を弔ってくれ」と とも呼ぶので覚え おこう。 =十三夜 =十五夜

小望月 望月    (もちづき)

。正解は「人

和歌の道のことを「

解答

解答

解答

敷 しきしま 島 の道」

ぬる

24

第2講  『十六夜日記』

そうじょうへんじょう ということで、六歌仙に入っていないのは、オの「 和泉式部より百年ほど前の人たちにあたる。この中で「在原業平」は たる人物だ。 十六夜月   (いまちづ   (ねまちづき)   (ふしまちづき) =二  「いざよふ月」は「十六夜」にあたる 立待月   (たち 居待月 寝待月 臥待月 更待月   (ふけまちづき) 問九

お の の こ ま ち へ 僧正 昭 ん な 在原 平 り 小 小野   遍 業 き せ ん ほ う し 黒 大伴 主 き  撰法師 フ  屋康秀 ン 黒 喜 文 町 の 小町

六 ろっかせん 歌仙 のゴロを見てみよう。

 (いざよい

ありわらのなりひら

おおとものくろぬし

=十九夜

ふんやのやすひで

和 い ず み し き ぶ 泉式部

」 。六歌仙は平安初期の歌道の名人なので、

解答

解答

25

ているところが特 行文が主になっており 品としては、若き日の恋の も入試に出るので要注意。また 試古文では要注意 出典だろう。 とも覚えておこう。 鎌倉時代の日記文学を以下にゴロでまと たま 出 典 解 説

 『 十

阿 阿仏尼 仏尼 さん、

い ざ よ い 六夜 日記』は鎌倉

た 『たまきはる』 ま来はる

十 『十六夜日記』 六 夜

けんれいもんいんうきょうのだいぶしゅう 『建礼門院右京大夫集』

京 に う 『うたたね (の記) 』 た た ね

は す け べ ベ

たいらのすけもり 平 資盛 との恋愛

あ ぶ つ に

仏尼 が遺産相続の問題

と 『とはずがたり』 は ず

るいじゃ

『弁内侍日記』

海 かいどうき 道記 』 『 東 とうかんきこう 関紀行

べんのないし

ン ベン

『中務内侍日記』

なかつかさのないし

な か

』なども入

26

第2講  『十六夜日記』

第2講

問九

問八

問七

問六

問五

問四

問三

問二

問一

B 世 を 治 め 物

A からうた

ぬる

5

5

5

5

5

5

5

5

~ な り に け る

5

35 点

27

は、類猶ありがたくや有けむ。其跡にし もたづさはりて、三人の男子共、百千の 歌の古反古どもを、いかなる縁にかあり けむ、預り持たる事あれど、道を助け

さても又、集を撰ぶ人は例多かれど、 二度勅を承けて世々に聞え上げたる家

思ひ続くれば、や まこと少なく、あだな 思ふ人もやあらむ。日の本 戸開けし時より、四方の神たち 詞をはじめて、世を治め物を和らぐ かだちとなりにけるとぞ、この道の聖た ちは記し置かれたる。  『十

よ、子を育くめ、後の世を弔へとて 深 き契りを結び置かれし細川の流れも、故 なくせきとゞめられしかば 跡弔ふ法の

第2講

じめとして、 した約束を結んでお残しなさった細川の荘園が、何の理由もなく横 取りされたので、 助けていこうとする けれども、 くれ、自分の後世をとむらえ」と言って、

の道 を 盛んにするために

思い続けてみると ごとに過ぎないと思って 開かれたときから、四方の神 段となるものであると、和歌の名手た それはそうとまた、 に撰集を奏上した家は、やはり例がめったになかっ ういう定家・為家という名誉ある人々の家柄 て、三人の男の子たち、数多くの歌の古い書き物を、どうい であったのだろうか、受け継 で持っていることがあるが、 「

同じ人が

和歌というものは

亡夫の

二度までも勅命を受けて、その時その時の朝廷

私たち

勅撰和歌集

後世を弔う仏前の灯明も、 親子の命も、両方ともどちらが早く消え

力を添えてほしい、子どもを大切に育てて

世情を安定させ万物を調和させる

の撰者となる人は、その例は多い

お歌いになった

亡き夫の為家が

のあとに私が関係をし

歌道を

舞楽の言葉をは

守り家を

しっかり

和歌

28

灯も、道を もろともに消え く心細きながら、何 まで永らふらむ。惜し く思捨つれども、子を思ふ びがたく、道をかへりみる恨は なく、さても猶東の亀の鏡に映さば らぬ影もや顕はるゝと、せめて思ひ余り て、よろづの憚りを忘れ、身をようなき ものになし果てて、ゆくりもなく、いざ よふ月に誘はれ出なむとぞ思ひなりぬ る。

さりとて、 文屋康秀が誘ふにもあらず、 住むべき国求むるにもあ ず。ころは三 冬立つ初めの空なれば、降りみ降らずみ 時雨も絶えず、嵐に競ふ木葉さへ涙とと もに乱れ散りつゝ 事 ふれて心細く悲 しけれど、人や ならぬ道なれば、行き

一人の身は 冬になる初めのころの空なので 降ったり止んだりして 時雨も絶 えること く、嵐に も、涙と一緒にしきりに乱れ散って、何か事あるごとに頼りなく不 判を受けた てくれるという訳でもなく、また( た。 そうかといって、 のように

るか、 頼りなく不安な に 生きながらえてこら してもその方法がなくて、それにして に思い悩んで、さまざまの遠慮や気兼ねも忘れ 下りの主人公のように)この身を無用の者だとあき 然に十六夜の月に誘われて が、子どもを ちであって、

その時がく

)住むべき国を求めるのが目的の旅立ちでもない。季節は

どうなってもよい

ならば、

かわいく 歌道 を振り返ることで

吹かれて

小野小町のように

事件の真相も

競争するよ 思う 親の 心の迷いはやはり耐えられな と簡単に思い捨てること

鎌倉へ

先を争うように激しく散る木の葉まで

旅立ってしまおうという気になっ

明らかになるであろうかと、切実

文屋康秀のような男性が誘っ 『伊勢物語』の東下りの主人公

胸に生じる

あわれな

無念さは慰めようと

鎌倉幕府の正しい裁

年月を過ご

無事

自分

29

憂しとても となく急ぎ発ち

安な感じで 行くのがつらい くて、何ということ

30

3 講 『

第3講  『大鏡』

学習テーマ

 『大鏡』は平安時代の歴史 が最初の作品で、 続いて『大鏡』 鏡』がダントツで入試に出題される。 今回のテーマ問題は、問一の「誰に対 の対象の問題は上位〜難関大学に頻出する のポイントは、1「品詞分解を前提とした文法力 るに、正確な文法力と単語力を前提に、文脈判断しな いくことだが、実際には口語訳を苦手としている人は多い しかし、 にかく自力で口語訳をやっていくうちに次第にコ 取るだけであれば、文法力と単語力だけでも十分いけるので、決し 何事も「習うより慣れろ」の精神でぶつかっていこう。

問一  「誰に対する敬意」なのか、というポイントを確認しよう。

ものなので、ここでマスターしてほしい。

合格点は

赤 あかぞめえもん 染衛門 四 しきょう 鏡 」へと続く。この中では『大

30点だ!

の書いた『

栄 え い が 花(華) 物語』

問四の口語訳

にある。要す

問一の敬意

問題編 12 ページ

31

P OINT

「誰に対 1「尊敬語」は、 2「謙譲語」は、その 3「丁寧語」は、読み手 ⒜の「さぶらふ」は「お仕えす 「 『入道殿に』お仕えしている」という ることになる。正解は2「藤原道長」 。 ⒝の「たまふ」は「~なさる」と訳す「尊敬語 しこまりて逗留したまふ」の主語は誰なのかを考えよ 藤原隆家) に対して、 入道殿が 「早く紐を解いてください しゃったのに対し 、 それを聞いた中納言(=藤原隆家)が、 て躊躇しなさる) 」 、という場面。 「たまふ」の主語にあたるの ⒞の「きこえ す」は「~し申し上げる」と訳す「謙譲語(補助動 語に対する敬意 という文脈なので、目的語にあたる 中納言 に対する敬意を表している。正 する敬意

を表す。ここでは酒宴の席で人々が

を表す。ここでは「入道殿もたいそう『中納言を』手厚くもてなし申し上

尊敬語は主語に対する敬意

解答

⒜=2

謙譲語は目的語に対

⒝=1

謙譲語は目的

を表す。 「か

⒞=1

32

第3講  『大鏡』

問二  「る・ら 難関大学で出題 助動詞「る・ら 受身「 (~に)~され 尊敬「お~になる・~なさる できない」という不可能を表す。鎌倉時代以降 4 自発「 (自然と)~す うのが曲者。一般的には 「思ふ (思ひ出づ・思ひ知る ・ に関係する語が上にあると「 ・らる」は自発にな が、 ⑴は人々、⑵は入道殿が主語になっており、それぞれ「お~にな は直前に「そこたちに」とあり、受身の対象が書かれていることや、 れる」となることから、 「受身」とわかるはずだ。ひとつだけ意味 ・用法 ⑶が正解。 P OINT 1 可能「~できる」 場合は文脈判断になる。 2 気をつける。 3

