新・ゴロゴ漢文問題集共通テスト編 オンライン限定コンテンツ版
第 4 講 李贄『焚書』
り。案 あん を撤 てつ して而 しか る後 のち に問 と ひて曰 い はく、 「 豈 あ に 稲 たう 粱 りやう なるか。 奚 なん ぞ 其 そ れ 此 こ の 美 び あ らんとは」と。 主 しゆ 人 じん 笑 わら ひて 曰 い はく、
「 此 こ れ 黍 しよ 稷 しよく や、 稲 たう 粱 りやう と 埒 ひと し。 且 か つ 今 いま の 黍 しよ 稷 しよく や、向 さき の黍 しよ 稷 しよく に異 こと なる者 もの 有 あ るに非 あら ざるなり。惟 た だ甚 はなは だ飢 う う、故 ゆゑ に甚 はなは だ美 び
余 われ 之 これ を 聞 き き、 慨 がい 然 ぜん として 嘆 たん ず。 余 われ の 道 みち に於 お けること今 いま の食 しよく を望 のぞ むがごとく ならしめば、則 すなは ち孔 こう 老 らう 択 えら ぶに暇 いとま あらん
や。
なり、惟 た だ甚 はなは だ美 び なり、故 ゆゑ に甚 はなは だ飽 あ く。 子 し 今 いま より以 い 往 わう 、稲 たう 粱 りやう の想 さう を作 な すことな かれ、黍 しよ 稷 しよく の想 さう を作 な すことなかれ」と。
黍 しよ を炊 た きて我 われ に餉 おく る。口 くち に信 まか せて大 おほ い に嚼 く らひ、未 いま だ弁 べん ずるに暇 いとま あらざるな
キビを炊いて私に食べさせてくれた。私は食べ放題に食べて、 それがコメかキビかを識別する余裕さえなかった。食膳を片付 けた後に(私は主人に)尋ねて言った、 「(いただいたのは) コメ でしたか。コメがこんなに美味しいとは知りませんでし」と。 主人が笑って言うには、「 (あなたに食べさせたのは)キビだが、
私は主人のこの言葉を聞き、感銘を受けてため息をついた。 私の、道を探究する気持ちが今日のように食べ物をひたすら欲 する気持ちのようにさせれば、孔子が良い老子が良いなどと選 んでい余裕などあるだろうか(いや、そんな余裕はない) 。
(食べ物という点で)コメと同じだ。それに、今あなが食べ たキビは以前に食べたキビと何にも異なるところはない。だ、
ひどくお腹が空いていたから美味しく感じ、美味しく感じたか ら満腹になったというだだ。あなたは今後、コメだけ食べた いとかキビだけ食べたとか思ってはらない」と。
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