みんゴロ古文読解

第一部 1 あらまほしき こそ、仮の 宿りとは思へど、興あるものなれ。 、のどやかに住みなしたる所は、さし 入りたる月の色も、ひときはしみじみと見ゆるぞ かし 。 いまめかしく きららかなら ねど 、木立もの ふりて、わざとならぬ庭の草も 心ある さまに、 簀 すの 子 こ ・ 透 すい 垣 がい の たより をかしく 、うちある 調 ちゃう 度 ど も昔お ぼえて 安らかなる こそ、 心にくし と見ゆれ。 多くの 工 たくみ の 心を尽くしみがきたて、 唐 から の 、大和 の 、珍しく、 えならぬ 調 ちゃう 度 ど ども並べ置き、 前 せん 栽 ざい の 草木まで心のままならず作りなせるは、見る目も 苦しく、いと わびし 。さても やは 、長らへ住む べき 。 理想的 であること は、どうせ短い一生を託す仮の宿だ とは思うけれども、興味のあるものである。 身分が高く教養もある人が 、ゆったりともの 静かに住んい所は、差し込む月の光も、一 段と心にしみるよに感じられるも であるよ 。 現代風 でもなく、きらびやかでも ないが 、木々 が古びた趣があって、特に手入れをしたとも見 えない庭の草も 趣がある 様子で、竹で編んで張っ た縁側や 間を透かして作った垣根 の 配置 も 趣深 く 、ちょっと置いてある道具類も、古風な感じ がして、 落ち着きがある のは、 奥ゆかしいこと だ と思われる。 これに反して多くの大工たち が 一生懸命に立 派に造り立て、中国 のもの や我が国 のもの で、 珍しく、 何とも言いようもなく立派な 道具類を 並べ置いて 庭先の植え込み の草木までも、自 徒 つ れ 然 づ れ 草 ぐ さ 作者 兼 けん 好 こう 法 ほう 師 し 随筆 鎌倉時代末 家 居 いへ ゐ の つきづきしく 、 よき人の 住居 が 、住む人と 調和がとれていて 、

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