➡ 下に打消語を伴って使われる場合が多いの

➡ ➡ 「心情語+る・らる」という公式がすべてだが、こ 「~に」の部分が文中にあ

主語が偉い人。ただし、主語は省

解答

33

サリ ー が足し

想像し

なほ 子は やっぱり

問三  「えさ がポイント。 を表し(ここでは 二つ 組み合わせて考 訳を考えると、 「えさりがたき」=「捨てておく 問四 ロ「なほさうざうしけれ」は、 「なほ」と「さうざうし」 二つを組み合わせると、 「なほさうざうしけれ」=「やはり寂しいことだ」と となって、正解は

たら 寂しい

算してる、

3。

です

かわいい

捨てておけない

さうざうし=寂しい

なほ=やはり

さりがたし=捨てておけない

「放っておくことができない」

「断りにくい」

解答

34

第3講  『大鏡』

P OINT

いのは、 「さうざうし」 ているものは2点減 この箇所では「係り結 と形容詞 已然形になってい ちなみに、ここでの係り結びは完結している だが、 「こそ~已 合は「逆接」 なるという非常に大切なものがあ で、まとめてお 「けれ」の識別

1「

2 「

例 (し) かり/けれ」 は、 「 秋こそさうざうしかり 秋こそ

「さうざう | (し) けれ」 の 「けれ」 は、 シク活用の形

さうざうしけれ

「けれ」 は過去の助

| けれ 。

かり」 までが形容詞の連用形、

(し) けれ」全体で一語。

ということ

35

「こそ~ 「むず (んず) 」  「むず (んず) 」は「むとす」が縮まってできた語なので、基本的に 味はない。 〇 〇 むず むずる むずれ 〇        (んず)  (んずる)   (んずれ) P OINT P OINT →「こそ~已然形、 (下 ※この形が和歌に使われた 例 春の夜の闇はあやなし梅の =春の夜の暗闇はわけがわからない /な/むず」となる。ここでの一つ目のポイントは「むず だろうか、いや隠れはしない。 〜 難関大学でよく出題されるパターンの口語訳問題だ。 ホ「こといできなむず」 上位

こそ ドロ、

以前刑

事だった

けれども

こそ~已然形、 こそ 見え ね 香やは隠るる(古今和歌集)

(下

けれども

、香りまでも隠れる

36

第3講  『大鏡』

1 推量=~だろ 2 意志=~う。~よ 3 適当・当然=~のが ※「むず (んず) 」の平安 ※中世以降、 「む 」にさらに が現れた。これは単に「~だろう」  「むず」 「んず」のように「ず」とい かな。 ここでの「むず」は推量であって、 打消の意 「むず」の直前の「な」が などのように複合助動詞になる場合は、 「強意」の意味になる と~だろう」あるいは「~にちがいない」となる。漢字を当てると ててみると、 「事出で来なむず」となる。ここ 直訳だとわかりにく 力も要求されている。 たもの ので、打消の意味はないのだ。 次のポイントとしては、 は普通、完了の助動詞と言われるものだが、

下に助動詞がついて「なむ」 「なまし」 「ぬべし」 「ぬら

。そこで「なむず」の訳としては、 「きっ

。 「むとす」が縮まって「むず」になっ

37

「事出で へ「侍らであり 「侍ら/で/あり/な 「侍ら」は丁寧の動詞=「 「で」は接続助詞=「~ないで 「あり」はラ変の連用形。 「な」 は本来完了の助動詞だが、 ここ ている。 「連用形+な+む」の形。 「む」は推量の助動詞だが、ここ は適当ない けているので、 「あなたは~」と二人称になってい =「~するのがよい。~して いかがですか」 以上からまずは直訳してみよう。 「侍ら/で/あり/な/む らないのはいかがですか) 」 。これでは何のことかまったくわから めて考えてみよう。 「戯れごと侍らでありなむ」=「戯れごとはござら はござらないのはいかがですか) 」 となって、 「なしにしましょう」とか「なしにしませんか」という感じで訳せれ

≒ 「戯れごとはないのがよいでしょう (戯れごとはなしにしませんか) 」

になる。

「何事か

38

第3講  『大鏡』

問五  「うるはしく/なり/て」はゴロで一発だ。  「うるはし」というのは「整った美」のことを言うので、正

ウ ー ルはし 問六 まず、傍線部を品詞分解してみよう。

こと/やぶれ/侍り/ぬ/べし

配点

配点

5点×3

ロ ① 「やはり」 …2点 ② 「さ ※文末を 「~た」としたものは ホ ① 「事が起こる」という方向のもの… ヘ 方向的に合っているものは幅広く許容す

っかり

整っている

うるはし=整っていて美しい

解答

ロ やはりさ ホ 何事か起こる ヘ なしにしましょう

解答

39

 「ぬ/ となり、 下の り」が付いている 択肢がすべて「~まし 問題は「こと/やぶれ」 ところが中納言が来た たん、 「 れを見た入道殿が中納言に「早く紐を し」と言っ という流れをつかむ。 紐を解いてもらう理由としては、遅れ やっ ように酒で乱れた様子をしてほしいから、というこ と)の状態だと、座がしらけてしまうから早く酔って乱 かったのであり、選択肢では3「せっかくの興がさめてしま の場の雰囲気」であり、 「やぶる」というのはその雰囲気が 1・4・ 5は文脈上関係ないので×。2の「こうした宴でのしき きたり」が「紐を解くこと」とは考えられな ので×。 問七 まず、 「これら」が指示語としてどこを指しているかをはっきりさせよう。こ で判断する必要がある

。中納言が来る前の酒宴は、 「

「こと」が「やぶれ」る、

一人だけしらふ(=酒を飲んでいないこ

、ということが言いた

解答

「これら」

40

第3講  『大鏡』

というのは 指している り、身分の高い道長 とよ」 、と思ったからに 解答としては、 「道長が紐 い道長・左大臣の道長) 」という 問八 全体を把握する問題を解く力をつけることは、上位〜難関大学に で、こうした問題を白紙のまま提出するということのないようにしよ 問七でも見たように、中納言は紐を解かれるにしても 主人 道長に解 う高いプライドの持ち主。まずはこれを一要素目とする。次に注を見ると、こ れたところから帰って来たのであり、本来ならそんな高いプライドを持てないはず

。道長のそうし

解答

配点

配点 6点 ①「道長が紐を解く」という内容………………… ②「主人の」 「左大臣の」 「身分の高い」という要 ※文末に「。 」のないものは1点減点。 主人である道長が中納言の紐を解いた

41

この二 きあがる。ほ

歴史物語最初の作品である『栄花 (華) 物語』は、 長に対する賛美が中心。これは赤染衛門の仕えていた中宮 ると、当然といえる。それに対して『大鏡』 ほうは藤原道長への賛美だけにと 出 典 解 説

 『大鏡』は平安時代に成立した「歴史物語」 鏡 ( 「 鏡 かがみもの 物 」 とも言う) へ続く。中でもこの 『大鏡』 は最高傑 『栄花物語』 『大鏡』 『今鏡』 『水鏡』 『増鏡』 順。

え 『栄花 (華) 物語』 ー い

、 大 『大鏡』 今 『今鏡』 水 『水鏡』 増 『増鏡』 し

解答

配点

配点 6点 ①「プライドを失わない」 ②「左遷されても」 「不遇なと ※文末に「。 」のないものは1点 左遷されてもプラ 「自

赤 あかぞめえもん 染衛門

彰 しょうし 子 の父が藤原道長であったことを考え

が書いたといわれる作品だが、藤原道

栄 え い が 花 物語』からスタートして四

42

第3講  『大鏡』

な視点も持 歳と180歳!)二 継が昔を思い出しながら そしてその二人の話を何人も 時々質問する、 という形 とって とも呼ばれた。 文徳天皇(850年)から後一条天皇 内容は、各 にまつわる話や、有力貴族で に平安史上もっとも権力を握った政治家藤原道長 なお、 四鏡を書かれている内容順に並べると、 『水 また、 『大鏡

