みんゴロ古文読解
面 おもて うち赤めて、涙ぐみて さぶらひ ける 気 け 色 しき 、限りなき 好き のほども、あはれにぞ見えける。いづれもとりど りなる中に、 薄く濃き野辺の緑の若草に 跡まで見ゆる雪のむら消え 草の緑の濃き薄き色にて、 去 こ ぞ 年 のふる雪の遅く 疾 と く 消えけるほどを、推し量りたる 心ばへ など、 まだしか らむ 人は、いと思ひよりがたくや。こ人、年積もる まで あらましかば 、 げに いかばかり、目に見えぬ鬼神 をも動かし なまし に、若くて失せにし、いと いとほし く あたらしく なむ。かくて、このたび撰ばれたるを ば新古今集といふ なり 。 さてその宮内卿の歌合せの歌はどれもそれぞれすぐ れていた中に、 =薄かったり濃かったりする野原の緑の若草の生え 方によって、雪がまだらに消えた跡までがはっき りと見えることだ。 草の緑の濃淡によって、去年の残雪の消え方が遅 かったり早かったりした様子を、推測した 趣向 など は、歌に 未熟であるような 人には、本当に思いつく ことできないであろう。もし、この人が、年老 いるまで 生きていたならば、本当に どれくらい、目 に見えない鬼神をも感動させ 秀歌を詠んだ こと であろうのに 、若くして死んでしまったのは、 たいそう 気の毒であり残念に 思われます。このよう にして、このたび選ばれた歌集を『新古今集』とい う のである 。 んで せている お仕えし 様子が知られ、しみじみと情趣深く見えた。 ていた 様子 は、限りなく 風流に心をよ
第二部
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