極める古文4 上位~難関大突破編

今は昔、中納言な ち給へるおはしき。大 して、西の対・東の対に、 ませ奉りたまふに、三、 四の君 給はむとて、かしづきぞし給ふ。ま よひ給ひけるわかうどほり腹の君とて、 なき御むすめおはす。北の方、心やいかがお はしけむ、仕う つる御達の数にだにおぼさ ず、寝殿の放出の、 た一間なる落窪なる所 の、二間なるになむ、住 給ひける。君達 ともいはず、御方とはましていはせ給ふべく もあらず。名をつけむ すれば、さすがにお とどのおぼす心あるべしとつつみ て、 「落

窪の君といへ」と宣へば、人々もさいふ。 とども、ちごよりらうたくやおぼしつかずな りにけむ、まして北の方 御ままにて、わり

第7講『落窪

今は昔のこと、中 いらっしゃった。長女・ の対・東の対に、派手に住ま 四女の君には裳着の式をしてさし なさる。また 性で、母もいない姫君がいらっしゃる。中 う思っていらっしゃったのだろうか、お仕えし と 同列にさえお考えにならず、寝殿の放出の、その先 の落ち窪んだ所の たった二間の一室に、住まわせなさ る。姫君 も呼ばず、 御方とはまして言わせなさるはずもな 呼び名をつけようとすると、そうは言 ても中納言の思惑もあ るだろうと遠慮なさって、 「落窪の君と言いなさい」とおっしゃ るので、女房たちもそう呼ぶ。中納言も、

らかわいいとは思い染めにならないでしまったのだろうか、な おさ 北の方のお思いのままで、つら 仕打ちが多くあっ そ うだ。頼れる世話人もなく、乳母もなかった。ただ、母親の存

中納言が

ときどき通われた皇族血統に生まれた

姫君を

幼児の時代か

女房たち

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