と覚えて こう。

大 おおやけのよつぎ 宅世継

と 夏 なつやまのしげき 山繁樹

14代176年を紀伝体で語っている。

30歳)が聞き手を代表して

という超ー老人

43

 『

第3講

問八

問七

問五

問四

問二

問一

ヘ な し に し ま し ょ う 。

ホ 何 事 か 起 こ る に ち が い な い 。

ロ や は り さ び し い こ と だ 。

を 失 わ な い 人 。

左 遷 さ れ て も プ ラ イ ド

言 の 紐 を 解 い た こ と 。

主 人 で あ る 道 長 が 中 納

1

2

問六

問三

1

3

3

問六=

問五=

問三=

問二=

1

4

4

5

4

各2

6

6

30 点

5 5

44

この中納言は、か のをりをりばかりあり のやうにまじろひたまふこ に、入道殿の土御門殿にて御遊 やうのことに権中納言のなきこそ、 ざうしけれ」とのたまはせて、わざと御 きこえさせたまふほど、盃あまたたびになり て、人々乱れたまひて、紐おしや てさぶら はるるに、この中納言参りたまへば、うるは しくなりて、 ゐなほりなどせられければ、殿、 「とく御紐とかせたまへ。ことやぶれ侍りぬ べし」 おほせられければ、かしこまりて逗 留したまふを、公信卿うしろより、 「ときた てまつらむ」とて寄りたまふに、中納言御気 色あしくなりて、 「隆家 不運なる とこそ あれ、そこたちにかやうにせら べき身にも  『大

第3講

ではあるが、あなたたちにこのように馴れ馴れしく扱われるよ うな身ではない」と声を荒げておっしゃっ ので、人々が顔色

この中納言隆家は はお出掛けなさって、以 かったけれど、道長入道殿が なさった時に、 「このようなとき はりさびしいことだ」とおっしゃって りを遣わしなさったその間に、酒杯がどん 酔い乱れなさって、 れましたところに、この中納言隆家殿が参上なさっ んなが 殿が「はやく衿の紐をお解きください。せっかくの興がさめ しまいましょう」とおっしゃったので、 らいなさっていたところ、公信卿が後ろから、 「私が解いて差 し上げま ょう」と言って近寄って来られた で、中納言殿は 気分を害されて、 「私、隆家は

きちんとなって、身なりを正したりなさったので、道長

直衣などの衿の

左遷されるような

紐を解いてくつろいでおら

隆家殿は

不運な身の上

恐縮してため

45

あらず」と 色かはりたまへ うはぐみて、人々の つ、 「こといできなむ とおぼしたり。入道殿うち 「今日は、かやうの戯れごと侍 道長ときたてまつらむ」とて、寄ら て、はらはらとときたてまつらせ ふ 「これらこそ、あるべ ことよ」とて、御気 色なほりたまひて さしおかれつる盃取りた まひて、あま たびめし、常よりも乱れあそ ばせたまひけるさまなど、あらまほ くおは しけり。殿もいみじうぞもてはやしきこえさ せたまひける。

をお変えに て、人々のお顔 にちがいない。大変 お笑いになって、 「今日 私、道長がお解き申し上げよ はらはらと紐をお解 申 上 な ういうやり方こそ 、 本来の客への接 御気分を直しなさって、置かれた杯をお取 ん御酒を召し上がられ、いつもより羽目を外さ に興ぜられた様子など 、理想的な姿でいらっしゃ 殿もたいそう手厚くおもてなし申し上げなさったそうだ

隆家殿は

「こ

46

4 講 『

第4講  『平家物語』

学習テーマ

。  『平家物語』は、鎌倉時代 ので、音便が多用されている。問 話 流れ自体はつかみやす もので ころだ。問八の記述問題は、制限字数内 問五・問六あたりのデキが得点を左右する いに対する答え」という意識を強くもってほしい ここで「太刀、刀を預けた」人物は、土肥の次郎と話のやりとりを 今は捕らわれの身である三位の中将を訪ねるにあたって 「政時」が ことで、太刀と刀を預けたところ。主語はb「政時」 。 いの「見せてげり」は、 「見せ/て/けり の音便形で、政時が中将から預 うとしている場面でのこと。守護の武士 ちに手紙 中身を見せろと言われた政時 問一 あの

「預け/て/けり」 の音便形

「預けてげり」というのは、

琵琶法師による語り (平曲)

合格点は

。 「預けてんげり」 という形でも出てくる。

40点だ!

40点以上はほしいと

した

問題編 16 ページ

47

さい」と うは、 「政 この会話主は、 「局 (=女 人なので、中将の想い人である おは、 「こまごまと書きつづけ た人物。中将は、捕らわれの身になり たいという内容の手紙を書 ている。 問二  「かかる身」というのは、罪人として生け捕りにされた三 話主が、 「政時」→「三位の中将 (傍線部㋑を含む会話) 」→ 「ば」をはさんで主語が変わっているパターン まい」 えの箇所は、

と言って返した場

「げにさとおぼゆる」

に該当している。

解答

あ=b

「苦しう候ふ

い=b

の意。そう思う主体は

う=e

え=c

お=a

48

第4講  『平家物語』

接続助詞「を 問三 ㋒の「この人」というのは、問一のえで考えたように、 「局」に ている話をし、 「さめざめとぞ泣かれける」人なので、c「女房」 。 ㋓の「いくらもある人」というのは、 「三位の中将」と同じ平家の人た くの平家一門の中で三位の中将がよりによって生け捕りにされるなんてひどい を女房は述べている。正解はb。 P OINT A B

已然形+

已然形+

已然形+

未然形+

連体形+

連体形+

ども

AとBで 主語が変わっている可能性が高い

解答

㋒=c

解答

㋓=b

49

問四 ますまい」 会することは「不 自分が三位の中将に面 のもとすゑをも知り候はね 国への合戦のお供を許されなか ×。 問五 守護の武士たちが手紙のやりとりを認め 房への手紙を見せたところ、守護の武士たちは りとりを認めている。次に、女房からの返事に関し しうも候ふまじ(=不都合はあるまい) 」と言って認め 本文にはこれ以外の詳しい理由についての記述がない。そ まず、 の流れから考えられないのが、bとdとe。bのよ では、二度までも手紙を差し出させる意味 ない。 は本文に書か がない。理由がdやeであれば、本文にそうした記述がないのはおかし 残ったaとcは、どちらも十分考えられる内容 いう返事から考えて まず、

「なじか という反語の

aのように「感動し」 「同情を覚えた」ととるのは無理

というの

だが、 「苦しうも候ふまじ(=不都合はあるまい) 」と

「どうし

直前に述べられている

がある。正解はc「男女

消去法

「弓

。その理由とは、

で考えていこう。

解答

50

第4講  『平家物語』

の間にかわ めと泣いているのを政時が偶 を恋い慕っていらっしゃるのだな この単語の意味でズバリcが正解、といきたいところだが、 い 。女房は自らを恥じて会わないわけではないので×。そこで、 「長 をほかに探すと、 では長年人目を恥じてお会いにならなかった女房が、愛す 中将からの手 ず走り出し、 「手づから(=自らの手で) 」手紙を取って読みなさった、とい 問六 はなく、終助詞で詠嘆。 ㋕ 、 ポイントは、 「これ」と を指す をゴロで確認しよう。 年ごろ

㋔は、

。正解はa。 「思ふ」には「恋い慕う 「年ごろ/は/恥ぢ/て/見え/たまは/ぬ

は 長年 続かない

「これ/に/も、/

d「今までは」が意訳

としごろ=長年

として見つかる。内容的にも問題がないので、dが正解。今ま

。ここは、女房が中将の と品詞分解できる。まず重要単語の「年ごろ

cは「わが身を恥じて」の部分がおかし

と品詞分解できる。

「これ」というのは「女房」

解答

㋔=a

解答

㋕=d

51

問七 「すゑの露も 元の雫 (=もとの ばならないことを表し 半の原因部分が×。bは「 漢字をあてると「浮き名を流す」となる。 中将と恋仲であ いううわさ ことを表して のために」 「うきなをながす」 のだ、 という内容を 端的にまとめよう。 問八 では

中将の

「うきな」には、 1の「悪い評判」の意で使われているが

配点

1「悪い評判」の意味と、

。選択肢を見ると、e 配点 7点 ①「罪人である中将」 … ②「恋仲である」 「恋愛関係にある」 ③「うわさ」 「評判 …………………………………………………1点 ※単に 「中将と恋人関係にあるといううわさ。 」としたもの…

解答

罪人である中将と恋仲だとの世間のうわさ。 (二十字)

18~ 20行目の 「 部下のやったこと

2「色恋のうわさ」の二つの意味が

……………………………………………

2の「色恋のうわさ」の意で使われてい

……………………………

解答

。中将の歌

…3点

…3点

…5点

52

第4講  『平家物語』

ほうげん 増 鏡』との関連が文学史でよく問われる。南北朝時代に成立した三つ  『平家物語』 などがある。  『平家物語』は平家一門の栄枯盛衰を中心に描かれ る点で、 『方丈記 や『徒然草』などと共通したテーマが 南北 朝時代に成立した『 出 典 解 説 『保元物語』  「軍記物語」は鎌倉時代から室 朝時代の『太平記』がよく出題される  『平家物語』は琵琶法師による平曲と 便形」が多く使用されている。 「てんげり

史物語『 えておこう。 「

南北 で 増 す 増 す つれ る 鯛 (太)

『平治物語』

『平家物語』 太 平記』については、同時代に成立した兼好法師の随筆『

『太平記』 「やらん」→元の形「

たいへいき

」と覚えておこう!

