みんゴロ古文出典
易 難 入試 出題箇所を チェック ! 次の文章は、今は亡き夕顔の女君の遺児、玉鬘のゆくえを知ろうとして、夕顔の女房であった右近が大和国泊瀬の観音に 祈願した時に、その右近が泊瀬の宿坊で玉鬘の一行と泊まり合わせた場面である。 全大学で出題されるキ ングオブ古文。上位大 学ほど頻出箇所を避け て出題する傾向。 例 ならひにければ、かやすく 構へ たりけれど、 かちより 歩みたへがたくて、 寄り臥したるに、この 豊 ぶん 後 ごの 介 すけ 、隣の 軟 ぜじゃう 障 のもと寄り来て、参り物なるべし、 折 を 敷 しき 手づから 取りて、「これは 御 お 前 まへ に参らせたまへ。 御 み 台 だい などうちあはで、 いと かたはらいたし や」と言ふを聞くに、わが 列 なみ の人にはあらじと思ひて、 物のはさまよりのぞけば、この男の顔見し心地す。誰とは え おぼえ ず 。 いと若かりしほどを見しに、ふとり黒みて やつれ たれば、多くの年隔てたる目には、 ふとしも見分かぬなりけり。「三条、ここに召す」と、呼び寄する女を見れば、 また見し人なり。故御方に、下人なれど、久しく仕うまつり 馴 な れて、かの隠れたまへりし 『源氏物語』 東京大学 右近は いつも このような参詣には慣れていたので、軽く 準備し ていたけれども、 歩いて 来たので苦しくて、 物に寄りかかって臥せっていると、この豊後介が、隣の幕の所に寄って来て、召し上がる物でもあるのだろう、 四 角 い 盆 を 自 分 の 手 で 取 っ て、「 こ れ を あ の 方 に 差 し 上 げ て く だ さ い。お 膳 な ど が 間 に 合 わ な い で、 たいそう 心苦しい ことでございます」と言うのを聞いて、そのお方は自分程度の人ではないだろうと思って、 物の隙間からのぞくと、この男の顔を見たことがあるような気がする。誰とは思い出す ことができない。 たいそう若かった頃を見たのだが、今は太って色も黒くなり 粗末な身なりをし ているので、長い年月を隔てて見ると、 すぐには見分けがつかないのであった。「三条、こちらにお呼びだ」と、豊後介が呼び寄せる女を見ると、 これ た見たことのある人である。亡き夕顔様に、下働きではあるが、長年お仕えし続けて、あの身を隠していらっしゃった DATA FI LE
16
Made with FlippingBook - Online catalogs