新・ゴロゴ漢文問題集 基礎・必修編 v1.01

第12講 否定1

書き下し文 の足しのために生きているものに量り知れない恐怖と苦しみ を受けさせたくないということだ」と。いまだに肉食を止め ることができないのらば、蘇文忠公のこの戒めを当然守る べきで、それまあ認められる。 蘇 そ 文 ぶん 忠 ちゆう 公 こう 獄 ごく を出 い でてより後 のち 、但 た だ已 すで に 死 し せるの 物 もの のみを 食 くら ひ、 絶 た えて 一 いつ の 生 い けるものをも 宰 さい 殺 つ せず。 自 みづか ら 謂 い へらく、 「 求 もと むる 所 ところ 有 あ るに 非 あら ず。 己 おのれ の 親 みづか ら 患 くわん 難 なん を 経 ふ ること、鶏 けい 鴨 あふ の庖 はう 廚 ちう に在 あ るに異 こと なる無 な きに因 よ りて、復 ま た口 こう 腹 ふく の故 ゆゑ を以 もつ て、有 いう 生 せい の類 たぐひ をして無 むり 量 やう の怖 ふ 苦 く を受 う けしむるを致 いた さざるのみ」と。今 いま 未 いま だ肉 にく を断 た つ能 あた はざ れば、当 まさ に文 ぶん 忠 ちゆう 公 こう の此 こ の戒 いまし めを守 まも るべく して可 か なり。

重要語句

▪ 未能

再読文字の「未」と動詞の「能」の組み合わせで、 「いまだ~あたはず ~できない」 意。

現代語訳 蘇文忠公は監獄を出てからというもの、すでに死んでいる ものの肉だけを食べて、生きているものを食肉にするため殺 したりすることは決してなかった。蘇文忠公 が自ら言うに は、「 (そうすることで)何か求めていることがあるわけでは

ない。自分自身が獄中で憂いや困難を経験したことは、ニワ トリやアヒルが台所にいることと異ならないので、自分の腹

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