」 →元の形「てけり」 、

そ 、 そ 『曽我物語』 ーか 義 『義経記』 経 が ぎ け い き

徒 然草』と歴

53

第4講

問八

問七

問六

問五

問四

問三

問二

問一

㋔ a ㋕ d

㋒ c ㋓ b

あ b い b う e え c お a

だ と の 世 間 の う わ さ 。

罪 人 で あ る 中 将 と 恋 仲

4

各3

各3

7

各3

40 点

54

八条の女院に木工 り。ある暮れがた、土 て申しけるは、 「中将殿の 候ひし、木工の右馬允と申す者 八条の女院に兼任の身にて候ふなり も中将殿の御供つかまつるべう候ひつれ も、弓のもとすゑをも知り候はねば、 『ただ なんぢはとまれ』と仰せられ、西国へは御供 つかまつらず候ふ。なじかは苦しかるべき。 御ゆるされ候へかし。夕さり参りて、何とな きことども申してなぐさめまゐらせん」と申 せば、土肥の次郎、 「刀をだにも帯したまは ずは、苦しかるまじ」と申すあひだ、太刀、 刀を預けてげり。政時参りたりければ、三位 の中将これを見たまひて、 「いかに政時か」 、 「さん候ふ」とて、その夜は泊まり、夜もす

第4講『平家

都落ちの際 位の中将はこれを御覧になって、 「なん 政時か」 、 「そうでご ざいます」と言って、その夜は泊まって、一晩中、昔や今のい

八条の女院に木工 土肥の次郎のもとに行っ 以前召し使っておられました ますが、八条 女院にお仕えして したが、弓の上下の区別も知りませんので えはとどまれ』と仰せつかって、西国へはお供 でした。 とは どうして差し支えがありましょうか、差し支えはありま まい。どうかお許 くださいますよう。夕方に参上して、こ というこ もないことなどを話して差し上げてお慰め申 上げ たい」と申し上げたところ、土肥の次郎は、 「刀さえ身 お付 けにならないならば、差し支えはあるまい」と申すので、 は 太刀と刀を預けた。政時が

、西国へも中将殿のお供をいたすつも そのような身ですから、中将殿に会わせていただく

中将のもとに

参上したところ、三

政時

平氏

55

がら、昔、 さめたてまつる 夜もすでに明けけ 帰らんとす。三位の中 ぢして物言ひし女房のゆく ひたまへば、 「いまだ御わたり 内裏にわたらせたまふとこそ承り候 せば、 「さればこそ。 かかる身になりた そのことがつねは忘られぬをば、いかがすべ き」と たまへば、政時、 「やすき御ことに 候ふ。御文賜はつて、 参り候はん」と申せば、 三位の中将、 やがて文を書いてぞ賜はりける。 守護の武士ども 「いかなる御文にて候ふや らん。出だしまゐらせじ」と申す。中将、 「見

政時、内裏へ参りたりけれども、昼 人目 もしげければ、その辺ちかき小屋にたち入り

せよ」とのたまへば、見せてげり。 「苦しう 候ふまじ て取らせけり。

ちに 見せた。

ろいろなこ 夜もすでに明 する。三位の中将は じていた女房の行方はど まだお元気でお過ごしですが いるとお聞きしております」と申 が 「案の定だ。このような捕らわれの身 がいつも忘れられないのを、どうしたらよ るので、政時が、 「簡単なことでございます。 いて、それをもって私が内裏に参上しましょう」と と、三位の中将は、すぐに手紙を書いてお与えになった の武士たちが、 「どのようなお手紙 のでしょうか。 認しなければ 中将が、 「見せよ」とおっしゃるので、

し与えた。 政時は、内裏へ参上したけれども 昼間 人目も多いので、 その辺りに近い小屋に入って日が暮れるまで待ち、たそがれ時

武士たちは

お出し申し上げるわけにはいきません」と申す。

「差し支えはないだろう」と言って返

政時はお手紙を武士た

三位の中将

それを確

56

て日を待ち て、 局の下り口 この人の声とおぼし なかに、三位の中将殿 て、 大路をわたされたまふ 都を焼きたる罪のむくひ』と言 将もさぞ言はれし。 『わが心よりお 焼かねども、悪党おほかりしかば、手に 火を放ちて、おほくの堂舎を焼きはらふ。す ゑの露もとの雫となるなれば、重衡一人の罪 業にこそならんずらめ』と言ひしが げにさ とおぼゆる」とかきくどき、さめざめとぞ泣 かれける。政時、 「これに 思ひたまひける ものを」とあはれにおぼえて、 「もの申さん」 と言へば、 「いづくより」と問ひたまふ。 「三

位中将殿より御文の候ふ」と申す。年ごろは 恥ぢて見えたまはぬ女房の、走り出で、手づ から取つ たまへば、 「西国より捕はれて

にまぎれて いていたところ 引き回されなさるのを、 報いだ』と言い合っている。 た。 『自分の考えから思いついて たので、手に手に火を放って、多くの の露が集まって木の幹の雫となるというか になるであろう』と言ったのが、な ほどその ます」とくどくどと繰り返して言い、さめざめとお た。政時は、 「この としみじみと気の毒に思われて、 「もしご免くだ い」と言 と、 「どこから」とお尋ねになる。 「三位の中将殿よりお手紙が

国から捕らわれてきた様子、今日 明日とも知れない我が身の 行方」と、こまごまと書き続けて、末尾に一首 歌があった。 なみだ川

一門が ございます」と申す。長年人目を恥じ お会いにならない女房 が、走り出て、自分の手で

いる中で、三位の中

女房も ・・・ =つらい涙を流し、その涙の川に浮くような

女房の

女房の

、中将殿を

その手紙を

局の裏口の 声と思われて、

恋い慕っておられるのだな」

取ってご覧になると、 「西

平家の

57

しうも候ふまじ」とて参らする。中将、文を 見たまひて、いよいよ思ひや増さり け ん、土肥の次郎に向かひてのたまひけるは、 「年ごろあひ知りたる女房に対面して、申し

の水屑とともになりなん 政時持ちて参りたり。 また守護の武士ども、 「見まゐらせん」と申せば、見せてげり。 「苦

ありしあり 行くへ」と、こ 一首の歌ありける。 なみだ川うきなを 一たびの逢ふ瀬ともがな 女房、文をふところにひ 入れ ことものたまはず。ただ泣くよりほ ぞなき。ややありて御返事を書きたまふ 苦しくおぼつかなくて、二年を送りつる心の うちを書きたまひて、 君ゆゑにわれもうきなをながすともそこ

悪い評判を いものだと思い 女房は、手紙をふと 泣いてばかりいた。しば く不安な状態で、二年を過ご 君ゆゑに たとしても、あなたとと に水底の水 政時は、 護している武士たちは、 「お手紙を拝見しよう 手紙を見せた。 「差し支えもございますまい」と言 中将に 差し上げる。中将は、手紙をご覧になって、ますます思 いがましたのだろうか、土肥の次郎に向かっておっしゃった とには、 「長年親しくしていた女房に対面して、お話し申した いこ があるのは、どうしたらよいか」とおっ ゃるので、実 平は情け深い者で、 「本当に、女房などにお会いになるとのこ とでいらっしゃいますなら、 何の差し支えがございましょうか」 と言ってお許し申し上げる。中将は、非常にお喜びになって、 人の車を借りて

女房の手紙を

女房を迎えに

・・・ =あなたのために、私もよくない

持って

参上させなさったところ、 女房は、

中将のもとへ

参上した。また守

手紙を

58

たきことあ ば、実平なさけ 房なんどの御ことに には、何かは苦しう候 まつる。中将、なのめなら の車を借りて参らせたまへば、 のも取りあへず、 いそぎ乗りてぞお

取るものも

59

5 講 『

学習テーマ

た清少納言の『枕草子』 ( せて三大随筆と呼ぶ場合がある。  『方丈記』のキーワードとしては 貴族の時代が終わり、鎌倉武士が台頭する 時の都のすさんだ様子や 天変地異の様子など 今回 テーマ問題としては 問七の記述問題と問 うした記述問題や現代語訳で白紙という訳にはいかない う。 合格点は 問一 アは、3「五穀」 。 「五穀」とは、人間の主食となる代表的な五種の 粟(あわ) ・黍(きび) (または稗(ひえ) ) ・豆」をいう。 イは、5「際限」 。 「際限もあるべからず」=「きりがないに違いない」 。

 『 方 ほうじょうき 丈記 』は、

36点だ!

