みんゴロ古文出典
24 読解ポイント 藤原為時の息子惟規は、父の任地国に下る途中病気になり、着 いた時には危篤状態となる。父は息子の死を覚悟して、僧に教 戒を頼むが、惟規は風流な心が捨てきれず、和歌を詠んで他界 する。息子の形見歌を、親悲しみの余り涙で濡らし、つい には破れて無くしてしまう。 ★「 さらば 」や「 さなめり 」の指示する内容に注意。 歌論は上位大学で頻出し ます。 位の物語論『無名草子』 とあわせて復習しましょ う。 「 ふ 」 の 文 字 を 書 き 加 え て、 惟 規 の 形 見 に
逃げてまかりにけり。 (中略) 筆を濡らして、紙を具してとらせければ、書きたる歌、 みやこには 恋しき人の あまたあれば なほこのたびは いかむとぞ思ふ はてのふ文字を、 え 書か で 息絶えにければ、親こそ、「 さ ※ なめり 」と申して、 ふ文字をば書き添へて、形見にせむとておきて、常に見て泣きければ、 涙に濡れて、はては 破 や れ失せにけりとかや。 逃げるようにして退出してしまった。 筆を濡らして紙を添えて持たせたところ、病人の書いた歌は、 ○懐かしい都に恋く思う人が数多くいるので、やはり生きながらえて都へ行きたいと思う。 歌の最末の「ふ」の文字を、どうしても書くことが できないで 息絶えてしまったので、親の為時が、「 こう書くつもりであるらしい 」と申し上げて、 し よ う と 思 っ て 手 元 に 置 い て、 常 に 見 て 泣 い た の で、 親のに濡れて、最後は破れて無くなってしまったとかいうことだ。
21 第 位 ~ 第 位 30
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