みんゴロ古文出典
1 10 第 位 ~ 第 位
読解ポイント この『大和物語』の文章は、『伊勢物語』と同じ素材で著名なお話。 当時は「妻問い婚」が主流で、男が妻の元に通っていた。家の財産 は母親から娘へと伝えられたので、男は財産のある女性と結婚し、 しっかりとした財政のバックアップを得た。男は貧しくなった妻 風
のことを愛しながらも、裕福な新しい妻をもうけたのはそうし 事情から。しかし元の妻が自分を想う歌を詠んだのをきっかけに 真実の愛を知り、元の妻へ戻るというお話。歌物語だけに「和歌 の解釈」がポイント。 ★「風吹けば」の和歌の「 風吹けば沖つしらなみ 」は「たつ」の序詞。 また、「たつが「しらなみがたつ」と「たつた山」の掛詞である。
端に出でゐて、月のいといみじうおもしろきに、 頭 かしら かい 梳 けづ りなどしてをり。夜ふくるまで寝ず、 ※ 吹けば 沖つしらなみ たつた山 夜 よは 半 にや 君 きみ が ひとり越ゆらむ とよみければ、わがうへを思ふなりけりと思ふに、いと かなしう なりぬ。この今の妻の家は、 かの山を越えて行く道になむありける。かくてほかへもさらに行かで、 つと ゐにけり。 女は縁側に出て座って、月が本当にたいそう美しい夜に、髪をとかしなどしている。夜が更けるまで寝ず、 たいそうひどく嘆きながら 物思いにふけっ ているので、男を待っ ているようだ 、と見ていると、前にいた召使に言ったことには、 ○暗く寂しい龍田山を、こんな夜更けに、あなたは一人で越えているのでしょうか。 と詠んだので、男は自分のことを思ってくれているのだなぁ、と思うと、たいそう いとおしく なった。新しい妻の家は、 龍田山を越えて行く道にあったのである。こうして男は他へもまったく行かず、 ずっと 居続けた。 いといたううちなげきて ながめ ければ、人待つ なめり とみるに、使ふ人のまへなりけるにいひける、
「 威勢 イチュー
平安時代の歌物語のゴロは、 のいい 大和 君が ハイと
ヘ
ー
歌 うたう」
75
Made with FlippingBook - Online catalogs