みんゴロ古文出典

読解ポイント 作者は歌の才と美貌を買われ、時の有力な政治家である藤原兼 家と結婚した。しかし兼家と町小路の女との浮気などに悩み、

川にむかへて、巻きあげて見れば、 網 あじろ 代 どもし渡したり。ゆきかふ舟どもあまた見ざりし 舟に車かき据ゑて、行きもていけば、 贄 にへ 野 の の池、 泉 いづみ 川 かは など言ひつつ、鳥どもゐなどしたるも、 心にしみてあはれにをかしうおぼゆ。かい忍びやかなれば、よろづにつけて涙もろくおぼゆ。 車を川に向けて簾を巻き上げて見ると、川には網代が渡してある。行きかう舟をたくさんは見たことがなかった ので、すべてがしみじみとおもしろく思われる。後ろの方を見ると、歩き 疲れ た下人たちが、 みすぼらしげな 柚子や梨などを、 いかにも心ひかれる様子で 手に持って食べたりしている姿も、おもしろく見える。弁当などを 食べ て、 舟に車をかつぎ据えて川を渡り、さらに進むと、贄野の池、泉川などと言っては、水鳥の群がっていたりするのも、 心にしみて趣深くおもしろく思われる。忍びの旅なので、何事につけても涙もろく思われる。 ことなれば、すべてあはれにをかし。 後 しり のかたを見れば、 来 き 困 こう じ たる 下 げ 衆 す ども、 あしげなる 柚 ゆ や 梨 なし やなどを、 なつかしげに 持たりて食ひなどするも、あはれに見ゆ。 破 わり 籠 ご など ものし て、

「 」 二人の仲は次第に疎遠となる。時姫は兼家の最終的に正妻と なった女性で、藤原道隆、道長など三男二女を産み、長女は帝 に入内した。 ★ 副助詞「 ばかり 」は程度で「~ほど、~くらい」を表す場合 と、限定で「~だけ」を表す場合とがあり、特に限定の用 法に注意。 ★ せば の「せ」は過去の助動詞「き」の未然形で仮定条件 を表す。 せば~まし となる場合は反実仮想を表す。 平安の日記文学はゴロで 「 とかげ の 入 れ 墨紫 さ 、 ぬき ぬき」 と覚えましょう。 更級日記 讃岐典侍日記 土佐日記 蜻蛉日記  和泉式部日記  紫式部日記

11 「 」 第 位 ~ 第 位 20

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