みんゴロ古文読解

第一部 8 更 さ 級 し 日 に 心ぐるしがり て、母、物語などもとめて見せ給ふ ゆかしく おぼ ゆるまゝに、「この源氏の物語、一の巻よりして、 みな見せ 給へ 」と、心の内にいのる。親 の 太 うづ 秦 まさ に こもり給へるにも、 こと事なく 、この事を申して、 いでむまゝにこの物語見はて む と思へど、見えず。 いと くちをしく 、思ひなげか るる に、をばなる人 の 田舎よりのぼりたる所に わたい たれば、「いと 私がこんなふうに ふさぎ込ん でばかりいるの を、心も慰め よう と 苦心し て、母が、物語など を探し求めて見せなさるので、なるほど母の配 慮のとおりに 自然と 心が慰められていく。源氏 物語の紫の上にまつわる巻を見て、続きが読み たく 思われるが、人に相談することなども でき ない 。だれもまだ家の者は都に慣れていないこ ろで、物語を 見つけることができない 。とても 気がかりで 、続きが 見たく 思われるので、「この 源氏物語を、第一の巻から終わりまですべて見 せ てください 」と心の中で祈る。親 が 太秦の広 隆寺に籠りなさったときにも、 他のことを祈る こともなく 、このことだけをお祈りして寺から 出たらすぐにこの源氏物語を全部読も う と思う けれど、見ることはできない。ても 残念だ と 自然と 思い嘆か れる ときに、おばにあたる人 で 田舎から京に上っている人所に親が私を 行か ら に、げに おのづから なぐさみゆく。紫のゆかりを 。誰もいまだ都なれぬほどにて、 。いみじく 、 な っ 記 き 作者 菅 すが 原 わらの 孝 たか 標 すえの 女 むすめ 日記 平安時代中期 かくのみ思ひ くんじ 見て、つゞきの見 まほしく おぼゆれど、人かたら ひなども えせず え見つけず 心もとなく

たるを、心もなぐさめ む

と、

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