極める古文4 上位~難関大突破編

乞食、路の 満てり。前の年 暮れぬ。あくる年は ほどに、あまりさへ、 ざまに、あとかたなし。 世人みな飢ゑ死にければ、日 まりゆくさま、 少水の魚のたとへに はてには笠うち着、足ひき包み、よろし したる者、ひたすらに家ごとに乞ひ歩く。か くわびしれたる者どもの、歩くかと見れば、 すなはち倒れ伏しぬ。築地のつら、道のほと りに、飢ゑ死ぬる者のたぐひ、数も知らず。 取り捨つるわざも知らねば、くさき香世界に みち満ちて、変はりゆくかたちありさま、目 もあてられぬ事多かり。いはむや 河原など には、馬車の行く交ふ道だにな 。

あやしき賤・山がつも、力尽きて、薪さへ 乏しくなりゆけば、頼むかたなき人は、自ら

てこなくなってきたので、頼る当てのない人は、自分の家を壊 して、薪を市に出 売る。一人が持って出た薪の値段は、一日 の命を支える分にさえならないという。不思議なことには、薪 の中に赤い丹がつき、箔 どが所々 見える木が混じっていた

に満ちる。 年は、なんとか に、その上さらに、 世間の人がみ 飢え死 さまは、少水の魚のたとえと 死にかかっている魚さながらであ 足をくるみ、かなり立派な格好をした 糧を乞うて歩くのである。このように落ち が、歩いているかと思うと、すぐさま倒れて 地沿いに、路傍に、餓死者のたぐいは、無数である り片付けようも思いつかないから、くさい臭いが辺りに て、腐敗していく様子は、目もあてられないことが多い。ま て、河原などには、馬や車の通行する道さえな 。 卑賤な者・ 木こりたちも、 力が尽きて、薪までも不足して持っ

死骸の

74

Made with FlippingBook - Online catalogs