みんゴロ古文読解

うつくしう 生ひなりにけり」など、あはれがり、 めづらしがりて、かへるに、「なにをか たてまつ らむ 。 まめまめしき 物は まさなかり なむ 。 ゆかし く し給ふ なる ものを たてまつらむ 」とて、源氏の 五十余巻、 櫃 ひつ に入りながら、『ざい中将』、『とを ぎみ』、『せり河』、『しらゝ』、『あさうづ』などい ふ物語ども、一袋とりいれて、えてかへる心地の うれしさぞ いみじき や。 せ たところ、おばが「とても かわいらしく 成人 したことよ」などと、私のことをしみじみとか わいがり、珍しがって、帰りがけに、「何を 差し 上げよう か。 実用的な ものは よくない でしょう 。 見たい とお思いになっている と聞いている もの を 差し上げよう 」といって、源氏物語の五十余 巻を箱に入ったまま全部、そのほか『在中将』、 『とをぎみ』、『せり河』、『しらら』、『あさうづ』 などという幾つかの物語を、一袋に入れて私に くれたのを、貰って帰る気持ちのうれしさといっ たら たいへんなものだっ 。

8 第一部

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