みんゴロ古文出典

読解ポイント 作者の無住は鎌倉中後期の臨済宗の僧。著書が多く、こ の『沙石集』は著名。正直者は天が宝を与え、心が邪悪

国の守、 眼 まなこ 賢くして、「この主は不実の者なり。この男は正直の者」と見ながら、 不審なりければ、かの妻を召して別の所にて、事の子細を 尋 ※ ぬる に、 夫が状に少しもたがはず。「この妻は極めたる正直の者」と見て、かの主、 不実の事 慥 たし かなりければ、国の守の判に云はく、「この事、慥かの証拠なければ 判じがたし。但し、共に正直の者と見えたり。夫妻また 詞 ことば 変らず、主の詞も正直に 聞 ※ こゆれ ば、 七 つ あ ら ん 軟 挺 を 尋 ね て 取 る べ し。 こ れ は 六 つ あ れ ば、 別の人のにこそ」とて、六つながら夫妻に 給はり けり。 聞こゆれ 」の活用の行、活用の 国司の長官は、眼力の確かな人で、「この落とし主は噓つきである。この拾った男は正直者」と判断するけれども、 は っ き り し な い 点 が あ っ た の で、 拾 い 主 の 妻 を 呼 ん で、 別 の 場 所 で、 詳 し い 事 情 を 聞 い た と こ ろ、 夫 の供述と少しも違わなかった。「この妻もきわめて正直な者」と見て、そうなると一方の落とし主は 嘘をついていることはまちがいないので、国司の長官の判決に言うことは、「この 件には確かな証拠がないので、 判断のしようがない。しかし、ともに正直者に見える。夫婦の言葉も食い違いはないし、落とし主の言葉も正直に聞こえるから、 落とし主は七枚あったという銀貨の袋を尋ね歩いて探し出せ。この拾い物は六枚しか入っていないから、 別の人が落とした物にちがいない」と言って、六枚ともこの正直者の夫婦に くださっ た。 」「

な者には天罰が下って損をする、という教訓話。仏教説 話ではこのように仏や神による夢お告げや、姿をかえ て現れて人々を教えの道に導くという話が多い。 種類、活用形に注意。それぞれ「ガ行上二段活用已 然形」「ナ行下二段活用連体形」「ヤ行下二段活用已 然形」。上二段と下二段の動詞は特に連体形と已然形 に注意だ。 ★「 過ぐれ 」「 尋ぬる

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