語彙・テーマ
解説 例えば、「かわいい」という言葉を厳密に定義して、その要素を完全に備えた唯一の人にのみ「かわいい」と形 容することができると仮定しましょう。そんな人にめぐりあうことは奇跡に等しいので、「かわいい」は間違いな く死語になります。例文で筆者が言うように、 「言葉が対象の世界のこれこれの確定領域を指すように作られている」 とするならば、「そのような言葉を使用することはできず、したがって、その言 葉は失われていく」はずです。 私たちは「かわいい」という言葉をさまざまな対象に向かって用います。 本来は、小さいものや弱いものに心ひ かれるさまを表す形容詞ですから、子どもや小動物に対して用いますが、最近では、おじさんや高齢者の憎めない しぐさなどに対しても「かわいい」と言います。あるいは、多少のあざけりの気持ちを込めて、 「かわいいものよ」 などと言います。 連続的世界を分節化するのですから、その領域を確定することはできません。言葉は必然的に「あいまい」なも のです。しかし、 「あいまい」だからこそ、私たちは言葉を広がりを持って用いることができます。 「あいまい」と 言うとマイナスのイメージを持ちますが、逆説的に、言葉は「あいい」だからこそ良いのです。
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