鴨 かものちょうめい 長明 の書いた随筆。鎌倉時代の

11C初) 、南北朝時代に成立した

「仏教的無常観」

があげられる。鴨長明の生きた時代は

13C前)に成立した。平安時

解答

『方丈記』にも当

14C前)とあわ

ア=3

問題編 23 ページ

イ=5

60

第5講  『方丈記』

P OINT

問二 に気が付くかど 対句 対句(法)は主に漢詩・漢 似している二つの句を対照的に並 例として、有名な『平家物語』の冒頭 祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。 ⇔ ⇔ ⇔ ⇔ 沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。 多用し、漢文の語法、歌語、仏教用語を織り交ぜている。 実は、ここは次のような対句になっている  『方丈記』は、漢字と仮名の混ざった

①の「ぞめ

和 わかんこんこうぶん 漢混淆文

で書かれている。表現の特徴として、対句や詠嘆を

61

 「なべて」は副詞で「

「並一通りではない」

鍋 っ て

夏植うる 「あり ⇔ なし」 。問題の「ぞめき」に対 あったのに、凶作のため冬には収 「ぞめき」は収穫 を祝うこと、つまりイ 「にぎわい」 とわかる。ちなみに「ぞめき」は「騒 字を当てられれば一発で正解はわかる。 また、この箇所の解法としては、 第2講で学んだ「て」を挟むと相互ヒント関係 、という視点でも解 ける。 ②の「なべてならぬ」は、品詞分解する 「なべて/ いとなみ あり て ⇔ 対句 ( 「て」を挟 秋刈り、冬収む ここで対句となっている ぞめき はなし ⇔ 秋・冬」 「植うる ⇔ 刈り・収むる」 「いとなみ ⇔ ぞめき」

③ さらに」 は副詞で、 下に打消語を伴って全否定になる。ここでは下に たく~ない」となっているので、ホの「一向に が正 。全否定の副詞をまとめ

普通 すべ

っ て く

となるので、ホの「なみなみではない」が正解。

1普通、

なべて=

2すべて」という意味だが、

1普通

2すべて

「なべてならず」という慣用句で用いると

62

第5講  『方丈記』

P OINT

「AでさえBなのだから、

全否定の副詞 たえて ※ 「ず」 は活用するので注意。また、 打消の意味をもつ接続助 ④「いはむや」は、漢文の句法でよく出てくるもので、 「Aすら~ 抑揚形を表す。訳としては、 はむや」の訳に当たるハの「まして」が正解。 つやつや さらに すべて つゆ おほかた あへて

まったく

つやつや

~ ︸

の 皿に すべ

ついて

なし

打消語 =まったく~ (ない) ず

まじ

ない や。それでも

っ て つゆ を おほかた

この部分の訳は、下に来る打消語によっ ➡

あへて

ましてや

たえて

こぼしちまった、

解答

CはなおさらBだ」となる。ここでは 「い

る私

①=イ

②=ホ

いはむや

③=ホ

Cをや」という

④=ハ

63

問三 まず「やは 内容的に否定にな 反語の訳は「~だろうか、 分は省略されることが多い。た 次に、限定の副助詞「のみ」の訳と ニの三つ。問題は「操もつくりあへむ」の もはや体裁にかまってなんていられない、とい うか」が正解。ハの「身持ち正しく付き合って」 、 関係なので×。 Bは、 できず、さまざまな財宝を片っ端から売るしかなくなっている というのは ハの「安値で投げ売りするが」ということを表してい 「捨て値で売る」と今でも言ったりする。 Cも、 「目見立つる人なし」という文脈なので、 「目見立つ人」というのは、ホ「注目

Aを品詞分

Aから

Aの流れを受けている

Bへの流れを受けている

「さ/の ことに注意してほ

。飢饉が京にまで及ぶにいたって、京の人たちは体裁をつく

。さまざまの財宝を片っ端から安値で投売りしたものの、誰も

「~できよう

となる。

64

第5講  『方丈記』

 「

人」のこと ているのだ。 買ってくれないというくらい 饉の中にあっては、お金よりも食べ物の が母の『乳』を吸ったまま」で倒れている様子だととらえられる。 に、母親の命はすでに尽きているのだが、子ども それを知らないまま、 いる様子を表している。したがって、 「 なり、 問四 う状況を表している の部分をそのまま口語訳してみると、 「また、 たまま倒れているものなどもあ た」と る。 「幼い

問五  「また、

傍線部

問三の

Eの F尽きたる知らずして」の部分は、

E=母、

Gが Hを吸ったまま」の部分のほうがわかりやすい

A・ B・ Cで見たように、当時の京 。選択肢ではホの「金の値打ちを低く Dの「金を軽くし、粟を重くす」と

Eの F尽きたる知らずして、いとけなき

F=命。

「尽く」がヒント Eの Fが尽きた」というのは「 『母』の『命』が尽きた」ことに

Eの Fが尽きたのを知らないで、幼い

Gのなほ

解答

。前後の文脈から、ここは「幼い『子ども』

。直前にも「親ぞ先立ちける」とあるよう

Hを吸ひつつ伏せるなどもありけり」

E=母

解答

F=命

A=ロ

G=子、

Gがやはり

G=子

B=ハ

解答

H=乳。

Hを吸っ

H=乳

C=ホ

65

問六 あくる/年/は、 て、/まさざまに、/ =翌年は、何とか立ち直る はだしくなっていくばかりで、 ここまで訳せれば、 現代文の問題と 状況はもっとひどくなって ち直る兆候」が正解。形容動詞の連用形「まさ はだしいさま」を意味する。 問七 六十字の説明問題。古文の記述問題は、現代文ほど厳密な できれば、それをまとめるだけで十分合格点が取れる。ここで 傍線部の直前に指示語があれば、まずはその指示語が指している部分を ここでは、傍線部の直前の指示語「かかる」が指している部分をまとめればよ 傍線部

(甲)を含む一

「 『立ち直る』形跡がない」 、 と補って読

だ。選択肢では、 ハの「立

解答

66

第5講  『方丈記』

ということ 1 頼むかたな =当てのない人は すべき方なき者、古 =生活がどうしようもなく 薪としたのである。 この二つをまとめて六十字以内にし ていこう。 2

配点 ※文末が「こと」でないものは1点減点。 ※「、 」 「。 」は必ず一マス取ること。取っていないものは1点減点。 解答 自分の家を壊して薪にして市に出て売ったり、 て割り砕き、薪とすること。 (五十四字) 配点 8点 ①「自分の家を壊して薪にして市に出て売ったり」………… ②「古寺に行って仏像を盗み」…………………………… 2 ③「お堂の仏具を壊して割り砕き、薪とする」 ※最後の「薪とする」がないものは

1点減点。

3点

3点

お堂の仏具を壊し

67

問八  「言葉 品詞分解する クから行こう。 サリ ー が足し 「捨てておけない妻」というの そして、この問題の最大のポイン 「さりがたき」 を掛けて訳すところが て現代語訳せよ」という問題の意図はここ てておけない夫を持つ女(妻) 」となる。

問九 aの「るれ」を含む箇所、 「なべてならぬ法ども行は 修法が行わ

『れ』

たが」と訳せるので、ハ「受身の助動詞」が正解。 解答

算してる、

「さりがたき

配点

①「捨てておけない妻を持つ男 (夫) 」……………………… ②「捨てておけない夫を持つ女 (妻) 」…… ※「捨てておけない」は「別れられない」 「放っておけない」等で 捨てておけない妻を持つ男(夫)や、捨てておけな

捨てておけない

。同時に 「者」 も二回訳出する必要が

さりがたし=捨てておけない

『るれ』

「・」があることによって、 「夫

となるので、

ど」を訳すと、 「なみなみではない御

… ……………………2点

。どちらの訳でもOKだ。

… 2点

68

第5講  『方丈記』

P OINT

bの「ら が多い」となる cの「ぬれ」はひ 下二段動詞 たづぬ」の dの「れる」は難しい。 「 してほしい。 「エ段+ら・り・る・れ」は完 完了の助動詞「り」は助動詞の中で、識別 にくいものの一つだ。 (命令形という説もある)か、 と覚える。 ここでは

四段の已然形

サ変の未然形

エ 段

四段動詞の「定まる」の已然形「定まれ」に、完了の助動詞「り」の連体形「る」

る =「り」の連体形 れ =「り」の已然形・命令

ら =「り」の未然形 り =「り」の連用形・終止形

サ 変動詞の

『られ』

未 然形に付く。ゴロでは「 『り』かちゃんサ未四已(さみしい) 」

ぬ事多かり

『ることが

四 段動詞の

已 然形

ない事

69

「定まれ eの「られ 助動詞」とわかる。 しているのは、過去の助動詞「き」の ちなみに「けり」には「詠嘆」= ~た で使われる。 問十一 しておこう。 つまり間接的な過去

