みんゴロ極める古文1
へでぞあるらむ」とて、つひにあはでぞかへ しける。横笛なさけなううらめしけれども、 力なう涙をおさへて帰りけり。
る道心者も心よわくなりぬべし。やが人を 出して、「まッたく是にさる人な 門たが
子のひまよりのぞいてみれば、まことに尋ね かねたるけしきいたはしうおぼえて、いかな
たのでしょう」と言って、とうと会うこともなく横笛を追い 返してしまった。横笛はやり切れず恨めしかったけれども、落 胆し涙をこらえて帰って行った。
であろう。すぐに(返事をさせるために)使いの人を門口に出 して、「全くここにはそのような人はいません。場所を間違え
やっとここを探し当てた女様子が気の毒に思われて、どんな に心強く仏道修行している者でもきっと心が弱くなってしまう
のです」と、連れて行った女に言わせたところ、滝口入道は心 中穏やかでなく障子の透き間からのぞいてみるといかにも
111
Made with FlippingBook Publishing Software