みんゴロ古文出典

易   難 入試 出題箇所を チェック ! 上位大での出題が多 く、レベルの高い問題 が多いので注意。 親、待ちつけて、よろづにあつかひけれど、やまざりければ、今は後世のことを 思へとて、枕がみに添ひゐて、「後世のことは、地獄、 ひたぶるに なりぬ。 中 ちゆう 有 う といひて、まださだまらぬほどは、はるかなる荒野に、鳥、けだものなどだに なきに、ただ一人ある心細さ、この世の人の恋しさ、堪へがたさ、推しはからせ給へ」と いひければ、目をほそめに見あげて、息の下に、「その中有の旅の空には、嵐にたぐふ 紅 もみぢ 葉 、 風にしたがふ尾花などのもとに、松虫、鈴虫の声など、聞えぬにや」と、ためらひつつ いひければ、僧、 にくさ のあまりに、荒らかに、「何の 料 とが に尋ぬるぞ」と問ひければ、 「 さ ※ らば 、 それを見てこそは慰めめ」と、うち休みていひければ、僧、このこと物ぐるほしとて、 次の文は藤原為時の息子惟 これ 規 のり が危篤状態になった場面である。 『 俊 とし 頼 より 髄 ずい 脳 のう 』 上智大学 親の為時は待ち受けて子に再会して、万事に手厚く看護をしたのだが、病状はよくならなかったので、今となっては来世のことを 考えようと思って僧は枕元に添い座って、教戒に、「このままでは来世のことは、まず地獄へ行くのが 必定と なってしまう。 その間に中有(=衆生が死んで次の生を受ける間)といって、次の生がまだ決まらない期間は、はるかに続く荒野を、鳥や獣でさえも いない所なのに、あなただけ一人存在する心細さ、現世の人の恋しさ、無気味なことの耐えがたさをご想像なさい」と 僧が言ったので、惟規は目をかすかにあけ、僧を見上げて、苦しい息の下で、「その中有という旅の空には、嵐にともなう紅葉とか、 風 に な び く 尾 花 の 下 に、 松 虫、 鈴 虫 の 声 な ど が、 聞 こ え な い の だ ろ う か 」 と、 遠 慮 し な が ら 言ったので、僧は、我が意の通じない 心憎さ の余りに、声荒く、「何のためにつまらぬことを聞くのだ」と、惟規に質問したので、 「 そうであれば 、中有の旅もそれらを見て慰められるだろう」と、一休みして言ったので、僧は、この考えは正気を失っているとして、 DATA FI LE

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