為を 『なさっ』 問十 同じ過去の助動詞でも、

正解は「鴨長明」 。詳しくは「出典解説」のところを

となって た」と訳せる。主

を表す。筆者が自分の体験した出

「き」は自分の体験した直接の

解答

a=ハ

『られ』

を表し、

b=ホ

ける」を訳す

「けり」は人づての伝聞過去、

c=イ

d=ロ

解答

解答

e=ニ

鴨長明

70

第5講  『方丈記』

歌論の『無名抄』には「 『発心集』には、さまざまな出家の機縁が書 代として大切で、 『 を同時代人 押さえておきたい。 また、兼好法師の書いた随筆『徒然草』よりも百年以上早く 認しておこう。 出 典 解 説

論『 無 むみょうぞうし 名草子

随筆 『 文学史問題としては三点

カ 鴨長明 モ ン! 方 『方丈記』 丈 で 無 『無名抄』 名 の 発 『発心集』 心 、 い 1212年頃 ーにいーに

方 ほうじょうき 丈記 』 を書いた

』の藤原

千 せんざい 載 和歌集』の藤原

俊 としなりのむすめ 成女 、私家集『

鴨 かものちょうめい 長明 は、 他にも歌論 『 幽 ゆうげん 玄 」について述べている部分があり、注目

俊 としなり 成 、 『新古今和歌集』の藤原

山 さんかしゅう 家集 』の 西 さいぎょう 行 、私家集『

無 むみょうしょう 名抄 』 、 仏教説話 『

金 きんかい 槐 和歌集』の

定 さだいえ 家 (俊成の息子) 、物語評

発 ほっしんしゅう 心集 』 を書いているので

源 みなもとのさねとも 実朝 、など

71

第5講

問十

問九

問八

問七

問五

問三

問一

a ハ b ホ c イ d ロ e ニ

き 、 薪 と す る こ と 。

て 売 っ た り 、 古 寺 に 行 っ て 仏 像 を

盗 み 、 お 堂 の 仏 具 を 壊 し て 割 り 砕

自 分 の 家 を 壊 し て 薪 に し て 市 に 出

E

A

捨てておけない妻を持つ男(夫)や、捨 てておけない夫を持つ女(妻)

3

問十一

F

B

5

鴨長明

G

問二

C

① イ ② ホ ③ ホ ④ ハ

H

問四

問十一

問十=

問六

3

3

各1

問三=各3 問四=3

問五=各1 問六=3

4

問一=各2 問二=各1

36 点

8

72

また、養和のころ ず。二年があひだ、世 しき事侍りき。或いは春夏 大風、洪水など、よからぬ事ど て、五穀ことごとくならず。夏植う みありて、秋刈り、冬収むるぞめきはな これによりて、国々の民、或いは地をすてて 境を出で、或いは家を忘れて山に住む。さま ざまのお祈りはじまりて、なべてならぬ法ど も行はるれど、さらにそのしるしなし。京の ならひ、何わざにつけても みな もとは田 舎をこそ頼めるに、 絶えて上るものなければ、 さのみやは操もつくりあへむ。 念じわびつつ、 さまざまの財物かたはしより捨つるがごとく すれども、さらに目見立つる人なし。たまた ま換ふるものは、金を軽くし、粟を重くす。

第5講『方丈

また、養和年間の いない。二年間、 世の中 春夏が日照りだったり、ある ないこと 続いて、五穀がみんな 行事だけがあって、秋に刈り入れ、冬 い。これによって、 諸国の農民は、 土地を あるいは家を捨てて山に住んだりした。 祈祷が始まって、なみなみではない御修法などがな 一向にその効果がない。京の習慣では、何をするにつけ みな、もとは田舎を頼りにしているのに、まったく田舎から るものがないので、どうし そう体裁ばかりつくろうことがで きようか、いや、できない。心の中では早く立ち直ればいいと 願いつつ、いろいろな財物を片端から捨てるよう 安値で投げ 売りするが、いっこうに注目して高値で買ってくれる人も な い。たまたま交換するものも、金銭のほうを軽く見て、穀物の ほうを高値で扱う。乞食が路傍 多くなり、嘆き悲しむ声が耳

朝廷では

いろいろな御

73

乞食、路の 満てり。前の年 暮れぬ。あくる年は ほどに、あまりさへ、 ざまに、あとかたなし。 世人みな飢ゑ死にければ、日 まりゆくさま、 少水の魚のたとへに はてには笠うち着、足ひき包み、よろし したる者、ひたすらに家ごとに乞ひ歩く。か くわびしれたる者どもの、歩くかと見れば、 すなはち倒れ伏しぬ。築地のつら、道のほと りに、飢ゑ死ぬる者のたぐひ、数も知らず。 取り捨つるわざも知らねば、くさき香世界に みち満ちて、変はりゆくかたちありさま、目 もあてられぬ事多かり。いはむや 河原など には、馬車の行く交ふ道だにな 。

あやしき賤・山がつも、力尽きて、薪さへ 乏しくなりゆけば、頼むかたなき人は、自ら

てこなくなってきたので、頼る当てのない人は、自分の家を壊 して、薪を市に出 売る。一人が持って出た薪の値段は、一日 の命を支える分にさえならないという。不思議なことには、薪 の中に赤い丹がつき、箔 どが所々 見える木が混じっていた

に満ちる。 年は、なんとか に、その上さらに、 世間の人がみ 飢え死 さまは、少水の魚のたとえと 死にかかっている魚さながらであ 足をくるみ、かなり立派な格好をした 糧を乞うて歩くのである。このように落ち が、歩いているかと思うと、すぐさま倒れて 地沿いに、路傍に、餓死者のたぐいは、無数である り片付けようも思いつかないから、くさい臭いが辺りに て、腐敗していく様子は、目もあてられないことが多い。ま て、河原などには、馬や車の通行する道さえな 。 卑賤な者・ 木こりたちも、 力が尽きて、薪までも不足して持っ

死骸の

74

が家をこぼ ちて出でたる価 とぞ。あやしき事は 箔など所々に見ゆる木 たづぬれば、すべき方なき 仏を盗み、堂のものの具を破り 砕けるなり。濁悪世にしも生まれ合 かる心憂きわざをなむ見侍りし。 いとあはれなる事も侍りき さりが き妻 夫持ちたる者は、その思ひまさりて深き者、 必ず、先立ちて死ぬ。 の故は、わが身は次 にして、人をいたはしく思ふあひだに、稀々 得たる食ひ物をも、 かれに譲るによりてなり。 されば、親子ある者は 定まれる事にて、親 ぞ先立ちける。また、母の命尽きたる知らず して、いとけなき子のなほ乳を吸ひつつ伏せ るなどもありけり。 仁和寺に隆暁法印といふ人、かくしつつ数

のだが、尋 古寺に行って仏 たのである。こうい ようなつらい行為を見て たいそう哀れなこともござ られない夫を持った者は、愛情が ぬ。その理由は、自分のことは二の次 相だと思うために、まれに手に入れた食物 である。だから、親子である者は、決まりきっ 先に死んだ。また、母の命が尽きた を知らないで それでもやはり乳房に吸いついたまま倒れているのなど た。 仁和寺の隆暁法印という人が このようにして無数の人が死 んだことを悲しん 、その死者の頭を見るたび 額に阿の字を 書いて、 仏縁に結ばせる行為をなさった。人数を知ろうとして、 四月と五月の二か月間を数えたところ、京のうち一条から南、 九条から北、京極からは西、 朱雀からは東の路傍の死人の頭が、 全部で四万二千三百余りもあった。まして、その

生活が

どうしよう

四月五月の

75

も知らず、 見ゆるごとに額 むるわざをなむせら て、四五両月を数へた 条よりは南、九条よりは北 朱雀よりは東の路のほとりなる 四万二千三百余りなむありける。い その前後に死ぬる者多く、また、河原、 西の京、 もろもろの辺地などを加へていはば 際限もあるべからず。いかにいはむや、七道 諸国をや。崇徳院の御位の時、長承のころと か、かかるためしありけりと聞けど、その世 のありさまは知らず、まのあたりめづらか りし事な 。

後に死んだ の他の郊外まで して、畿外の諸国ま か。崇徳院の御在位のと な例があったと聞くが、その たこのこと(=養和 飢饉)は、 ない。

76

「おもほ 講 『 6

第6講  『毎月抄』

学習テーマ 「おぼゆ」 は、 動詞 「思ふ」 「おぼ

「おぼゆ」 の解釈がポイント。

b「わざと」 技問 う、 わざわざ

問一 a「おぼえ侍る」 は、 ここでは4 「感じられます」 が正解。 可能・自発」 の意味をもつ 「ゆ」 の付いた もはゆ」 が、

出典の『 原定家と言えば『新古今和歌集』 でもある。今回のテーマ問題は、問二 的確に押さえて、傍線部の解釈問題を正 はなく、現代文の力も必要な難問 で、頑張ってチャレンジしよう。

毎 まいげつしょう 月抄 』は藤原

本格的な

定 さだいえ 家 の歌論書で、 「

。さすが上位〜難関大学の問題、といえる難 合格点は

わざと=

30点だ!

