みんゴロ極める古文1

制限時間 解答編 98 ページ 30 次の文を読んで、後の問いに答えよ。 横笛といふをんなあり。滝口 是 これ を最愛す。父是をつたへ聞いて、「 世にあらん者 のむこになして、出仕 なんどをも心やすうせさせんとすれば、世になき者を思ひそめて」と、あながちにいさめければ、滝口申 しけるは、 「 ※1 西 せい 王 わう 母 ぼ ときこえし人、昔はあッて今はなし。 ※2 東 とう 方 ぼう 朔 さく といッし者も、名をのみ聞いて目には見 ず。老 らう 少 せう 不 ふ 定 ぢゃう の世の中は、石火の光にことならず。たとひ人長命といへども、七十八十をば過ぎず。その うちに身のさかむなる事は、わづかに廿余年なり。夢まぼろしの世の中に、みにくき者をかた時も見て何 かせん。思はしき者を見むとすれば、父の命をそむくに似たり。是 ※3 善 ぜん 知 ち 識 しき なり。しかじ、うき世を厭ひ、 まことの道に入り なん 」とて、十九のとしもとどりきッて、嵯峨の 往 わう 生 じゃう 院 ゐん におこなひすましてぞゐたり ける。横笛これをつたへきいて、「 われをこそすてめ、 様をさへかへ けむ事のうらめしさよ。たとひ世を ばそむくとも、などかかくと知らせざらむ。人こそ心 とも、たづねて恨みむ」思ひつつ、あ る暮がたに都を出でて、嵯峨の方へぞ あくがれゆく。ころは 十日あまりの事なれば、梅津の里 の春風に、よその匂もなつかしく、大井河の月影も霞にめておぼろ 一方ならぬ哀れさも、誰ゆゑ とこそ思ひけめ。往生院とは聞きたれども、さだかにいづれの坊とも知らざれば、ここにやすらかしこ にたたずみ、たづねかぬるぞむざなる。住みあらしたる僧坊に念 ねん 誦 じゅ の声しけり。滝口入道が声と聞 『平家物語』 分 A a ア B C イ D 第 6 講

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