新・ゴロゴ漢文問題集共通テスト編 オンライン限定コンテンツ版

第 3 講 趙翼『簷曝雑記』

日 ひ に百 ひやく 余 よ 里 り を行 ゆ き、月 つき を竟 を ふと雖 いへど も疲 つか れず。 性 せい 極 きは めて霊 れい 、岡 かう 坂 はん を上 じやう 下 げ し、左 ひだり するに宜 よろ し く右 みぎ するに宜 よろ しく、攬 と るに轡 たづな を以 もつ てするを 待 ま たざること、真 まこと に四 し 体 たい の言 い はずして喩 さと る がごときなり。峻 しゆん 嶺 れい を上 のぼ る時 とき 、数 すう 里 り 毎 ごと に輒 すなは

甚 はなは だ痩 や せたり。芻 すう 豆 とう を加 くは へて之 これ を飼 か ふと雖 いへど

する者 もの のごとし。

りて 草 くさ を 藉 し きて 坐 ざ せば、 則 すなは ち 騾 ら 旁 かたはら に 侍 じ 立 りつ して、頸 くび を以 もつ て相 あ ひ就 つ くること、相 あ ひ労 らう 苦 く

ち勒 ろく 住 ぢゆう し、其 そ の稍 やや 喘 あへ ぐを聴 き き、余 よ 或 ある いは下 お

も 肥 こ えざるなり。 然 しか れども 力 ちから は 甚 はなは だ 堅 けん 勁 けい 、

軍 ぐん し、一 いち 騾 ら を得 え たり。色 いろ は純 じゆん 黒 こく 、高 たか さ五 ご 尺 せき 、

者 もの は能 よ く人 じん 心 しん と相 あ ひ通 つう ず。余 よ 滇 てん に在 あ りて従 じゆう

尽 ことごと く 以 もつ て 同 どう 人 じん に 贈 おく るに、 独 ひと り 此 こ の 騾 ら のみ

書き下し文 現代語訳

時 とき に 騾 ら 馬 ば 三 さん 十 じふ 余 よ 有 あ り、 粤 ゑつ に 帰 かへ るの 時 とき 、

騾 ら 馬 ば は 言 い ふ 能 あた はず、 然 しか れども 性 せい の 霊 れい なる

その時騾馬は三十頭ほどいたが、粤に帰る時に知人に 贈った。しかし、この騾馬だけは手放すのに忍びかっ た。従えて鎮安に至ったところで新鮮でおいしい飼料で

に手綱を押さえて歩みをどめ、騾馬が少し喘いでいる のが聞かれるので、私は下馬し草を敷いて座ると、騾 馬もかたわらに立ち、首をすり寄せくる様子、私を ねぎらっているかのようであった。

て、一月しても疲れなかった。生まれつきとても賢く 岡や坂を上り下りするきは左に右にと体をうまく動か し、轡をとるまでもないこは、手足が言わなくても思 う通りに動くようであった。峻嶺を上時は、数里ごと

騾馬は物を言うことはできないが、本性の賢さは人の 心と通じることができるほどである。私が滇の地で従軍 していた時に一頭の騾馬を得た。色は黒く背丈は五尺、 とても痩せていた。ほし草と豆を増やして飼育したが、 肥えなかった。けれども力は強く、一日に百里ほど行っ

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