1わざわざ

有 うしんたい 心 体 」を最もすぐれた歌体として

2本格的に

千 せんざい 載 和歌集』の撰者、藤原

問六は古文単独の問題で

となったもの。

上代の助動詞で 「受身・

俊 としなり 成 の息子

問題編 30 ページ

77

P OINT

 「わざ かからないよ かけだ。 「取り立 意味はない。 問二 今回のテーマ問題第一弾だ。 に押さえて正解に至ろう。傍線部 /申す/べく/は、/歌/毎/に/も まず助動詞に注目すると、 選択肢で「む」を「婉曲」=「~ような」と 「む (ん) 」の婉曲の用法 む (ん)+体言 (※助詞)=婉曲「~ような」 ∥連体形 ※「む (ん) 」の下が「助詞」で、特 「むに・むには・むは・むも・む は「仮定」の用法となり、 「~としたら、それは~」と訳す。

「わざわざ」を意訳し

「む」が「婉曲」=「~ような」

A「かから/む/歌/を/秀逸/ となっているところが第一のポイント。

解答

3の「故意 2「取り立てて

a=4

b=5

78

第6講  『毎月抄』

P OINT

「べし」の七つの意味

次に の部分が「歌で れだけで決めるには 「べくは」の形は、 「べし+ ※「べし」は多くの意味があるの ※「べくんば 「べくば」も同じ意味  「べくは」が仮定条件であり、 「 『べし』 4だけが「申し上げてよいのならば」と、 「べし」 の選択肢は、1「心得ておけば」 、2「申すべきであ いて」となっていて、どれも「べし+仮定条件」の訳を満

Bも品詞分解から入ろう。

す 推量 い 意志 か 可能 ゴロゴロ

副助詞「だ

「歌でさえ」な

B「けしき/は/さるから/心/も/そぞろか/ぬ/歌/に/て/侍り」

と 当然 め 命令 て 適当 よ 予定

で使われて

してみると、

79

注目の ぞろなり」 事がある方向にひ した語で、 「そわそわ 意味になる。選択肢2が「 直前に「おもし く、かすか の 名詞「けしき」は、ここでは「風 問三 波線部の理由としては、直前の「まことに歌 その内容としては、1「歌の道の正道は自分で知る というもの。したがって、正解としては4。 問四 前講のポイントでも取り上げたが、完了の助動詞「り」に関 れ/る」 =四段動詞の已然形+完了の助動詞 「り」 の連体形 段」に付くので選択肢を見ると、ここでは1・ 3・ 4の三つがそれに該 正解は一つのはずなので(複数選んでもよい、 とは書いていないので) 、 解とわかる。

。それを「ず」で打ち

動詞「そぞろく」

、 の形になっている。完了の助動詞 「り」 は 「エ

。その意味でも、選択肢では

解答

A=4

解答

B=2

2が正

「余

80

第6講  『毎月抄』

問六

完了の助動 1 =「~ 存続=「~てい 本文の傍線部㋐の「る」 は ている」と「存続」になっている ている。 1 は、 「全く短慮である」が×。5行目の「更に短 至らない考えの者が、どれが正しいなどとはまったく いう内容だ。 以下の内容と合致する。 つけている人を見るような心地がする歌だ」と書いてある。 は「ことばに技巧が 」という意味。 歌が詠めるのであって、 「自然に歌を詠むように心がけて稽古すれば」で テーマ問題第二弾! 問われている内容が、本文のどこに書かれているかをつか 2 問五

内容合致問題は「消去法で解く」というパタ

2 は、6行目の「我が心の中にて」以下の内容と合致する。

4 は、全体が×。本文には「秀逸な歌は、まるで心がまっすぐで

6 は、ひっかけになっている。稽古したあかつきに自然にいい

「存続」

の意で用いられている。選択

で解いていこう。

5 は、

「教養がなくても」が×。 「無文なる」

3 は、9行目の「まづ、歌に」

解答

解答

2・3

81

ポイント 澄みわたれる 出だしたる中に、 は、 「案性澄みわたれ としてよみ出だしたる」の 箇条書きにしてみよう。 案性澄みわたれる中 り 今とかくもてあつかふ風情にては にはかに傍らよりやすやすとしてよみ これらをまとめる 、 「精神が澄み切ってい となる。 1 2 3

①「精神が澄み切っている」という内容…

解答

②「技巧を凝らしていない」という内容… ③「すらすら歌が詠める」と う内容……

配点

配点

精神が澄み切っていて技巧を凝らさず、すらすら歌が詠

精神が澄み切っていること

10点

≒ あれこれ技巧を凝らしている趣向がな

突然別にすらすらと詠みだすこと

……

……

………………………………

13~ 14行目の「

3点

3点

4点

82

第6講  『毎月抄』

父の藤原俊成は、 歌論書『 というのは、言外に漂う奥深い情趣美のことを言 けり浦の て、ものわびしい余情のある「 出典の『毎月抄』 中で、藤原定家は「有心体」を最もすぐ 書いた漢文日記の『 出 典 解 説

出典の『 和歌集』の撰者、藤原

初め(

俊 藤原俊成 成 君の 苫 と ま や 屋 の秋の夕暮れ」という「

12~ 13C)に活躍した。

毎 まいげつしょう 月抄 』は、 『新古今和歌

明 めいげつき 月記 』も、文学史問題で出るので要注意。

『千載和歌集』

洗 剤 、

俊 としなり 成 の息子。この俊成・定家

古 こらいふうていしょう 来風体抄

有 うしんたい 心 体 」を具体化した。

『新古今和歌集』

新 三 さんせき 夕 の和歌」の一つを詠み、父の「幽玄」をさらに一歩進 』で「 幽 ゆうげん 玄 」という歌の理念を提唱したことで有名。 「

定 藤原定家 価

定 さだいえ 家 の歌論書。藤原定家

紅 も み じ 葉 もなかり

千 せんざい 載

83

第6講

問六

問五

問四

問三

問二

問一

さ ず 、 す ら す ら 歌 が 詠 め る 心 境 。

精 神 が 澄 み 切 っ て い て 技 巧 を 凝 ら

2

1

4

4

4

5

5

3

2

5

5

5

5

30 点

10

84

まことに宜しき歌 すべきやらむ。 まことに歌の中道はただ 侍り。さらに人のこれこそと申 らず候ふ。家々に伝へたるすぢ、秀 ちまちなり。俊恵は、 「ただ歌は幼かれ 申して、やがて我が歌にもその姿の歌を秀逸 とは思ひたり気に候ひけるとか 。俊頼は、 えもいはず長高きを宜しと申しためり。その 外品々に申しかへてぞ侍る。更に短慮及び難 くぞおぼえ侍る。何も知れば強ち大事になり 侍る習ひなれども、殊にこの道はさとおぼえ て侍り。我が心の中にて歌の昔今を思ひ合は せてみるに、古よりも当時 殊の外によむ歌 毎にわろくのみおぼえて、それかと思ひて出 だすは稀にぞ侍る。仰げばいよいよ高き事に

第6講『毎月

本当によい和歌の きなのでしょうか。 本当に和歌の道における正 です。決して他の人がこれこそと です。 いての理解は、 まちまちです。俊恵は、 「 と申して、そのまま自分の和歌についても の の和歌を秀逸だと思っていたふしがありましたとか す。俊頼は、何ともいえず格調の高い をよ と申して うです。そのほかの歌人たちはいろいろに違うことを て ます。 者が、どれが正しいなどとは思いつくことはできないことだと 感じられます。何事も われるのが習いですが、ことにこの

われます。私の心の中で、 和歌の昔と今とを思い比べてみると、 昔よりも現代は詠む歌はど も格別によくなく思われるばかり

こういろいろな意見があると

歌道の

家々に伝えている言い伝え、秀逸の和

その道を

知るとむやみにそれが大事に思

、とうてい至らない考えの

和歌の

道はそのようだと思

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侍るめりと て侍れ。 まづ、歌に秀逸の 万機をもぬけて物に滞 のいづれの体とも見えずし を皆さしはさめるやうにおぼえ びて心直く衣冠正しき人を見る心地 侍るべし。 常に人の秀逸の体と心得て侍 無文なる歌のさはさはとよみ 心遅れ、た けあるのみ申し習ひて侍る。それは不覚の事 にて候ふ。かからむ歌を秀逸とだに申すべく は、歌毎にもよみぬべくぞ侍る。詠吟事極ま り案性澄みわたれる中より、今とかくもてあ つかふ風情にてはなくて、にはかに傍らより やすやすとしてよみ出だしたる中に、いかに も秀逸は侍るべ 、その歌は、まづ心深く、 長高く、巧みに、 詞の外まで余れ やうにて、 姿気高く、詞なべて続け難きがしか やすら

