みんゴロ古文読解
こはいかに
いふ時に、とぶらひにきたるもの共、 「
、
かくてはたち 給へる ぞ。 あさましき ことかな。物 のつき 給へる か」といひければ、「何条物のつく べきぞ。 年 とし 比 ごろ 、不動尊の火焔を あしく かきけるな り。今見れば、かうこそもえけれと、心得つるな り。是こそせうとくよ。此道を立てて世に あら ん には 仏 だに よくかき 奉らば 、百千の家もいでき な ん 。わたう達こそ、させる能もおはせ ねば 、物を もおしみ 給へ 」といひて、あざわらひてこそたて りけれ。其後 にや 、良秀がよぢり不動とて、いま に人々 めで あへり。 書いていただ今火事を見ると、こうして燃 えるものだと納得できのである。このことが 分かったことこそがもうけもだ。仏画師とし て 生計を立てて行く としたら 、仏 さえ 上手に描 き 申し上げるならば 、百や千の家も作ることが できよう 。あなたちは、これといった才能も お持ちで ないので 、なにかと物を惜しみ なさっ てください 」と言って、あざ笑って立っていた ということだ。その後から であろうか 、良秀の よじり不動といって、その絵を今なお人々が 感 心し あっている。
3 第一部
たものだ」と言うときに、見舞いに来た人々が、 「 これはどうして 、このように立ち なさっている のか。 驚き呆れた ことだ。物の怪でも取り付き なさった か」と言うと、良秀は「どうして物の 怪が取り付こうか。 長年 不動尊の火炎を 下手に
27
Made with FlippingBook flipbook maker