極める古文4 上位~難関大突破編

が家をこぼ ちて出でたる価 とぞ。あやしき事は 箔など所々に見ゆる木 たづぬれば、すべき方なき 仏を盗み、堂のものの具を破り 砕けるなり。濁悪世にしも生まれ合 かる心憂きわざをなむ見侍りし。 いとあはれなる事も侍りき さりが き妻 夫持ちたる者は、その思ひまさりて深き者、 必ず、先立ちて死ぬ。 の故は、わが身は次 にして、人をいたはしく思ふあひだに、稀々 得たる食ひ物をも、 かれに譲るによりてなり。 されば、親子ある者は 定まれる事にて、親 ぞ先立ちける。また、母の命尽きたる知らず して、いとけなき子のなほ乳を吸ひつつ伏せ るなどもありけり。 仁和寺に隆暁法印といふ人、かくしつつ数

のだが、尋 古寺に行って仏 たのである。こうい ようなつらい行為を見て たいそう哀れなこともござ られない夫を持った者は、愛情が ぬ。その理由は、自分のことは二の次 相だと思うために、まれに手に入れた食物 である。だから、親子である者は、決まりきっ 先に死んだ。また、母の命が尽きた を知らないで それでもやはり乳房に吸いついたまま倒れているのなど た。 仁和寺の隆暁法印という人が このようにして無数の人が死 んだことを悲しん 、その死者の頭を見るたび 額に阿の字を 書いて、 仏縁に結ばせる行為をなさった。人数を知ろうとして、 四月と五月の二か月間を数えたところ、京のうち一条から南、 九条から北、京極からは西、 朱雀からは東の路傍の死人の頭が、 全部で四万二千三百余りもあった。まして、その

生活が

どうしよう

四月五月の

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