れば秀逸と申し上げてよいのならば、詠む歌ごと 秀逸な歌 詠むことができるにちがいありません。和歌に詠む事柄をぎり ぎりまで工夫し、その精神の働きがすっかり澄み切っている心 の中から、当面あれこれ工夫している構想ではなくて、突然別 にすらすらと詠み出した歌の中に、いかにも秀逸な和歌はある

で、これは 昔を 仰ぎ見ますと、 ぐれた先人たちの今 まず、和歌において秀 みぶりは、歌のあらゆる素材 い和歌で、 この十種の体の中のど しかもその十体の特性をすべて含んで 情が漂い、心が真っすぐで、衣冠を正しく ような心地がする歌であるにちがいありません 中の人がふつう秀逸の体と理解しています和歌は、 がない和歌で、さっぱりと詠んで、歌境の深さが十分 声調 のびやかなだけの和歌を申すのが習わしのようです。 ういう

認識は

心得違いのことです。そのような歌でありさえす

ところが

世の

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かに聞ゆる る景趣たち添ひ さるから心もそぞろ ばわざとよまむとすべ り候へば、 自然によみ出だ

のでしょう 巧みであって、 あって、全体の姿が ものであって、しかもは があり、 微妙な景趣が備わっ ではなく、風情のある様子が目に も落ち着いて感じられるような歌でご て詠 うとしてはいけない。稽古にさえ心 に詠み出されることなのです。

87

7 講 『

学習テーマ

 『 落 おちくぼ 窪 物語』は平安時代に成立し で作られたものだ。内容として 『住吉物語』も同様に「継子いじ 今回のテーマは問六 内容合致問題 題されている。 『古文文法ゴロゴ』にも書 くない。 助動詞や同形品詞識別は制覇している人でも、 人はぜひここで一度立ち止まって、助詞の体系的な 全問正解をねらいたいところだ。 ここでは選択肢4を除いて「類推」=「~さえ」の訳になっている。4には副 に作られた 今回の最初のポイントは、副助詞「だに」の解釈。 ダニ に せめて 問一 傍線部アを品詞分解すると、

もらう

だけでも

合格点は

「仕うまつる/御達/の/数/に/だに/おぼさ/ず」

、 さえ は幸せ

継 ま ま こ 子 いじめ」の物語になっている。

40点だ!

だに

2(類推)~さえ(まして~)

1(最小限)せめて~だけでも

つ 津保 物語』に次い ほ

ので、不安な

となる。

問題編 36 ページ

88

第7講  『落窪物語』

る口語訳が 次に「おぼさ 1の「入れようと を尊敬ととればOKで、 これは謙譲語で「お仕えする もなき御むすめ(=落窪の君) 」 「仕うまつる御達」とは「お仕えして 内容的に 、直前の「名をつけむとすれば」を受けていて、現在 君に、 「式部」 や 「中将」 などのような使用人レベルの名前を付けよ 夫(=中納言)に 「つつみ給ひて」= 「遠慮なさって」付けるわけにもい 選択肢では「中納言」を主語とする3、 「男君や女君たち」を主語とする4は 「式部・中将」というのが使用人レベルの呼称 問二  「さすがに」のゴロから確認しよう。 さすがに このゴロからわかるように、 てもやはり」と訳す

忍者 とはいってもやはり

ので、正解は

「さすがに」 というのは、 予想していたことに反する意を

1とズバリ決まる。

さすがに=そうはいってもやはり

であり、

2の「自分の子である」は×。

のことを意味している。

「五の君・六の君」は本妻の子と同じレベルにな

2の「思われない」は

「母

3。内容的には、

解答

89

る 、という 時間・空間の起点「 4 手段・方法「~で 5 即時「~するとすぐに」 で使われている。したがって、 「より」を「くらべて」や「より」 なり、正解は3となる。上位〜難関大学になると「助詞」についての細 で、助詞の知識が不足している人は 問三 なる。 選択肢を比較すると、 「 の選択肢もそれに当た 訳があ う訳がないので×。残っ 選択肢 意味の違いにある。 格助詞「より」の用法。 1 比較「~ 2 ここでは誰かと比較しているのではなく、

傍線部ウを品詞

「ちご

『古文文法ゴロゴ』

/ より / らうたく

「ちごの時から」という時間の起点を表す「から」の意味

で助詞をマスターしてほしい。

/ や / おぼし

/ つか / ず / なり / に / けむ」

4だけが「~ない」とい

解答

解答

90

第7講  『落窪物語』

問四 /なに/を/役 問一と同じく、 副 残りの三つは、類推「~ らい」 、3の「程度」はいい ※上位〜難関大学は「 を受けていると取らないようにしよう。継母としては「これく 落窪の君を責めているわけで、2が正解。 ここで問一 「だに」とこの問題で出てきた「ばかり」も併せて、副助 副助詞「ばかり」の用法。 1 程度=~くらい。~程。 限定=~だけ。 2 次に、 ており、

まず、 傍

指示語の「か」が指している内容 3のように「一晩寝ない程度」と限定しているわけではない

「か/ばか

を検討すると、

となる。

直前の「いささかおそき時は」の部分を受け

。一文前の「夜も寝もねず縫はす」

解答

91

P OINT

副助詞  「すら」は上代に多く用いられたが、中古以後は類推の意は 限定の用法が多い。 「など」は例示・婉曲・引用で用いられ。特に 「さへ」は「添加」の意味が大切で、 「 (その上)~までも」と訳す。 以後の用法。 るところがポイント。 「し」を取っても文意が変わらなければ、 「し は強意の 問四で見たように、 程度と限定があり、 限定の用法に注意したい。 「まで」も程度と てくる。 【例文】家のあたり =家のあたり このうち重要なのは、問一 してB~) 」=「Aさえ、 (まして 文脈に応じて補って解釈する必要がある ことが大切だ

ダ 「だに」 ニ  す 「すら」 ら  ノ 「のみ」 ミ  な 「など」 ど  さ 「さへ」 へ  し 「し」 ば 「ばかり」 かり

「し」は「し」の識別問題で大切だ。

。特に類推は、 「軽いものをあ

だに 今は通らじ。 さえ 今はもう通らない、

上位 〜 難関大学は言外に隠されている重いもの

ましてや本人に会うこともない

特に訳出する必要がなく、単なる強意で使われてい

ま 「まで」 で  する

「~さえ」と訳す類推は中世末期

92

第7講  『落窪物語』

特に問題に を比較してみると、 「い て~ないものか)になってい 問四で見たように、継母は落窪 傍線部オのように嘆くしかない状況だ では、嘆いている対象が「縫い物」に限 しまう方法がないものか」 、2「この家を脱 方法がないものか」 、となっていて、それぞれ嘆  「消えうす」の意味は「消えてなくなる」 「死ぬ いうのは、存在自体が消えてしまうことであって、 のではない。 問六 今回の内容合致問題は、単に古文の力だけでなく、現代文の力も問 肢を正確に分析して解答していこ 。 1は、 「皇族の子女」というところが引っ掛かるが、 ている」かどうかを本文から探すと、 3行目に「母もなき御むすめおはす」とある 問五 まずは品詞分解す

落窪の君は嘆きとしては「死にたい」

「いかで/なほ/消

2や 3のように、逃げ出したり、姿を隠したりする ということであり、正解は1になる。

注2を見ると問題ない

。また「すでに世を去っ

となる。選択肢の訳

解答

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2は、 琴よにをかしく弾 とも知る人もなし」とある で、B。 「あるものとも知る人 5は 「裁縫を積極的に習わせ 一環として落窪の君に裁縫をさせたの 3は、 4は、9~

出 典 解 説

15〜 16行目に「母君 10行目の「この君のかた  『 落 おちくぼ 窪 物語』は伝奇(作り)物語の一つ。平安時代に、 『 られたものだ。内容としては「継子いじめ」の物語にな に作 『住吉物語』 も同様に 「継子いじめ」 の物語とし り)物語」のゴロは次の通り。

竹 『竹取物語』 取 ウ 『宇津保物語』 ッ ホ

ウッホ

主語を、選択肢では「女君

窪 『落窪物語』 みに 落 ちた

解答

「伝奇 (作り) 物語」

1=A

気 ショーック!

2=A

3=B

つ 津保 物語』に次いで作 ぼ

4=B

5=B

なの

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